ドイツの思い出

先日、大学の後輩のKが結婚した。思い返せば、Kと知り合ったのはドイツへの研修旅行プログラムだった。
 
就活を何とか終えた大学4年生の夏、ヨーロッパ旅行を目当てに申し込んだのがそのプログラムだった。
 
朝一番の便でフランクフルトに向かうため成田空港近くのホテルに前泊した。8月初旬の蒸し暑い夜、京成成田駅からホテルに向かうバスにたまたま乗り合わせたのがKだった。
 
私が4年生で彼は1年生。学年は離れていたけれど、高校が隣駅同士で、二人ともバスケ部に入っていたことが分かりすぐに打ち解けた。
 
語学研修といっても実際は大学での語学研修は前半の10日ほどで、残りの2週間はドイツ各地と東欧を回る旅行だった。
 
プログラムへの参加者は1~4年生まで20名ほど。座学の授業は4月から始まっており7月までに各自でこれから訪問する各都市についてのプレゼンを行った。

ただ、授業は静まり返っておりクラスのメンバー同士ほとんど交流もなく、これから彼らと1か月近く一緒にドイツを回るのかと思うと不安に感じていた。なので、バスでKと話せてほっとしたのを今も覚えている。
 
でもドイツに着いてすぐにそのような不安は吹き飛んだ。

毎晩、語学のクラスが終わると誰かの部屋に集まり、飲み会が開かれた。教室ではあれだけ静かだったのに、酒が入ると嘘のように賑やかで愉快な集まりに変わった。
 
なかでもKは不思議な魅力の持ち主で、ドイツ人も日本人も関係なく、仲良くなっていった。かなりの変わり者だけれどその一方で真面目なところを持ち合わせておりとにかく憎めない奴だった。
 
あれからもう8年近くが経ったと思うと時の早さに驚いてしまうけれど、久しぶりにKの結婚式で集まったみんなの顔を見てドイツでの一夏の日々を思い出す。
 
いまは会うのは年に数えるほどだけれども、合えばすぐに腹の底から笑い合える。
 
数えてみると一緒に過ごしたのは23日しかいないけれど心から打ち解けた友人達だ。
人間関係の深さというのは、過ごした時間だけではなく、その濃さによると思う。
 
Kの結婚式を機にあらためて彼らと出会えたことをありがたく思う。

そしてその分だけ関係を失うことの痛さを思い知る。

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