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「私、あなた、彼、彼女」シャンタル・アケルマン//"Je Tu Il Elle" Chantal Akerman

※今まで頑張って構成を考えながら感想を書いていましたが、自分のメモとして記録を残すことにしました。

タイトルそのままのミニマルな作品だった。家具を動かし続け、砂糖を食べ、手紙を書き、裸になり、外に出て、男と出会い、女と交わる。冒頭はモノローグで埋められ、セリフもほとんどない。このシンプルで簡略化された物語は、何かのメタファーなのかと思わせる。

だんだん主人公が外へ開くと同時に、場所や物語も展開するようでしない。退屈かもしれないが、部屋の中にいる時の方が居心地が良く、外へ出ると気遣うこと、面倒な条件ばかりである。一人でいれば、自分が女であろうと、裸であろうと、自分のみが自分に与えた「意味」や「価値」だけで生きていけるが、男が登場した途端に自分は女になり、性的な肉体となる。非常に居心地が悪い。一方、女性が登場すると「性的」であるはずの自分が、性的になりきらない。じゃれ合いのような、純粋に肉体を楽しんでいるようだ。しかし「時間」という制限で持って、遊びが終了する。男とも、女とも、両方に愛はないように見える。

どこに愛があるのか。愛なんか語る必要があるのか。

彼女は自分自身を愛しているようにも見えたが、それだけでは足りないから手紙を出し、外へ出たのだろう。他者と接触することで、一人で過ごす自分とは違う自分と出会い、また一から自分自身を愛し直す日々を始めるのかもしれない。

私がこの映画から感じる愛は、雪くらいだった。
「ジャンヌ・ディエルマン」と構造は似ており、最後、虚しさが残った。

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