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#27 公共施設マネジメントにおいて大事なコトvol.4(ステップ バイ ステップで)

「公共施設マネジメントにおいて大事なコト」シリーズのVol.4ということで、今回は「ステップ バイ ステップで」ということを意識した仕事の進め方についてまとめていきたい。

これはどんな仕事にも当てはまることではあるが、誰しもが最初から何でもできる訳ではないし、何事にも初級レベルとか中級レベルとか上級レベルがあるという単純な話。
特に公共施設マネジメントなど、行政の仕事の中でも(世間一般に認識が広まってから)比較的歴史が浅く、ゴールも決まっておらず、ちゃんとした正解がないような業務においては、いきなり上級レベルになんて無謀な話である。

ということを前置きとしつつ、「これを読めばすべてがわかる公共施設マネジメントの教科書」みたいな本なんて存在しないし、1冊の本くらいのインプットだけでは到底ゴールに辿り着けないのが、大きな課題が山積している公共施設の世界である。
それぞれのまちで置かれている状況も違えば、攻め方も異なっているので、事例集的なマニュアルなどは参考にはなれど、それだけでは基本の「き」にしかならないのである。

とはいえ、こうした方が進めやすいとか、こんなやり方が役に立つとか、やってはいけない鉄則とかはあって、そんな経験をまとめているのが、このシリーズという訳である。

ということで、前号までのVol.1〜Vol.3も併せて読んでもらえると、きっと理解も深まるはずなので、まだの方は下のリンクからぜひどうぞ。

かく言う僕たちも、まだまだ発展途上な場所にいて、これから登っていくべきステップが幾つもあるというのは言わずもがなでもあるけどね。


公共施設マネジメント担当になって何から始めるか?

これはVol.1でも書いたことでもあるが、まず自分たちが持っている資産=公共施設を知るということが大前提である。
資産情報を知っていないということは、そもそも戦うフィールドにも立っていないということと同義でもある。

これには現場を巡るのが一番の解決策になるが、数が多すぎてどうにもならないというのであれば、主要な施設ピックアップするなどして、しっかりリアルな様子を頭に叩き込むことから始めてみよう。

その上で、それぞれの施設のハードやソフト情報をデータとして整理し、次にさまざまな施設と横並びにしてみて、詳細な分析をしていくことをオススメする。

ちなみに僕たちの組織では、数年ごとに「施設別カルテ」と「保全・長寿命化計画シート(長寿命化個別計画カルテ)」なる2種類のカルテを(両方自前で)作成し、ハード面・ソフト面の分析が行えるようにしている。
本当はスマートにシステム化したいところではあるが、かけられる予算もないのでエクセルでチマチマやっている(笑)

公共施設と戦う前のファーストステップとしてこういった情報は網羅しておきたいところである。

「型」があって、比較的やりやすいのは?

次のステップとしてやりやすいのが業務の「型」が存在する領域である。
仕事を進めていく上で、変数となったり不確定要素となり得る「人」の関与が比較的少なく、他のまちでやっていることを比較的トレースしやすい領域から始めてみるのは有効な策である。

具体的には、公共施設マネジメントの中でも非常に重要なミッションである「保全・長寿命化」分野が初期のステップとしてとっつきやすいのではないかと個人的には思っている。(実際、僕らもそうであった)

おそらくどの自治体においても、公共施設は造ったら造りっぱなしというか、維持管理に潤沢な予算が振り分けられていないから、公共施設の老朽化は深刻な状況であろう。
この状況を数学的にというか手順に沿ってテクニカルに解いていけるのが「保全」分野である。
ただ、一番の壁となるのは予算の確保という部分で、ここさえクリア(とはいえここが一番厄介なのだが・・・)でき、実行できる体制さえ整えば、あとは比較的オートマティックに実行することができる。

一番の壁となる予算の確保について、僕らのまちでは「FM基金」という公共施設の長寿命化や解体に特化した基金を持っていて、FMの担当である我々財産活用課が、点検に基づく優先順位付けから予算の配分までを一元化するという仕組みを作っている。
FM基金の詳しい運用方法等については、またの機会にnoteの方でも書いてみようかと思うが、ジチタイワークスが記事にしてくれている下記のリンクを参照してほしい。

公民連携は公共施設マネジメントのアクセル?

