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踏み込みが語る来し方――殺陣と人物描写

 去年の12月に怪我を負って、しばらく療養していたのですが、その怪我の原因を記録しておきます。  人に、説明をしていたのです。  映像作品の基本は脚本だと思っています。お話を良くするのも悪くするのも、基本は脚本。音楽や映像の力もそれはそれは強いものですが、破綻した脚本は何をもってしても救うことはできません。  ただ、時に、ほんの小さな芝居が数十行の脚本に勝ってしまうのも、映像作品の魅力です。  ある警官が事件の発生を知り、ダイナーの席から立ち上がる。しかし立った後で、残

    • 文学としてのマリオ――ゲームは「死」をどう描いたか

      1.穴に落ちたマリオ  マリオが穴に落ちて軽快に1ミスの音楽が流れ、暗転した画面に「WORLD 1-1」と再表示され、次のマリオが再びスタートラインに立った時、穴に落ちたマリオはどうなったのか考えたことはないでしょうか。  人生は一回限りであり、死者は甦りません。しかし一回死んだらすべて終わりでは、ゲームにならないのも確かです。  ゲームの主役が無機質なマークに過ぎない場合、その死と再生に思いを寄せることはほぼありません。  ボールを落としてしまった「アルカノイド(ブ

      • 花も花なれと詠んだのは――ガラシャの「辞世」

         何の折りだったのかは忘れたのですが、ガラシャの辞世が小説でどう書かれているか知りたくなって、手近にあったので山田風太郎を開いたことがあります。「忍法ガラシャの棺」だったかと。  ところが、作中のガラシャは辞世を詠んでいない。あれ? と思いましたですよ。  ガラシャの辞世と言えばなんといっても、  で、ガラシャを扱った本の題名にも、しばしば採られています。  こう、なんといいますか、実に山田風太郎的な辞世です。死ぬべき時に死ねなかったつらさを何度も書いている人ですから。なの

        • 可能性のない若者、ある若者、そして警官――『21ブリッジ』

          『21ブリッジ』(2021アメリカ ブライアン・カーク監督)、緊張感に満ちて美点の多い映画だった。これは三人の映画だ。  可能性のない若者。  可能性のある若者。  そして警官。 可能性のない若者  貧しい白人レイ(テイラー・キッチュ)がよかった。  ニューヨークはマンハッタン島で麻薬強盗を試み、はからずも警官隊と銃撃戦になったレイは、被弾して倒れた警官たちにとどめの銃弾を撃ち込んでいく。  ここで、観客はきっとこう思うのだ。 「こいつ、なんて残酷な犯罪者なんだ!」  

        踏み込みが語る来し方――殺陣と人物描写

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          とどろけ我が心、と頼政は言った(か?)

           事の始まりは塚本邦雄の『王朝百首』で、ほうほうと思いながら読んでいたら、  という歌がありまして、これがまあ、すごくいい。  どこがいいかと言いますとですね、「花咲かば告げよと言ひし山守の来る音すなり」までなら、ほかの誰かも詠むんじゃないかなとは思うんです。  では最後の七音、どうするか。  よくある感じだったら、「心ワクワク」とか「君を誘うね」とか、あるいは誇大比喩で「花の神かな?」とか、そういうのかなぁと思うわけです。  ところがここで「馬に鞍置け」。まだ山守は来て

          とどろけ我が心、と頼政は言った(か?)