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22.シドニーでみそを売ったときのこと③完


前回のnoteのつづき。

【前回までのはなし】シドニーでみそを売る仕事が見つかった!

企画を提案してはボツになる連続

週に1回の勤務が慣れてきたので、もっと自分のアイデアを使った新しい販売方法はないかと考え始めていた。

・インスタ

SNSを使っていたので、とりあえず自分がTramshedsで働く時はみそスタグラムのストーリーに投稿と、それを自分のアカウントにも投稿していった。

あとはみそを使った料理の紹介なども。

これはマッシュルーム屋さんにもらったマッシュルームを使ったもの。1週間に数十人単位で増えていったけど、あんまり手ごたえがなくてちょっと力を入れられなかった。

・シーズン企画 (ハロウィン)

平日は語学学校に通っていたので、通学路にあるショップでどんなものが売っているのかだったりとかを観察してみると、10月とかに入った頃はやっぱりハロウィン関連のものが多かった。

うーん、でもみそでハロウィンって結構難しい。かぼちゃとみそを掛け合わせたようなものをSNSに投稿しようと思ったけどいまいちいいのが見つからなかった。

・試食(パンかクラッカーか)

一方で、みそを実際にマーケットで売っている時に、試食でそのままスティックにみそをつけて食べてもらっていた。日本人の私でもそのままは結構しょっぱくて、お客さんが「OH!けっこうソルティーね!」(渋い顔)という反応をしているのを(分かる、そうだよね)と思って対応していた。

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マーケットでは、どの店舗さんもわりと試食をすすめている。みそをリピーターでかってくれる人は結構すぐに来て、さっと瓶をとって買ってくれるけど、みそってナニ?食べれるの?っていう人は①説明②試食③購入の3ステップを踏まなければいけない。

接客はお客さんとの会話を大事にした。たとえ買ってくれない人でも、このみそによりいいイメージを持って次は買おうかなと思ってもらいたかったし、雑談をすることで思わぬ情報が入ることもあるからだ。

みそを売ってておもしろかったのは、常連のお客さんがみそを知らないお客さんに説明しだしてくれる時があることだ。私の英語力が拙いのか、説明してるとリピーターさんが「これおいしかったのよ~白身魚にも使ったしね、妹にもあげたわ!」とか説明してくれて、新規のお客さんが買ってくれたこともあった。

オーストラリア人でみそを知っている人は、日本食=健康=みそ=ヘルシーで体によい、というイメージを持っていることが多い。会話の中で「あ、そういうふうにみそを使ってくれてるんだ!」という発見もある。


そこでオーナーと相談して、みそをみそ汁として売るのではなくて、なんでも使える調味料として売り出すために、みそをなにかにつける試食を提案した。

お客さんとの会話でみそをディップとして使っている人がいたので、最初はクラッカーにみそのディップ@マダムたちのおしゃれホームパーティを想像してクラッカーにつけてみることを提案した。

↑こんな感じのイメージで。

そこで近くのスーパーでクラッカーを購入したんだけど、味はイマイチ。

土曜日になって、オーナーと話していると、「パンにつけるのはどうか?」という話になり、マーケットで売られていたパン屋さんのパンを試しに使ってみることにした。

パン屋さんにアドバイスをもらいながら、オーストラリア人が好む硬くてしょっぱいパンにした。

こんな感じに。パンを試食に使ったことで、子どもたちが食いつくようになり、家族連れの人が立ち止まってくれることが増えたように思う。試食だけして去っていく人も増えたけど...

これも大きい数字としてバーンッと変わったわけではなかった。

・シーズン企画(クリスマス)

クリスマスが近づいてきた。オーストラリアのクリスマスは夏である。だから寒いからみそ汁飲もう!という売り出し方もできない。

うちのみそはオーガニックでハンドメイドが強みだった。パッケージもそのブランドのイメージに合わせて、看板も手書きで書かれていた。(オーナーの娘さん作)

この手作り感のある愛らしさを武器にクリスマスプレゼントとしての方向性を考えていった。

そこで、お試しセットで、いまの瓶の半分のサイズで2種類選んでもらえるような設計にしたり、リボンをかけるラッピングを提案したが、コストの問題と従業員の手間の点から却下された。

自分のアイデアでプロモーションをしてやるぞ!と意気込んできたのに、実際にやってみると全然いいアイデアが出なかった。

いままで所属していたサークルで企業とコラボしてプロモーションを考えていた時も、これやったら楽しそうじゃん!と思ったりしてプレゼンすることが多かったけど実際に実行されることはなくて、自己満足になっているのが嫌だったから自分で考えたアイデアをちゃんと実行できる機会を探していたのに、実際にその貴重なチャンスを目前にしてもろくなアイデアが出ない。悔しかった。

パン試食は採用されたけど、それで伸びた売上は微々たるもので、なかなか満足できなかった。

本当の課題はなにか?

