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周りが幸せにならないと、自分も幸せにならない人

私の勤めている事務所の代表は、ギバーで、自分の事は後回しで周りの事を考えるのが標準仕様というタイプだ。

ギバーというのは、『GIVE&TAKE』というビジネス本で広まった、『与える人』の概念で
その本によると、全体の20%ほどの人がギバーの性質を持つと言うことで(アメリカ調べ)「うちにもおるわ。ギバー」とすぐに代表が思い浮かんだ。

うちのギバーはこんなんです、という話。

私が入社した10年前は、今と違ってザ,福祉!という感じの(個人的なイメージ)殺伐とした雰囲気の事務所だった。会社っぽくなかった。(NPO法人です)

常勤スタッフは、スネに傷もつ、アウトサイダーの集まりだった。一癖も二癖もあり、代表以下先輩方は事務所に居ないことも多く、いったいどこで何をやっているのか不明だった。

ウツな人がいたり、仕事が嫌すぎて腹痛訴え帰ったり、机に突っ伏して寝ている子や、何か訊いても「私何も知らないんで」とあしらわれたり、何モンじゃ、と一瞥される。電話が鳴っているのに出ない。また、脳梗塞で高次脳機能障害になった人も「お掃除」のアルバイトで週一回来ていたが、見るからにボンヤリしていた。

私は、わー。傷ついた人が傷ついた人を相互にケアしているコミュニティな訳ね!福祉の理念やね!働き方の先端やん!と思った。かくゆう私もはみ出し者だ。

アウトサイダーたちはみな、代表に全幅の信頼をおいていることはすぐに分かった。
「私ほんま世話になってるから」「最後は絶対ケツ拭いてくれるから」という言葉も聞いたし、態度に見てとれた。代表を信用して指示に必ず従っていたからだ。

そのころの代表は、事務所が小さかったので、高齢者や障がい者に体当たりでケアを行っており、自ら仕事を獲得しに行っていた。
いわゆるブラックリストに載りそうな「クレーマー」「ごみ屋敷」など厄介な利用者の懐に飛び込み、自分の度胸と愛嬌と身体能力を発揮していた。

それは、なんとか難しい人も良いお客さんにしようとしているのではあるが、どちらかというとカリスマプレーヤーとしての本領という感じだった。
人間の心をほだすことが好きなのだろう。

代表は自分の仕事に時間など気にも止めず、動く限り動く「生物として目の前の事をやるだけだ」という気迫があった。「自分が出来ることは全て実地でやる」という現場主義のスタイルだったので、事務所の規律は二の次三の次になって殺伐としていたわけだ。

ちょっといま、思い浮かんだが、漫画家の手塚治虫はまさに「自分で全部やりたい神の権化」だったようだ。超絶仕事かかえの無茶ぶり逸話に事欠かない。

代表は幸い、そんな迷惑な神レベルではなく、周囲のことを考えるすぎるくらいの真面目さがあったので、次第に事務所が大きくなるとともに、規律を整えねばいけないフェーズに入る。カリスマプレーヤーは、次第に現場のフィールドから離れていくことになった。

介護熟練者としての心技体の活躍の場は少なくなったが、会計経理に強く、今度は「利用者に奉仕する」から対象が「スタッフとその家族」に目線がいくことになった。
スタッフが休むためには、自分も休まないといけない、と思い直してちゃんと休暇をとるようになった。

自治体の指導を受けるたびに、とにかく負けん気が強いので「自治体指導に絶対に何も言わせねえ」と燃えまくる。

素直なだけに口下手で、ひとり燃えている理由を(自分の大切な事務所を、役人なんかに絶対にちょっとでも悪く言われたくないぜという気持ち)上手く説明できないので、スタッフにとにかくあれをやらなアカンねん、これもやらなアカンねんと熱く仕事を課す。
もっとこうしよう、もっとああしよう、なんで皆やる気にならないんだ!とより良い事務所にするために意識は拡大する。
ギバーなもんで、みんなの分ける幸せのパイを大きくしたいのだ。

残念なことに、なにせ表現力がないため「代表はどんどん仕事を増やしてお金儲けをしたいんだ」と見えてしまう。古いスタッフでも「代表は変わってしまった」と言うし、私も「そんなに事務所を大きくしなくても」と言ってしまう。

そうじゃない、そうじゃないけど自分の事はもうどう言われてもいい、とにかく皆を幸せにしたい!と蒸気機関車のような代表は、このコロナ騒動の期間中、よっしゃキター!と石炭をくべまくって燃えていた。

思い付くことは片っ端からやる。かき集めた消毒液とマスクをスタッフや利用者さんにどんどん配布する。スタッフの頑張りに「コロナ危険手当て」を創出する。もし利用者さんやスタッフが感染したときの備えを寝ずに考える。事が収まった後でも自治体へ胸を張って『対策』を提示できるように、何枚も書類を作る。この機会に何か仕事の拡大につながるアイデアを出せないかと情報をみまくる。

私から見ると、大変だなあーと思うばかりだけれど、ギバーって、こんなんです。

もし、ギバーのもとで働きたいと思われた方はぜひ見学だけでもいらしてください。
10年前より(笑)ずっとちゃんとしています。スタッフもみんな代表に負けずピュアな性格です。安心してください。
仕事をしてくださる人には代表が親愛をもって、初任者研修費用などを負担します。
正社員も絶賛募集中です。

http://www.dear1.net

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