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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド タランティーノの70年代ハリウッドへの映画愛と踏み絵

あらすじ

リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)は、かつてはテレビドラマ「賞金稼ぎの掟」で人気だったがピークを過ぎたTV俳優。 スターへの道が拓けず焦る日々が続いていた。
そんな彼を支えるクリフ・ブース(ブラッド・ピット)は彼に雇われた付き人でスタントマン、親友でもある。
ヒッピー文化の影響を受けて変わっていくエンタテインメント業界に精神をすり減らし情緒不安定なリックとは対照的に、いつも自分らしさを失わないクリフ。
そんなある日、リックの隣に時代の寵児ロマン・ポランスキー監督と女優シャロン・テート(マーゴット・ロビー)夫妻が越してくる。
自分たちとは対照的な二人の輝きに触れたリックは、俳優としての光明を求めイタリアでマカロニ・ウエスタン映画に出演する決意をするが、それは彼らの友情すら左右する大きな運命の分かれ道だった。
クエンティン・タランティーノが、70年代ハリウッドへの思い入れを込めた監督作。

感想など

かつてはテレビ西部劇ドラマ「賞金稼ぎの掟」で人気だったが、若手の俳優のかませ犬的な敵役をあてがわれ落ち目になっているリック・ダルトンと登り調子の子役トルーディ(ジュリア・バターズ)たち若手の俳優のスターの地位を目指す苦闘を、注目の若手俳優の敵役を演じることになったドラマ「対決ランサー牧場」で撮影前日の深酒が原因でセリフが飛びながらも迫力ある熱演で失敗を挽回するリック・ダルトンの苦闘、シャロン・テートが自らが出演した映画を映画館で見て観客のリアクションに満足する喜びなどで、俳優の演技に懸ける苦闘や喜びまで丁寧に描く目線に、クエンティン・タランティーノ監督の俳優に対するリスペクトと映画愛が見えて心揺さぶる熱いヒューマンドラマがあり、紆余曲折を経てきたリック・ダルトンやクリフ・ブースを紆余曲折を経てきたレオナルド・ディカプリオやブラッド・ピットが演じるならではの説得力がある。
クライマックスの展開は、「イングロリアス・バスターズ」「ジャンゴ繋がれざる者」での「歴史の犠牲者のための映画によるリベンジ」に加えて「映画のパワーなめんな!」というタランティーノならではの映画愛があり痛快。
劇中映画に込められたオマージュも、元ネタ探しが楽しい映画愛そしてハリウッド愛映画。

ただ、劇中でのブルース・リーの描き方がブルース・リーの娘シャノン・リーの逆鱗に触れたのは当然だし、たしかに「グリーン・ホーネット」の時のスタントマンや主演スターといざこざがあったりしたことはあったけど、それはその当時に巣食っていたアジア系の役者に対しての偏見と差別に対抗するためにあえて傲慢な言動をしたり自分を見下す白人のスタントマンに対してバトルしたりしたという事情を考慮せずブルース・リーをブラピが演じるリック・ブースの噛ませ犬にした落とし前を、次回作でタランティーノにはつけて欲しい。

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