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宵のうち

11月20日月曜日
最寄駅に着く前に、電車の中でマスクを少し引き上げる。寒いというのもあるけれど、本当の理由は車両の連結部辺りに立つと、隣の車両の空気が吹き込んでくるからだ。窓に流れる景色は蛍の様に光を引いて過ぎて行く。「まもなく**、**お出口は──」電車のアナウンスが開始の合図を匂わせる。イヤホンから流れるテンポの速い曲は、感情の昂りを知らせる。自然とカバンを握る手にも力が入る。ドアが開くと一目散に改札へ向かう。改札を抜けると車のライトが目に入り、眩しさを感じながら体をくるりと回転させて裏路地へ向かう。後ろをチラリと確認したらレースはスタート。マスクを外し呼吸ルートを確保して、思い切り走る。マフラーと手袋とカイロはもはや、暑さを感じる要素だからさよならをする。20時の北風が強く吹いて頬が痛い。空を見上げると私だけの1番星が目に入る。3年前の彼女は星になったのかな、なんて妄想を膨らませてスキップをする。マンホールを飛び越えて、今日を跨ぐ。落ち葉が脚に絡みついてダンスに誘う。気持ちが溢れて止まらないけれど、どこか幸せな冬。

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