大河ファンタジー小説『月獅』 第1幕:第4章「蝕」<全文>
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第1幕「ルチル」第4章「蝕」
森の心臓部にある「萌の褥」は王の玉座だけあって、川原の荒廃とは隔絶し、濃く深い緑に包まれ清らかな光が降りそそいでいた。
六歳の夏に見た白の森と変わらず、懐かしさと安堵がない交ぜになりルチルの目尻から熱いものが溢れる。銀苔も厚く層をなしている。白銀に光る鹿の王がそのすらりとした四本の脚で下草を踏