見出し画像

主体性を発揮できる場所を待っている/DANROキッズキャンプ at Dana Village

人と人とのつながりの中には、”目には見えない温かさ”がある。その温かさが増し、循環する時、きっと世界は今よりもっと明るくなる。そんな想いから創業したDANROは、2023年1月、DANRO CHILDRENをスタートさせました。

「自分のままで、進んでいける世界へ」というVisonを掲げ、幼少期から対話を通して、自分を知り、相手を知ることができる環境や、自分の想いを深め巡らすことができる環境を創出することを目的としてDANRO CHILDRENは生まれました。

2023年8月、福島にあるDana villageにて「〜遊・癒・開〜自然とつながり、自分とつながるキッズキャンプ」を初開催。

全国から8人の子どもたちが親元を離れて集まり、暮らしを共にする3泊4日の大冒険。そこには、勇気を出して挑戦しようとする姿や頑張りたいという想い、家族と離れたからこそ知る”寂しい”と感じる気持ちとの出逢い。たくさんのドラマが生まれた時間がありました。

「そのまま」を大切に共有し、互いに助け合い、影響し合った4日間のキッズキャンプについて、発起人であるⅮANRO代表 小原和花さんNOAさん、Dana Villageのakariさんにお話しを伺いました。

左からNOAさん、小原和花さん、akariさん、MAOさん(撮影)/ キッズキャンプにて


「足るを知る体験を」


━━そもそも、今回のキッズキャンプはどのような経緯で企画されたのでしょうか?

和花さん:いくつか背景はありますが、4歳になる息子に、私が幼少期に感じた足るを知る体験を体感してもらいたいと思ったことがきっかけのひとつでした。

Dana Village 里山の景色

和花さん:私は田舎育ちで、山や海に囲まれた環境で育ちました。目新しいものは何もないけれど、そこには沢山の学びがあり、「足るを知る」という体験を幼少期にできたことが、大人になった今でもすごく良かったと思っているんです。一方で、息子と生きていく現代はとっても便利である反面、便利すぎるがゆえに寂しさを覚えることもあって。

例えば、何かがほしいと思ったらすぐに手に入ったり、調べたらすぐに誰かの答えが見つかる環境が当たり前だったり。今この時代に「ないがある」という体感を得てもらいたい。私もまた調べてみたけれど、そんな体験ができる何かを見つけることができなかったんです。

━━それで今回のイベントを…?

和花さん:そうです(笑)ないから、考える。創ってみる。やってみる。それだけを幼少期から今日までずっとやってきたから「そっか、じゃあ創っちゃえ!」って、自然に生まれたのが今回のはじまりでした。そしてそれを一緒に形にしてほしいとDana Villageのみなさんにコンタクトをとりました。


━━お話を聴いたakariさんは、どんな心境でしたか?

akariさん:2月くらいに連絡を受けた時、もう楽しみだなぁってワクワクして!Danaでは子ども向けのリトリートってやったことがないけれど、ポテンシャルは十分にあるなって思ったんです。だから、想いや構想を聞いてからすぐ日程も決まりましたよね?

和花さん:早かったですよね。キャンプの内容も自然に「こんな体験があったら」って、やりたいことを擦り合わせたり。Danaという場所と、みんなが集まった時に生まれる人のエネルギーに対して絶対的な信頼があったから考えられた内容(体験)だったと思います。

Danaのある福島の大自然に触れ
いのちを紡ぐ体験、畑仕事に触れてみたり
いのちの循環を知って
火を起こすところから、自分で食べるものを自分の力でつくる
困っていたら自然と助け合って
親元を離れ、子どもたちだけでともに時間を過ごす
いろいろな体験を、各々に体感した4日間


主体性が発揮できる場所があるだけでよかった


━━この4日間を通して、子どもたちはどのように変化したと感じますか?

NOAさん:キッズたちはね、多分変化していないんですよ。ただ在るものが出てきただけだったんじゃないかなって。

━━それはどういう意味でしょうか?

NOAさん:例えば初日、私は子どもたちが楽しみに来ているのかなって思っていたんです。でも、飲み水を汲みに行った時「やっぱり無理かも、帰りたい」という声が聴こえてきて。「え、初日から!?大丈夫かな!?」って不安を感じたんですけど。

でもその言葉って、彼らにとって”感情を表しただけ”だったんですよね。「楽しみたい」っていう気持ちと共存していただけ。

和花さん:5分後には、もうその環境になじんでいましたよね(笑)

和花さん:「主体性や多様性を育める環境を届けたい」とキッズキャンプを考えていたけれど、その想い自体を覆されましたね。そもそも、子どもたちには当たり前に主体性も多様性もあったんですよね。

akariさん:片付けが自分でできるようになったとか変化はあったけれど、それはただできるようになったとかではなく、子どもたちにはもともと発揮する力はあって、主体性が発揮できる場所を待っていただけ。それができる環境が今回のキッズキャンプだったんだろうなって思いますね。


