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【コンサータ、インチュニブ】発達障害 処方薬のすゝめ

ASD・ADHDといった発達障害は、病気では無く"障害"なので、治療によって完治する事は無い。しかし、正しい服薬により症状が緩和する可能性は十分に見込める。
本記事は、ベテラン当事者向けと言うよりは、「自分は発達障害なのでは?」と疑問を持っているが、まだ精神科を受診するに至っていない方や、家庭内に発達障害の疑いのある人物が居て困っている方に、大変ならどんどん薬に頼ろうぜ!とお伝えする内容である。実際に服薬してみた体験談を交えながら、それぞれの薬剤の特徴を記していこうと思う。

発達障害向けの薬とは

現在、国内で発達障害治療薬として3つの薬が取り扱われている。

・コンサータ
・ストラテラ
・インチュニブ

この中で私が処方されているのは、コンサータとインチュニブである。ストラテラは服薬経験が無い。なので、コンサータとインチュニブの効果について詳述する。

集中力UPのコンサータ

コンサータを服薬する前は、「集中力が続かない」「12時間寝ても、職場に着いた時点で頭が疲れてしまっている」「頭の中にいつもモヤが掛かっている感じがする」という状態に悩まされ、結果として授業中や仕事中に居眠りしてしまう事が多々あった。私はカフェインが効かない体質なので、コーヒーを飲んでも意味が無かった。
コンサータを服薬する様になり、これらが一気に解決した。ごちゃごちゃした頭がスッキリし、集中して仕事をこなせる様になり、日中の居眠りも無くなった。コンサータの良い点は、服薬初日から効果が現れる点である。

コンサータには、覚醒効果のあるメチルフェニデートという物質が含まれている。同じメチルフェニデートを含有する薬剤に、リタリンと言うものがある。
以前は、ADHDにもこのリタリンが処方されていた。一方、「体が重い」「一日中眠い」「何もやる気が起こらない」といった抑鬱状態を改善する為の薬として、鬱病にもよく処方されていた。現在、このリタリンはナルコレプシー患者にしか処方されない。原因は、精神科医による安易な処方、鬱病患者のリタリン濫用、違法な売買といった問題が多発したからである。
発達障害は、幼少期からその特徴があった証明(母子手帳や学校の連絡帳等)や、様々な検査や問診を受ける必要があり、「発達障害のフリ」をするのは難易度が高い。しかし、──鬱病でもある者として言いたくは無いが──「鬱病のフリ」をするのはそう難しい事では無い。
「鬱病のフリ」をして、自分が楽しむ用に、または売買用にリタリンを欲しがる者。メチルフェニデートは即効性がある為、危険性を顧みず安易に処方しまくる精神科医。2007年に起きた「京成江戸川クリニック事件」をきっかけに、鬱病患者にリタリンが処方されなくなった。

そして同年12月から、リタリンに代わる薬剤としてコンサータの販売が開始された。リタリンと同じ道を辿らない様に、薬剤そのものに特殊な工夫がなされ、処方量も最大で30日と短く、コンサータを処方して貰う為だけのカードを薬局で提示しなくてはならない。処方箋だけでは受付されないのだ。
学術的な知識は無いので簡単に説明すると、コンサータはメチルフェニデート除放剤と呼ばれ、メチルフェニデートの覚醒効果が少しずつ体内に放出される工夫がされている。その為、覚醒剤やリタリンの様に(と言っても、どちらも使用した事が無いので飽くまでイメージに過ぎないが)目がギンギンになって何日も眠れない、病的に依存して濫用してしまう、といった事は起こらない。

とは言え、全くそんな事はありません!とも言い切れない。
コンサータを飲まないと、体が怠く、頭がボーッとする生活に逆戻りしてしまう。精神的依存は無いが、肉体的依存はあると感じている。
また、コンサータを服薬し始めた当初、「夜になり体は疲れて目もシパシパするのに、脳が冴えて眠れない」という体験をした。日中、小難しい本を読んで眠くなっても、昼寝出来た試しが無い。
夜ろくに眠れず、翌朝またコンサータで脳をフル稼働させる、と言う繰り返しは明らかに心身の健康を損なう危険性がある。