シーズンに合わせた企画のアイデアを提案した時に、自分が見落としていたのが現場のことだった。ラッキーなことに私はいま販売員をやらせてもらえている。(というかそっちが本業) かつ、プロモーションのことも考える意欲がある。

私の雇い主であるオーナーも生産者であり、販売者だった。そして、私が販売をしているときはいつも敬意をもって接してくれていた。だから現場の目線というのは絶対になくてはならないものだったのだ。

・「並べにくいね」という一言

改めて、現場の目線からどう工夫して味噌を売っていこうか、と考えることにした。いまの仕事に謙虚に集中すると細かいことに気づけるようになった。

そこで気づけた新しい問題が「商品のならべづらさ」

私が受け持っているTramshedsでは、大きいテーブルがどんっと置かれていて、テーブルクロスをかけてみそのセッティングをするところから始まる。みその種類は6種類あるが、色が大体同じなのでいちいち正面のラベルを確認しながらならべなければいけなかった。

・みそスタンプの開発

そこでみその蓋に7種類が分かるようなスタンプを作って押してみることを提案した。「じゃあ翌週やってみようか」と言われて、消しゴムを掘って作ってきたのがこれだ。

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めちゃめちゃかわいくないですかっ!?

左からひよこ豆みそ、そばみそ、麦みそ、白米みそ、玄米みそ、(うつってないけど)田楽みその6種類だ。

オーナーにも結構好評で、すぐに採用してもらえた。自分でもこのスタンプが蓋に押してあるだけで、最初に並べるときはもちろん、お客さんへの説明もやりやすくなった。

この消しゴムスタンプ、とても手作業だが、我ながらハンドメイドみそのブランドとマッチしていてよかったと思う。

オーストラリア人にみそをどう売るか

私は「一流のPRパーソンになるには自分で事業をやるのが一番いいよ~」という嶋浩一郎さんの言葉をうけ、この経験をすることになった。

PRの「新しい当たり前をつくる」ということに憧れ、「関わる人全てとwin-winな関係を築く」ことに共感していた。そんなざっくりした憧れと共感で知識もなくとにかく手さぐりでやったから、今思えばPRやりたいって言ってるのにPRの大前提であるパブリシティの獲得(ニュース性)とか全くなくね???笑とも思うんだけど、行動してやってみた結果学んだことはたくさんある。

・オーストラリア人にとってどう思われるのか

消費者は大体オーストラリア人。みそは日本の商品だけど、彼らからの話をよく聞くとみそをどう捉えているのかが分かる。それをヒントにして設計していく。

・win-winであること

売り手、お客さん、生産者の三方良しの企画はいい企画。

・新しい概念をつくること

今回これに関してはあんまりできなかった。

やっぱり商売はお客さんがいてくれてこそ、だからまずはお客さんと商品の関係をしっかり観察することが大事。その中の発見を見逃さないようにする。


まとめ

私の中ではみそスタンプの開発が一番手ごたえがあったんだけど、それは2つ目の関わる人全てがハッピーになる企画をできたからだと思う。

数字の達成で満足を感じる人もいれば、周りからのありがとうで満足を感じる人もいる。これに関しては人それぞれだから何とも言えないけど、私が満足するのは関わっている人が全てハッピーになったなと感じる瞬間だと分かった。だから、これからもそういう仕事をしていきたいし、そんな仕事を自分でつくっていきたい。

あと改めて、いろんな人の視点を出していけるのは強みだと思った。そういえば、高校の志望動機も「多様な人の視点を学んで価値観を広げたい」だったし、大学のゼミも違う立場の人の視点を考えて繋いでいくことだったからそっちに興味があるんだろうな。想像力をフル活用して、あらゆる立場の人を考えられる力をちゃんと意識して鍛えていく。覚えておかなくちゃ。


経営者の在り方

オーナーはとても最高の経営者だった。バイトしていて売上がよかったら、その分還元してくれたし、販売者によりよい条件の給料体形を提案してくれたりした。

ずるがなかったし、「販売してくれる人がいてこそ成り立ってるからね」という言葉がいまでも忘れられない。

かっこよかったし、こういう人になりたいなと思った。

あと、大学を出て寿司職人になって、数年後シドニーに来て、料理人になったり、自分でカラオケ店をやったり、いろんなビジネスをやったりしていまみそを売っているという経歴もまた素敵だった。

失敗してなんぼ!という精神に勇気づけられた。

しかも今より海外に渡る人が圧倒的に少ない中、オーストラリアに行くという挑戦心。


私はまだまだできることが少ない。とりあえず新卒ではwebディレクターになると思うので、とにかく早くいろんなことを吸収して、一通り仕事ができるようになって、オーナーにも世界中から発注がくるような最高のwebサイトをつくってあげれるようになったらいいなあ。



全3回にわたるシドニーでみそを売った話を読んでくれた方ありがとうございました。

もし質問があればお気軽にコメントしてください!

海外でビジネスをした経験は、自分ができないことを日々突き付けられてるようで大変でしたがその分とてもいい経験になりました。

まだまだ実力がないので、3年後に海外で働けるように、いまはしっかり日本で実力をつけます!

それでは!






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