あらすじ

絶滅した動物をこよなく愛する24歳のOLヨシカ(松岡茉優)は、10年もの間中学時代の同級生イチ(北村匠海)に片思い。イチとの過去を思い出しては胸をときめかせていた。
これまでずっと彼氏がいなかった彼女は、突如会社の同期・ニ(黒猫チェルシーの渡辺大知)から告白され、生まれて初めての経験に舞い上がる。
しかしニとの関係にうまく馴染めず、自宅のボヤ騒ぎをきっかけに現在のイチに会おうと思い立ち、同級生の名前を騙って同窓会を計画。
ついに憧れの人との再会の日が訪れるが、周りの同級生のようにイチとの距離を上手く縮められない。
上京組で集まることになり、イチとも連絡先を交換して、うかれまくるヨシカ。
そんなある日、上京組で集まることになり、イチと高校時代の思い出や趣味の話で意気投合してときめくヨシカだが、イチが自分の名前を覚えていなかったことにショックを受ける。
あまりにほろ苦い現実と向き合うヨシカに、明日はあるのか？
綿矢りさの同名小説を映画化。

感想

自ら「頭の中ではお喋り」と言うヨシカのイチに対する恋心を語り倒すモノローグを、妄想通りに周りの人々にヨシカが語り倒す映像として描いているのが、ヨシカの人と向き合うのが苦手で頭の中で言いたいことが溢れているのに表現するのが得意じゃない拗らせた不器用な部分をカラフルに描いている。
「現実の中で想いを表現するのは野蛮だ」「私みたいな人間の視界にイチを入れるのはおこがましい」と言いつつ、ボヤ騒ぎをきっかけにイチに積年の恋心を打ち明けるために同窓会を企画したり、上京組の集まりで彼女なりのやり方でイチと距離を縮めて現実のイチに向き合おうと奮闘するヨシカは、リア充を軽蔑しつつコンプレックスにまみれていて拗らせていたり思い込み強かったり傷つくのが苦手ですぐ脳内で自己完結しがちで不器用だけど、見ている中にだんだん愛しく思えてくる。
クライマックスで、初めてヨシカはある人物に剥き出しで真剣に向き合う。
ヨシカが、一歩現実に踏み出したラストは、解放感溢れるステキなラスト。
松岡茉優のヨシカと一体になった全力の快演が、光っている。うざいけど真っ直ぐな二を演じた黒猫チェルシーの渡辺大知、イチをクールに演じる北村匠海、ヨシカの拗らせた心情を歌い上げた「アンモナイト」という曲も、印象的。
絶滅危惧種に夢中になっているマニアックなところや高校の休み時間も漫画を描いていたり、ヨシカのすぐマイナス思考で自己完結して壁を作ってしまう拗らせ女子の描写がリアルで、イタイところを突かれつつ恋愛に奮闘するヨシカに元気をもらえる傑作ラブコメディ映画。