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ブランドの「機能的価値」と「情緒的価値」のちがいをキャッチコピーで見てみよう。

ある企業や商品のブランディングを行うときに出てくる概念として、「機能的価値」と「情緒的価値」がある。前者は、そのブランドがどんな機能を有しているか。後者はそのブランドがどんな気持ちをもたらしてくれるか、というもの。

もちろん機能的価値で他と差別化できればカンタンなわけで、たとえばipodが発売されたときのキャッチコピーは圧倒的機能価値の訴求だった。
1,000 songs in your pocket.
(1,000曲をポケットに。)

こんなに明快な差別化はない。CDにも、MDにも、カセットテープにもできないことをipodという商品はかなえてくれるのだから。けれどももし、これからあなたがアピールしようとしている企業や商品に鋭い差別化できる魅力をないのなら、機能的価値で勝負することはできない。そんな場合に重宝されるのが「情緒的価値」である。

成功事例とされることの多い、日産自動車の『セレナ』のコミュニケーションを見てみよう。セレナはミニバンと呼ばれるカテゴリーのクルマで、ファミリー層に人気がある。「7人乗り」「低燃費」「リーズナブルな価格」…。そのどれもが機能的価値なのだが、それでは競合車種との差別化は難しかった。そこで生まれたのが、「モノより思い出。」という超情緒的コピーだ。

このコピーは世の中のファミリー層に深く刺さり、長年セレナのコミュニケーションコピーとして使用された(現在はどうなのだろう?)。親としては、子どもにいろいろな体験をさせたいと思うだろう。いくら燃費がよくても、いくら価格がリーズナブルでも、体験と思い出にはかなわない。結果、セレナは売れた。

ちなみにこのキャッチコピーが誕生したのは1999年だそう。ホンダの『STEPWGN(ステップワゴン)』のキャッチコピー「こどもといっしょにどこいこう。」(1997年)の影響を多少なりとも受けて書かれたものではないだろうか。こちらも有名なので紹介しておく。

こちらは佐藤可士和氏のデザインも相まって名作と呼ばれる。機能的価値で差別化が難しい場合、情緒的価値で差別化する。広告コミュニケーションの鉄則である。

企業や商品について、どんな価値を世の中に打ち出していくか。その作業をブランディングと呼ぶことが多い。そんなお手伝いをしています。ぜひお気軽にご相談ください。

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