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シミから花柄

長くひとところに留まった後で、
短期間であっても移動することは、結構ワクワクするものだ。

旅行の準備と称して戸棚を開けてみると、長いこと入れたままだったものが思いもかけず出てきて、その処分にまで頭を使ってしまう。
以前からそうであるが、旅行の準備を始めると異常に時間がかかってしまうのは、その時に一緒に古いものの片づけをしたりするからである。
夜に始めると、寝るのが夜中になったりする。

道中必要なものがあった。
書類を入れるファスナー付きの袋である。

道の途中で外国人登録をしなければならないかもしれず、その為にパスポートとビザのコピーが必要だ。
旅先でコピーしようと思っても、田舎に行くと時々電気が止まっていて、予定時間内に仕事が済まない場合があるので、あらかじめコピーして持参することが多い。
このコピーをクチャクチャにせずに持って歩けるような、しっかりとした袋が必要だった。

確か、ファスナー付きの黄色い袋があった。

それを探そうとした時、重なっている紙や袋の中に紛れている筈だと考えた。
置き場に困ったものをとりあえず置いておく場所で、とりあえず置かれたものが山になっている。
ゴソゴソ探すと、ちゃんと出てきた。

しかし、長く使っていなかったので、表面にシミができてしまっている。

この袋は、以前先生から頂いたものだ。
先生が出張から帰って、必要なくなったものを捨てられず、近場にいる貧乏学生だった筆者に下さった。
お坊さんが使っておられたものなので、真っ黄色である。

お下がりの袋は長いこと戸棚の奥深くに積まれていた。
しばらく前に久しぶりに発見した時には既にシミが浮き出てきており、消しゴムで消しても消えなかったので、処分しようと思っていたものだ。
それでも品質が良かったので、誰かに譲れるかもしれないと思いながら、とりあえずの置き場所に一時保留として積み上げておいた。

それを掘り出したわけである。

掘り出す前に、一つイメージが湧いていた。
黄色い下地に薄茶のシミがポチポチ(少ないところ)、ボボボボ(多いところ)と出ていたので、このシミを使って模様が描けないものか。
下地が黄色なら、薄ムラサキで小花を描いたら、反対色だからきっと映えるし、薄茶が影のように働いてステキになるかもしれない。
薄緑でチョビチョビと小さな葉っぱと、唐草文様のような茎を描けば、それもシミを隠してくれるかもしれない。

一応出来上がりのイメージを持って、ペンを買いに行かなければならぬと考えていたら、
薄ムラサキ色と緑色のボールペンも、カンの筆箱に入っていたことを思い出した。
昔お菓子が入っていたカン箱である。

二色のボールペンも、ここしばらく使っていなかったものだ。

カン箱の中から、二色のボールペンと一緒に、金色のマーカーペンも発見した。
これも日本で買って、使わないまま時間が過ぎ、五年以上の時間が経っている。

久しぶりのファスナー袋と、ペンとが揃って、久しぶりの旅行準備の絵付けが始まった。

ムラサキ色のペンは紙には描けたけれど、袋の織り目のボコボコには上手く馴染まなかったので、色を使うことは諦めた。
金色のマーカーは、インクがペン先からしみ出てくるタイプだったので、細かい縦横の織り目があっても、色が付けられた。

そうして、薄茶のシミがあるところに金色の花を描き描き、
袋のリフォームが終わった。

この作業も、始めた時はちょっと試しに程度で始めたのに、
やり始めると区切りがつかず、
気付いた時には終わっていたが、時間も過ぎていた。
他の旅行準備と同じパターンである。

ともあれ、出来上がった小花柄の黄色い袋は、華やかなものになった。
花が多くちりばめられているということは、それだけシミが多かったということである。

使っていなかったものを断捨離しようと保留にしていたものが、
見事に復活した一つの例である。

この袋に、パスポートとビザのコピーを入れて、
手帳や一~二本のペンと、輪ゴムやクリップを入れて、
山の方へ出かけよう。



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