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エピソード(VIII-1):「応地」により生まれる不思議な脊柱・体幹筋群感覚(身体軸)-私たちは脊柱で生きている:身体軸が主、四肢は従-

華輪の説明でも述べたが、西野流呼吸法を稽古して最大の「不思議」は、稽古を通して我々の中の旧い身体の事を想う点、気付く点である。
華輪の稽古では、身体軸を中心にして腕はブランブランと身体に纏い付き、膝はこれに併せて屈曲する。腕(上肢)は身体の中で主体的存在感ではなくなる。
そして身体感の主体、それは身体を貫くものとしての脊柱・体幹筋群の「身体軸」であると感取できる。

この応地においても同じような脊柱・体軸感覚を持つようになる。
脊柱をまっすぐにして、腕の脱力とともに上から下へストンと落とす(緊張から弛緩への急な変化)動きで、不思議な身体軸の世界になっていく。「腕がない」ような身体上下軸の世界である。
これは一体なぜだろう?

脊椎動物が陸上にあがる前、魚類は水の中で前後に伸びた背骨とそれに付いた腱・筋群をしなわせて、前方への推力を生み出していた。
身体軸こそ、前進運動器官としての本体である。
そうした身体軸感覚が直立位でも感じられるのが、西野流呼吸法の基礎Bodyworkである。

この身体軸である脊柱・体幹筋群の推力を使って鯉は滝を登る。
若鮎や鮭は生まれた川を遡上する(YouTube、鮭の滝登り)。
四肢に相当するヒレ(鰭)は、当初は方向舵のようなものである。

それだけではない。
一度は陸上で進化した四肢を持ちながら、再び水中に戻ったのは哺乳類の鯨やイルカである。クジラの仲間は、ゲノム構造の特徴(SINE、二階堂研究室解説)から、カバのような偶蹄類に近縁と判明している。「クジラ偶蹄類」といわれはじめている(Wiki、クジラ偶蹄目)。
イルカは水中から見事に背骨と構成する筋群の身体軸推力で水面に飛び出しジャンプする(タイトル図参照)。

爬虫類の中にも、陸上で四肢をなくしてくねり運動をするヘビがいる(タイトル図参照)。
現在のヘビはウミヘビからの進化ともいわれる。種によっては後肢相当の爪が残るという。
最近その原因として、形態形成関連のソニック・ヘッジホッグ (Sonic hedgehog, SHH)の調節領域変異と関連するともいわれている(Cell論文2016)。

こういう事実をどう理解すれば良いのか?
MMC系プログラムが前進運動の本質で進化の前後でも不変である。
必要になればそれが前面に出る。
一方、四肢の動きに関連するLMC系構造は消失しうるのか?

脊椎を伸ばしたり捻る事(MMC系支配の筋群による運動)は、脊椎動物にとって、この上ない快感なのかもしれない。
脊椎とそれに付着する腱や筋群を使っての躍動感が、生きる喜びそのものではないか?

この身体軸伸展の気持ちよさから、その伸展を先導する吸気・呼気としての呼吸法が数千年前に生まれたのでないか?
体幹運動と呼吸運動は表裏の関係だというのは、この点でも明らかだ。

さて、呼吸法基礎の稽古もそろそろ終わりに近づき、「対気」というさらに「不思議」な二人ペアーで行う稽古がはじまる。

「対気」の楽しさは、2人の間の脊柱・体幹筋群(身体軸)の相互作用にあるのかもしれない。
実際にMMC系筋群の相互連携性を感じるが、現行生理学では個を越えてのSignaling機構へのLogicはない
手背を介していかに相互の身体軸を感取し、それに働きかけることは可能なのか?

西野流呼吸法「基礎」Bodyworkとは、そうした脊柱「身体軸」基礎感覚を訓練している。


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