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孤独を紛らわす術

先週の半ばからドイツに出張に来ている。

出張に出ると、フライトをはじめ、一人で過ごす時間がどうしても多くなる。

自然と一人で考え込んだり本を読んだり、文章を書いてみたりと、内省的な生活スタイルになっていく。

自分の内側を覗く時間が普段よりもずっと長くなる。

すると、ふと孤独感に襲われることがある。

いまはWi-Fiがどこでも使えるので、日本にいる家族や友人とも即座に連絡を取れる訳だから、かつて海を渡った先人たちが感じたであろうそれとは比べようがないだろう。

それでも物理的な距離を離れた場所にいると、どうしようもない寂しさが急にこみあげてくることがある。

特にこの時期のドイツは日の出は8時過ぎで夕方4時には日が沈む。

ベッドから起きていまが朝なのか、夜なのかを知るには時計の針だけが頼り。日中も大半はどんよりとした曇り空で、日が昇ったと思う間もなく傾き始めている。

それがまた一層の寂しさを掻き立てる。


冬の北ドイツの空には、寂寞(せきばく)という言葉がぴったりだ。

…なんて、これまで使ったことのない言葉が浮かぶくらいに、センチメンタルな気分に浸らせてくれる。

長い長い夜は、誰をも孤独で包み込む。

家族や恋人、友人や同僚がいようがいまいがお構いなしに、すべての人に平等に。

そんな寂しさを紛らわせようと街はここぞとばかしにイルミネーションで飾りつけられて、LEDの光が燦燦と夜の街頭を照らす。

こんなに風が冷たい夜には暖かい家で丸くなっていれば良いものを、人びとは暗く寒い冬に抗うように夜な夜な街に繰り出して、グリュワインを片手に意気揚々とクリスマスマーケットを巡る。

クリスマスマーケットを眺めて思う。
ああ、みんなも寂しいだな、と。

だからみんなで集まって楽しく騒いで、自分たちの気持ちを盛り上げているのだ。

そう、寂しいのは私一人じゃない。
みんな等しく寂しいのだ。

そう思うと寂しさも少しは紛れる気がした。

孤独を紛らわすには、自分一人だけが独りな訳じゃない、と気付くことから始まるのかもしれない。

今年も残すところあと1ヶ月ばかり、寒い日が続きますが、どうぞみなさんも御自愛くださいませ。

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