改めて言うと、FMとは公共施設を最適化する活動であり、保有する資産をちゃんと管理した上で、目指すべきゴールというか目標は、その価値を最大限に高めていくことだと僕は考えている。
とはいえ、公共施設マネジメントとかFM分野においては、やるべきことは本当に多岐に渡っており、いったい何から手を付けて良いのか分からなくなることも多い。

公共施設マネジメントとかFMはやるべきことが沢山(筆者の発表資料より抜粋)
FMで目指すべきは公共施設の資産価値の向上(筆者の発表資料より抜粋)

一方で、やるべきことは多い反面、行政にお金がないのは紛れもない事実である。ただ、予算がないから仕事ができない・・・最初から諦めてないだろうか?

確かに予算はあるに越したことはないが、予算がないから動けない(動かない)のではなく、予算がないなら、知恵や熱量、アイデアや前向きな気持ちによって、色んなことができるのが公共施設マネジメントの面白いところでもある。

本当か?という声も聞こえてきそうだが、実際に、僕たちは行政の予算ゼロ(もしくは数年で投資回収が可能なスキーム)で、いくつものプロジェクトを動かしている。
これらのベースになっているのが公民連携プロジェクトで、公共施設というアセットを使って収益を上げ、民間事業者と一緒に資産としての価値を高めていくことで、行政の予算を使わずとも(もしくは最小の経費で)レバレッジを効かすこともできる。

「稼ぐ」とか「収益」というキーワードを使いながら、公共施設の価値を蘇らせていく公民連携プロジェクトは公共施設マネジメントにおいてアクセルのような存在だ。
ただ「型」がないだけに、前例踏襲という訳にはいかない。

僕は「たら・れば」を繰り返し、何も行動を起こそうとしない公務員になりたくないし、今までの前例踏襲だけを「是」として、いかなるリスクも取らない人ばかりが集まっている組織に未来はないと思っている。
バットは振るためにあり、振らないといつまで経ってもボールは当たらないのである。

バットは振るために持っているのでは?(筆者の発表資料より抜粋)

予算はなくとも、とにかく何でもいいから小さなプロジェクトから始めて、経験値を積み、庁内外からの信用を得ること、その一歩が次の大きな一歩につながると僕は信じている。

実践こそが次への経験となる(筆者の発表資料より抜粋)

とりわけ「型」のない仕事やプロジェクトを実践することにより、経験値の上積み、人材の育成、組織の成長などなど、ステップを登っていることを実感できる。

ステップを登っていくと何が見えてくる?

さて、ここまでステップを踏むと、色んなテクニックも身についてくるし、多様な人脈、庁内でのポジションもだいぶ確立されてきているはずだ。

公共施設の置かれている状況はあまりにも深刻で、これをどうにか改善していくためには、あらゆる手を繰り出さなければならない。

色んな策が必要な公共施設マネジメント(筆者の発表資料より抜粋)

で、一周回って本来やっていかなければならない総量縮減に戻ってくるのだ。
公共施設等総合管理計画によって、全国のほぼ全ての自治体が、公共施設の総量縮減を掲げているが、実際のところ着実に進められている自治体はほとんどない。
公共施設マネジメントの初級者が一番最初に「総量縮減」に手を付けて、炎上してなかなか進まず、いつの間にか計画作りなど、やっているフリだけになっているというまちが多くありはしないだろうか?

要はそれほど難しいミッションなのである。
だからこそ、「ステップ バイ ステップで」着実に階段を登っていく必要があるんじゃないかと、最近になってようやく気づいたように感じている。

総量縮減は一番HARDなミッション(筆者の発表資料より抜粋)

やはり何事にも順序はあるし、公共施設マネジメントは難しい仕事だし、色んな打ち手を持ったバッターになっておく必要がある。
総量縮減だけの一本足打法では思ったような結果は残せないだろう。

最後に・・・絶対にやってはいけないこと

地域に過去のような活気がなくなり、それを取り戻すべく、まちの流れを完全に変えてしまうような巨大な公共施設プロジェクトは後を経たない。
「こうなったいいな」とか「こうなるに違いない」といった半ば妄信的な思想に取り憑かれ、どこかのコンサルが描くような夢の世界にどっぷり浸かり、半信半疑ながら何百億というような予算を突っ込む巨大な開発事業。

くれぐれもそんな一発逆転満塁ホームランを狙うのは辞めた方が良い。
そんなやり方だと取り返しのつかない墓標をつくるだけだから。

ということで今回はここでおしまい。

次がこのシリーズのラストになるのかな?
ぜひVol.5もお楽しみに。

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