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北欧家具と最近のこと。vol.39

3月末にデンマークへ注文した貨物がもう間もなく届きます。
4月初旬に現地発送を済ませ本来であれば5月中旬に届くはずだったのですが、、5月10日に上海に着いて、積み替えが必要だったらしくそこで船を変えて。そしてその後行方知れずとなっていました。
いえ、行方知れずとはただの私の思い過ごしであって、上海で降ろされた後に動きが無かったため情報が入ってこなかった、というだけの話なのです。それでも担当して下さっている方からは
「本当に申し訳ございません。本船の情報がなく、東京着が見通せない状況です。。」
とまぁなんともナーバスなその報せに、私も深刻に受け止めてしまいました。「まさか、失踪してしまったのでは、、」と。
先方からの説明が少なかったということもありましたが、その時はすっかりそう誤解してしまいました。お恥ずかしい。
でも本当に、まさかの事態にそれはそれは心配しました。解明するまでは妻にも打ち明けられず。寝ても寝られ、、いや、毎日ぐっすりと眠っていたな。変わらず健康に過ごしております。ま、そんなこんなで無事に見つかったようでとりあえずホッと一安心。

とにかく、もう間もなく届きます!届くはずです!
当日は雨が降らないと良いな。今年は梅雨が長いらしい。梅雨の入りはいつだろうか。

最近の家具のこと。

そんな心労に見舞われながら、ぽつぽつと家具のメンテナンスを進めていきました。

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おそらくノルウェー製のサイドテーブル。簡素でありながら、細部まで計算されたデザインが大変素敵でした。

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デンマーク Kurt Ostervig(カート・ウストヴィー)によるチェア。後ろ姿がとても美しい作品です。

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デンマーク製のサイドボード。こちらは直線による潔いデザインとフロントに配置されたリズミカルなチーク板目模様を気に入って仕入れた商品なのですが、それだけには留まらない魅力が潜在しているように感じています。惹かれるには惹かれるだけの理由があるのでしょうね。そしてサイズの大きい家具は特に、空間で体感してこそ感じられる魅力もあると思います。


お店で寂しくなってきた照明アイテムのメンテナンスも一気に進めていきました。

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デンマーク製のペンダントランプ。付属したプラスチックのルーバーが光を受けて灯る様子は時間を忘れて眺めていられます。日もだいぶ長くなりましたが、宵のお供に。

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デンマークAKA Electric社製ペンダントランプは、なめらかなフォルムが美しい。

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そしてそしてデンマーク製のペンダントランプ×2。メタル×ブラックのコンビネーションが最高クールな仕上がりになりました。短い期間でしたが私も家具と合わせて楽しむことが出来ました◎

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さらに5月の終わりに、スウェーデン製のイージーチェア×2。使い込まれたレザーの柔らかな質感やその表情にはそれだけで魅力を感じています。


古い家具ならではの”味”。


さて、この革のメンテナンスは苦労しました。いや楽しかったのですけどね。まだまだ知らないことが多すぎて、色々と調べたり、試したりをしながらメンテナンスを進めていきました。

表面の乾燥や汚れ、少しの褪色程度ならば、市販のレザークリーナーなどで汚れを落としてから(必要に応じて補色)→ケアクリーム→コーティングなど、さほど苦労することもないのでしょうが、今回は水染みによるダメージがとても多かったのです。(メンテナンス前の写真を撮り忘れてしまいましたが)

そこで調べてみたところ、水染みは水で制す。とのことで。状態によっては概ね解消できるということを知り、試していきました。

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レザー用ソープで革の内部に沁み込んだ汚れを泡々と、全体洗い出しながら、特に患部には水を含ませてもみ洗いし、水染み痕を馴染ませていきます。

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洗浄を終え乾燥させた状態(右)と
そこから補色→コーティング→ケアクリームを塗り終えた状態(左)

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仕上がり後の背面ボード。右下に染み痕の境界をぼんやりと確認することも出来ますがだいぶ馴染みました。

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同じく背凭れのクッション。こちらもボタン下にぼんやりと染み痕の境界の名残が判別出来ますが、まずまず許容範囲かと。

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そしてクッションの裏側。上の二つも当初こんな風な状態でしたからね、比べればやはり、良くなったと思います◎
この裏側も全く同じ工程で洗浄→もみ洗い→仕上げを施したのですが、染み痕の境界は頑として馴染むことはありませんでした。裏側はおそらく、紫外線や摩擦によるダメージを受けなかったことで表面の保護膜などが強く残っており、レザーソープと水洗い程度では効かなかったのかな?くらいに推測しています。実際どうなんだろう。

木材塗装もそうですがレザーのメンテナンスも化学的に考えていくことがとても重要だと改めて感じました。文系男子でしたので化学にはとっても疎いのですが、素材の特性、汚れの性質、そして着色剤や上塗り保護剤の効果などなど。まだまだ知らないことは多いですが、理解することでそのアプローチは大きく違ってきます。今回色々と調べたことで、更に興味が湧いてきました。まだまだ知らないことが多い世界。もっともっと勉強したいです。
家具修理とは、化学なのです。

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少々本題から逸れてしまいました。古い家具ならではの味についてを書くんだった。半分は反省ですが、今回感じたことを。

今回このレザーのメンテナンスを進めていきながら、実際どこに着地出来るかがまだ分からなかった時「まぁ、ある程度のダメージは味ってことで良いかね」と一瞬思ってしまったんですよね。でも本来「古い家具ならではの味」とは、新しいモノには表現できない魅力であって、やっぱりポジティブであるべきだと思うのです。
それなのに自分でも意図せぬ内に、消しきれないダメージ、ネガティブな要素を取り繕う逃げ道として「ならではの味」と呼んでしまっていたのかもしれない、と反省を致しました。
傷や染み痕などのダメージが全て悪い、なんてことは一切思っていません。
傷のつかないものなんてこの世には無いのですから。
しかし、そのダメージがあることでネガティブに感じてしまうようであれば、取り繕うのではなくやはりそれ相応の対応をする必要があるとも考えています。
私たちがこうして一つ一つ古い家具に手を掛けてゆくその意図は、受け渡したその先で長く愛してもらうためであって、そして古い家具ならではの味わいとは、やっぱりその家具が内包する魅力の一つであるべきだと。だってその魅力が、その家具と付き合っていく人たちを幸せにするものであってほしいと、願っているのですから。

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そもそもポジティブかネガティブかの明確な基準なんて無いのです。
その基準は自分たちで決めていくしかない。
少なくとも私自身が少しでもネガティブに感じてしまったことを、取り繕うためだけに「ならではの味」などと今後言ってしまわないように。今回、自分自身にそう言い聞かせたのでした。

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そう。だから、明確な基準がない中で導いた答えに、お客様から共感して頂けた時は本当に、安心します。良いね、とか、格好良いね、とか。可愛いね、とか。もうなんでも良いのです。ポジティブな共感にはいつも、心底救われています。


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P.S.

今回のソファのメンテナンス前に。
革の洗浄→仕上げの検証として、むかし妻(当時は彼女)にプレゼントしてもらった革財布で、同様の仕上げ直しを試していました。
貰ってからもう10年ほど経つのですが、染みや黒ずみが汚くなり、それから2代目、3代目のお財布を戴いたことから、ここ何年間ずっーと押し入れに仕舞い込んでいました。今回取り出した時はそれはもうカサッカサに干からびてもいたのです。

黒ずみは少し残りましたが、かなり蘇りました。良きかな、良きかな◎
これからまた大切に使っていきます。

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