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掌編|意味のある人生|#青ブラ文学部

#青ブラ文学部のお題「答え合わせ」に参加します。

お題:答え合わせ
『意味のある人生』

わたしは棘のある薔薇だった。
人から、あなたは美しいと云われても、素直に喜ぶことができなかった。
むしろ警戒して、その彼との間に予防線を引いて、彼を遠巻きに眺めているのだった。


ぐさりと棘を刺してしまうこともあったわ。
そんなとき、彼の瞳の黒目は灰褐色を帯びてゆき、
とても悲しそうに、わたしを憐れむのだった。
生意気な女だった。
誰か一人のものに収まりたくなかった。

彼はある日云った。
「きみにとって意味のある人生ってなんだい?」
わたしは、答えに詰まった。
「人生に意味なんてないわ。ただ、その瞬間を愉しんでいるだけ」
わたしはいつものように、生意気に応えて嘯いていたの。

夕暮れの空に、真っ赤な太陽が沈もうとしていた。
未だにわたしは棘のある薔薇のままだ。
なにかを云いた気な彼の言葉をいつも遮って、
わたしは強がりを言い続けていた。

彼はとても辛抱強いのだと思う。
そしてわたしも負けないくらい、生意気だった。

太陽が完全に沈んでしまうと、辺りは紫色の闇に覆われた。
わたしは、ほんとうのわたしは、既にもう、とっくに迷子になっていた。
わたしの人生に、意味なんて必要ない。
でも、と思う。

人生の意味を考えさせてくれた彼がいたから、
わたしには希望があったのかも知れない。
わたしには、もう棘のある薔薇が似合わなくなってきていた。

わたしは、ずっと、彼の問いの答え合わせをしているの。
人生のあいだ中、ずっと。
(おわり)


602文字(原稿用紙1枚半)です。
なかなかお題で思いつかなくって、、、。

なんとか間に合いました。

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