道に迷ったピザ屋

今日も疲れた
この可愛い容姿のせいで
職場のマスコットキャラクター的存在に任命され
あちこちからコーヒのオーダーが入る
ほんとは根暗なのに
ほんとは笑顔が苦手なのに
誰もそんな私を知らない
黒ばっか持ってた洋服は
男ウケのいいガーリーなものにそうとっかえした
これも経費で落ちないかな
あなたたちのためにやったのに
私の親はとても厳しくて
可愛いなんて一度も言われたことはない
だから自分が可愛いなんて
思うことなく育った
靴箱のラブレターも何かのいたずらだと思ってた
自己肯定感
わかってる
自分に欠如したものくらい
そしてそれが自力では埋められないことも
白馬の王子さまは私の住所を知らない
道に迷ったピザ屋を待つようなものだ
そして私は一人で冷え切ったピザを食べる
そうそれが私の人生
パステルカラーのワンピースを着て
今日も仕事に出掛ける
その服可愛いね
よく似合ってるよ
みんなが私を褒めてくれる
私ではない私を
仮の姿を持つ者は
亡霊として生きる他ないのだろうか
部屋の隅にうずくまってる本当の私を
誰一人知らないまま
ちやほやされていい気になってると陰口を言われたまま
居場所を過去に求めてどうするというのだ
たった一言でよかった
お前は可愛いねと親に言って欲しかった
それで全てが変わったのに
墓の下へ呼びかけても
もう何もかもが遅い





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