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僧院ツアー①~ダンカル~

カザからタボへの道は整っている。
スピティ川は流域を広くして、流れは早いものの開けた風景である。
幹線道路は川の流れに沿って走っているので、高低差もあまりなく、走り易い道といえるだろう。

タボに宿泊を続けながら、1日で3僧院を巡るツアーは、朝8時半頃に出発した。
満月の翌日だった。

1日限りの行程なので出入域の申請は必要無いかと思ったが、
その日にタボを出発し、チェックポストのあるシチリン(Sichiling)を通って日帰りしても、行きも帰りも顔見せが必要だった。
もっとも、運転をして下さったお坊さんが真面目な方だったからかもしれない。

タボ僧院を出発し、シチリンを通ってダンカル僧院へ。
ダンカル僧院からラルン僧院へ。
ラルンからカザを通り抜けてキー僧院へ。
そしてタボへ帰るという道筋である。

タボからシチリンまでは幹線道路をスピティ川に沿って進む。
途中で1度停まって、お坊さんは道沿いの家に、お供え物のお下がりと袋を置きに行った。
身体の大きな方だったが、意外に軽い身のこなしに驚いたものだ。
20年車を運転しているという。

シチリンで登録をし、少し進むとダンカルへ向かう上り坂がある。
「ようこそダンカルへ」
みたいな門があるので、すぐ分かる。

ナコへ行く日に、ダンカルを巡礼し終えたインド人カップルに会った。
幹線道路から分かれて上らなければならない(バスは通らない)ので、行くのは難しい。
しかしダンカルへ着けば、非常に美しい星空が見える。
是非行くべきだ、と鼓舞してくれた。
その時「インドで最も高い場所にある僧院だ」と聞いたような気がしたのだが、どうもそうでもないらしい。

ともあれ、幹線道路から外れてダンカルへの道を進む。
道は整っていて、上り坂も緩やか。
途中にヘリポートもあった。地方のオフィサーが訪れる折、時々使われるのだという。
視界は開けていて、下にはスピティ川も、対岸にある山も雄大に見える。

いわゆるおじさん世代のお坊さまが運転をして下さったので、車内に流れる音楽も暢気なチベタンソングが多く、早すぎない長調の流れで、安心して車に揺られていた。

ダンカルが近くなり思ったことは、「村の人はどうやって水をひいているのだろう?」ということだった。
見える限りで水源になりそうな流れは見つからない。
(近くに湖があったことを、後で知った)
スピティ川から引くにしては、遠く高過ぎはしないか?

これも後で知ったことであるが、ダラムサラに住む友人の旦那様の実家が、ダンカルにあるそうである。
ゲストハウスを経営しているそうだけれど、水を何処から引いているのか、次に会った時にきいてみようと思う。

さて、ダンカル僧院は、岩山と一体化した様子で撮影されたポストカードが多い。

現在は新しい僧院が下の方に作られ、多くのお坊さんはこちらで生活しているという。
上の古い僧院は、普段は鍵がかかっているそうだ。参拝者がいると開けてくれる。
今日は先程参拝者が訪れたので、誰かが鍵を持って上がったと、お坊さんが言っていた。

「今行けば開いてる間に参拝できるから、急げ。」
と言われたわけである。
歩いていける距離ではあるが、お堂の前を車で突っ切って、更に道を上がった。

ダンカル僧院は、建てたというよりは岩を掘って僧院をはめ込んだような作りである。
岩のような山肌が近くて、引いて写真を撮ろうとしても引くスペースが無い。
写真で見ると小さく写っているが、実際は考えていたより大きい。
近距離で撮影ができないので、遠くから撮るしかないのだろうか。

1000年前にロツァワ・リンチェンサンポによって開基された108の僧院のうち、残っている8僧院の1つと聞いたのだが、
1日ツアーでゆっくりお話を聞く時間もなかった。
ドライバーのお坊さんは、寡黙ではないが歴史を詳しく話してくれる方でもなかった。

僧院の中の階段は、土と砂でできたカタツムリの殻の中を行くような感じ。

新しいお堂を参拝するための拝観料は必要ないけれど、
古い僧院の最上階にあるお堂に入る時には、拝観料が必要である。
25ルピー。
ちゃんと領収証をくれる。

タボやナコの古いお堂は、手入れされているかどうかの違いはあるといえ、保存されているのみで、現在進行形で使われている様子はなかった。
しかしダンカルの古いお堂には、常駐しているお坊さん(その日は何かの用事で山を下りていた)の生活空間が、お堂の隅、お堂の入り口にちゃんとあった。

具体的には、読みかけのお経がのったテーブル、普段使われているだろうカップや収納用の金属棚。お堂に入る前、玄関先みたいなところの端に置かれたマットレスや毛布などである。
1000年の歴史を持つお堂で、生活している人がいる。

古い僧院なので、写真撮影は禁止だった。
尊像も少し黒くなりかけながら、穏やかにその場を見守っている様子だった。

外に出て振り返ると、僧院の壁が岩の山肌から生えているよう。
不思議な感覚になる。

古い僧院のすぐ外にカフェがあり、インド人観光客が眺めを楽しんでいた。
それにしても、水はどこから引いているのだろう。

ダンカルから幹線道路には戻らず、
川沿いの道から外れてラルンへ向かう。

つづく。


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