「いい喧嘩だった」


━━いろんなエピソードがあると思いますが、特に印象に残ったことをお聞きしたいです。

和花さん:もう全部…!あえてピックアップするとしたら、「対話の可能性」を感じる場面があったんです。

「怖〜い!」と、虫を怖がる女の子たちを守ろうとしたKくんは、守ろうとするあまりにその虫を死なせてしまった。その場にいたみんなは、いのちを殺してしまった場面を見て驚き、Kくんを責めるという構図ができてしまった。

思った反応と違う彼女たちを見て、上手く感情を整理できず黙ってしまったKくん。ゆっくりと行動の裏にある想いを聴いていくと、「守りたかっただけなんだ」とポツリ。その気持ちを伝えられた時、責める彼女たちに変化が。

「守り方が違うよ」「じゃあどんな守り方だったらよかったの?」という対話が生まれ、彼女たちの願う守り方を知ったAくんは、みんなと一緒に次の解決策を見出し、みんなでその虫を優しく埋めてお墓をつくった。

和花さん:この話を、Kくんがお母さんに「喧嘩しちゃったけど、いい喧嘩だった」って振り返りながら話していたんだよね。「殴ったり、人を傷つけるのは悪い喧嘩だけど、話し合うことができたこれは、いい喧嘩だった」って。

自ら感じ、考え、対話し、学び合う子どもたち

和花さん:子どもには、それを”いい喧嘩”と捉えられるくらいの心が育まれている。何か揉め事が起きたとき、「ごめん」と先に謝らすことでその場を解決しようとすることは、本当の意味で解決には至っていなくて。感情を伝えることのできる環境がただあることが必要だったんだなと感じました。


感情をそのままに感じる


NOAさん:感情で思い出したのは、3日目に「心が疲れた」って言う子がいましたよね。

3日目から口数が減っていったIちゃん。川遊びに行き、先に帰ろうとした道中に泣き出した彼女に、「疲れた?今、心がつらい?身体がつらい?」と尋ねると「心が疲れた」と話す。

一度は泣き止んだが、その先の帰り道で大きな虫に遭遇。虫が苦手だったその子は、糸が切れたように声をあげて大声で泣いて、言葉にならない感情を爆発させた。

NOAさん:彼女が遠慮なく自分の感情を見せた瞬間、よかったなって思ったと同時に、普段どれだけ自分で感情を出しきらずに止めてしまうことがあるんだろうと考えさせられたんです。

感情をさらけ出してくれる子どもたちの姿が嬉しかった

NOAさん:これは子どもに限らずですが、人には自分で言葉にできないけれど、知って欲しい想いがあるよなぁと感じていて。

その自分の感情を”誰か”に良い悪いでジャッジされるのではなく、そのままに感じきれる体験、受け入れてもらえた経験って、すごく勇気や自信になることに子どもたちの姿から改めて気付かされたんです。

akariさん:確かに。安心してさらけ出せる場所って家庭や学校に必ずあるとは限らないし、それがあるって大事。でも、なんでそれができない環境が生まれるのかって考えた時に、気付かないうちに自分のフィルターで人を見たりジャッジをしてしまうからなのかなぁって。

私がこのキッズキャンプでそれを感じたきっかけが、ある男の子との会話だったんですけど…。


「身体に悪いのに、なんで大人は食べるの?」


無農薬で育てた野菜や手作りの味噌で作ったお味噌汁を「いつものと違う!」「うめぇー!」と言いながら食べたり、「どうやって作ったの!?」とキッチンまでその味噌を見に行くなど興味津々で見聞きするUくん。

ある朝、畑に無農薬で育てた野菜を収穫しにいった帰りの車で「ねぇねぇ、あかり先生。カップラーメンとかっていろんなものが入ってるんでしょう?身体に悪いって分かってるのに、なんで大人はそういうの食べるの?」と聞かれた。

akariさん:その時まで、小学校低学年の子が農薬とか添加物の話に興味を持つと思わなかったんですよね。それも変なジャッジだったなぁって。

彼らは、すでに一人の人として考えることも味わうこともできるし、体感として分かってるんだなって。それを自分の言葉で伝えられるくらい理解していることも素晴らしいなって思ったんです。

いのちの循環を知る体験

━━感情をあらわにしたり、自分のwantを見つけて探究したり。子どもたちが伸び伸びと、制限なく自分を発揮できた要因には何があると思いますか?

akariさん:あえて日常と何かが違うとしたら、Danaという場所の力と、DANROの世界だったのかなぁ。Danaは宇宙というか、この場に起きる自然発生的なものを必然だと信じていて。頭でなんとかしようとケアしてあげようとするのではなく、その人が感情を感じ切った先に、今の状況を好転させるアクションを自分で取るのを待てるというか、信じきれる場でもあるんですよね。

それから、DANROのみなさんが子どもと交わす対話では「~しなきゃ」みたいな囚われのない世界線で、子どもの見ている世界を一緒に大切にしていたから、子どもたちがそのままでいられたと思うんです。

和花さん:この4日間、私たちは子どもとしてではなく、一人の人として接するということを常に意識して過ごしていたけれど、それは同時に、私たち自身も偽りなくそこに居た感覚でしたよね。

そこに信頼が生まれて、お互いに自分のままで過ごせた体験になったんじゃないかなと思います。

寝る時間も「何時だから」ではなく「身体が疲れたから寝る」、心のままに感じる時間軸を大切に暮らしているDanaで、その場にいる自分に身を委ねて過ごした時間。
そこには、当たり前に主体的に生きる子どもたちの姿があった。


あの体験を、もう一度


━━この4日間を過ごして、みなさんの中に強く心に残ったものはなんでしたか?

