腹を空かせた犬が吠える。
それくらい当たり前に。
蛇口をひねって水を出す。
それくらい簡単に。

私はいつだって禁煙できる。だからこうしてまた禁煙を再開しようと思う。何度も禁煙に成功しているんだから間違いが無い。
私は私の意思で禁煙をした。そして私は私の意思で禁煙を終える。その繰り返しだ。

しかし煙草をやめてもいい事はあまりない。
飯の味がとても鮮明になり、肌の調子がグッと良くなり、不始末による火事の心配が一気になくなり、部屋や服がとたんに臭くなくなり、「たばこ」と書いてるコンビニを探さずに済み、小銭の減りが遅くなり、喫煙席のない喫茶店にツバを吐かずに済む。そのくらいだ。

それでも禁煙したと言うならしたら良い。海が嫌いなら、山が嫌いなら、煙草が嫌いなら、勝手にしやがれ。

禁煙なんてのは簡単だ、吸わないでいるだけでいい。たったそれだけの事だ。何も難しい事はないし、誰にだってできる事だ。
別に死ぬまで吸わない訳じゃない。吸いたいと思わなくなる事じゃない。目的は吸わない事だけで、そこを間違えちゃいけない。アル中（アル症）の断酒とは訳が違う。

何なら禁煙じゃなくて休煙としてもいい。

別にいつ再び吸ったっていい。でも吸う時はなんとなく吸うんじゃなくて明確な意思を持って吸わなきゃだめだ。なんとなくでションベンをしないように吸う時は明確な意思で吸う。たったそれだけの事だ。

別に吸いたくなる事は悪いことじゃない。吸いたくなる事をガマンする事はない。

ダイエットしてる時、腹が減ったらメシが喰いたくなる。そんなのは当たり前だ。でも喰いたくなる気持ちに罪は無い。目的は食わないことだ。喰いたいと思わなくなることじゃ無い。それと同じだ。

吸いたいなら吸いたいと思えばいい。吸いたいとツイートしてもいいし、二本の指をくちびるに充てて深呼吸をすればいい。吸ってるのは空気だ、存分に吸って、長く吐けばいい。

そうして煙草をやめられる自信がついたらまた吸ってみればいい。そしてまたやめてみればいい。いつだって禁煙はできるし、やめられる。

禁煙は解脱芸だ。価値観を変えてトリップしろ。何度でも飛べる。合法麻薬だ。

こんな馬鹿な終わり方があるものか。

緩やかな自殺も続けられないクズから頃せ。