その為、私は併せて睡眠導入剤も処方して貰っている。飲んでいる薬は、サイレースとベルソムラである。
サイレースは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の中でも効果が最も強い薬剤である。ベンゾジアゼピンという物質は耐性が出来易く、私は長らくソラナックスやデパスと言ったベンゾジアゼピン系薬剤を服薬していたので、今はサイレースでは無いと効かない体質になってしまった。
寝付きの悪さを無くし、強い眠気を引き起こす為にサイレースを飲んでいる。しかし、これだけだと眠りが浅いらしく、悪夢を見たり、中途覚醒に悩まされた。

そこで半年前に初めて処方されたのが、ベルソムラである。ベルソムラはオレキシン受容体拮抗薬と呼ばれる2020年に販売が始まった新しい睡眠薬である。同じオレキシン受容体拮抗薬にデエビゴという薬剤があり、こちらはベルソムラより作用が強いそうだ。
このオレキシン受容体拮抗薬は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬と異なり、依存性や耐性といったリスクが非常に低い。ちなみに、一度ベルソムラだけで寝られるか試してみたが、眠るまで4時間くらい掛かった。
コンサータで覚醒した脳をサイレースで強制シャットダウンし、サイレースの効果が切れる前にベルソムラにバトンタッチし睡眠を維持している、というイメージだ。

穏やかな性格になれるインチュニブ

集中力を高め、注意欠陥に対する効果が期待出来るコンサータに対し、インチュニブは衝動性や多動性に特化している。18歳以上への処方が認可されたのは2019年と、まだ新しい薬剤である。主治医曰く、元々は血圧を下げる薬だったらしい。

私がインチュニブを処方される様になったのは、「物事が思い通りに進まないと、パニックになり激昂してしまう」と主治医に相談したのがきっかけだった。
"激昂"が具体的にどのくらいだったかと言うと、同居人に怒鳴り散らしたり、壁を蹴って穴を開けたり、テレビにリモコンを投げつけて液晶画面が壊れたり、スマホを床に叩きつけ破壊したり、自分の頭を殴ったり…抑えようとしても、怒りが全く抑えられなかった。

コンサータと違い、インチュニブの効果が現れるまでは、1〜2週間服薬を続けなければならない。その為、「ある日突然パニックにならなくなった!」と言う実感は無く、「気付いたらパニックになる事が減っていた」と書く方が正しい。
現在4ヶ月程服薬しているが、最近はほとんどパニックに陥る事が無くなった。主治医は「他の患者さんの話も聞く限り、どうやら性格が穏やかになるみたいですね」と言っていたが、その通りである。

ASD当事者は、強い拘りを持っている人が多い。そして私の様に、その拘りが覆されたり、想定通りに物事が進まなかったりすると、強い不安やストレスを感じ、「ああ!!!もう!!!!!」とイライラしてパニックを起こしてしまう人も居る。
個人的には、「拘り通りに出来ない事」が苦痛なのでは無く、「不安やイライラ、パニックになる事」が苦痛なのである。自分の拘りやルーティンが崩されたとしても、「あー、もう」くらいで立て直せれば何ら問題は無いのである。

家族や配偶者等、身近にこういったASD当事者が居ると、カサンドラ症候群という心身状態になってしまう方も居る。悩んでいる方には、ぜひ一度検討して欲しい薬である。

最後に

コンサータを初めて飲んだ時、「定型発達の脳内ってこんな感じなのか!」と物凄く感動したのを覚えている。思考がクリアになり、興味の無い仕事にも集中出来る。日中、頭が疲れて眠くならない。最初からこんな脳味噌持ってるの反則だろ!と思った。
更にインチュニブを服薬し始めた事で、パニックによる怒りの感情に支配されなくなった。

これらの薬を飲んでも、発達障害の特性が完全に無くなった訳では無い。しかし、出来ない事が減り、出来る事が増えるという実感は、少しずつでも社会復帰に対する自信に繋がっているのは確かである。
そもそも、発達障害はデメリットだけで無く、メリットもある。例えば、定型発達の人なら何日も掛かる作業が、過集中モードに入る事で1日で終えられる事がある。
だからあまり欠点や失敗経験にばかり目を向けず、薬を飲みながら、一緒に自信をつけていきませんか?と言う話でした。終わり。

無職を救って下さい。