NOAさん:キッズキャンプを終えた今、参加してくれた子どもたちに対して、そのままの自分でいてくれてありがとうという感謝と、そのままでいて欲しいという願いが湧いてきましたね。そして私も、自分の幼少期にこんな場所が欲しかったなぁって想いも。

日常でそれを体験できるためにも、子どもたちより少し技量のある身近な大人が、感情を引き出すコミュニケーションを持っていた方がいいなとも思いました。

akariさん:NOAさんの言う「感情を引き出すコミュニケーション」って、子どもに限らず対人としてそれが大事なんだろうなとも思います。

今回のように、年に一回でも自分を発散できたり、感じることの素晴らしさを共有できたり、感じきることを安心してできたりする場に来るだけで、その後の日常が変わるんじゃないかなって。

今はこれが非日常に感じられるかもしれないけれど、このDanaという場所が世の中の日常になってけば良いなぁとも思いましたし、これからも、そういうきっかけを届け続けられたら嬉しいです。

和花さん:自分を生きるってことだけで、こんなにもエネルギッシュで影響し合うんだってことが証明されたというか。シンプルに、人は生きてるだけですごいことなんだと感じました。

子どもたちがそのままの自分で、そのままに進んでいける世界をってVisionに掲げているけれど、同じように自分自身もそのままに進んでいきたいって強く思えた時間でもありました。これからも、力強く生きていける環境を届けたいとさらに思いましたね。

本当に、熱い夏でした。


━━ちなみに、次回開催する予定はありますか?

NOAさん:子どもたちの中で、勝手に開催が決定されましたよね?「来年は何したい!?」って、子どもたちから話が生まれてて。

akariさん:待ち合わせ場所になってましたね(笑)

和花さん:「今度さ、いつ会える?」「お前が〇年生で、俺が〇年生!」って。もちろん、私たちもやりたいと思っていたけれど、子どもたち同士で会う約束してる姿を見て、とても嬉しくなりました。

だからまた必ず、来年もこの場所で。

キッズキャンプに参加してくれたみんなと


▼キッズキャンプの様子


インタビューを終えて


今回の話を聞いて、キッズキャンプは一見「イベント」に見られてしまうけれど、ここでの暮らしは、非日常ではなく日常だったんじゃないかなと感じました。

NOAさんの「当たり前に励まし合っていたし、当たり前に助け合っていた」という言葉に、人が持つ本来の力が、やさしさや愛が自然と育まれるには、それができる場や人との繋がりさえあれば良いんだと。それが、もっと自然にできる社会になればいいなと思います。

子どもたちにとって、ここで感じたものはこれからも活きる体験になる。そう思える人との繋がりや、自分でいられた時間を、もっと日常にその機会が増えることを、願うだけではなく行動に移し続けたいと思います。(インタビュー/執筆:廣田 彩乃)


\今年もやります!自然とつながり、未来をひらくキッズキャンプ/

開催日程:8月1日〜8月4日
対象:小学生以上
定員:10名
▼詳細・お申込はこちらから
https://danro-dialogue.com/kidscamp


小原和花(おはら わか)
DANRO inc.代表 / 表現者
「日常に対話を。対話を文化に。」にしていくために、実践型対話スクール、自己を探究するダイアログコミュニティの運営などを行う。
個人では「見えないものを、魅せる。」を信念に、ブランディングデザインや世界観をことばで紡ぐなど、表現者として活躍している。(Instagram

NOA(のあ)スクールコーチ/ライフコーチ
#子どもたちにコーチングををミッションに、心の孤独をふせぎ、”自分でいること”を止めない社会づくりを目指して、子どもたちにコーチングを届けるスクールコーチの活動に注力。写真×コーチングで子供の感性と可能性を伸ばす YOUR VIEW、”価値ある雑談”で自分を大切にする思いを育む YOUR TALK をメインに、様々な形でコーチングを届けている。(HP

akari 
ライフアーティスト、ライフコーチ

“心に自然を宿す”をテーマにセッションやリトリートを行っている。セルフケアコーチング講座にて本音に従った生き方ができる人を全国へ輩出中。精神世界と現実化の探求が好き。(Instagram

廣田彩乃 (ひろた あやの)
インタビューライター

「今ここにいるひとりひとりの 今ここにある想いをつなぐ」人生の節目にこれまで歩んできた軌跡を振り返り、大切にしてきたものに気付くことで、今を愛おしむことができる。今しかない感情を言葉に遺し、未来の自分へ、届けたい人へと繋いでいます。( 公式note

この記事が参加している募集

子どもに教えられたこと

多様性を考える

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?