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人生初カラオケの思い出

20代の大半を引きこもりとして過ごした自分も、30前後にどうやらバイトをやるくらいには回復した。

短期バイトのリピートをしているうちに、そこの社員さんに気に入られ、パート契約することになり、気が付くと、パートリーダーみたいな地位(?)になるのに2年かからなかったから、僕の社会復帰はそこそこうまくいってたのかもしれない。

リーダーは、短期バイトのお世話をしたりしなければならない。

部署外の短期バイトさんから、恋愛の相談を受けた。

僕の部署にきてる専門学生の女子が好きで、どうすればいいですかみたいな相談だった。
その男子は、僕から見ても相当なイケメンで、「君がその気を出せば、あっという間に堕ちるのでは?」と思ったけど、イケメンではあるが、メンタルが弱そうで、まともな就職は考えていないらしく(もしくは、できない事情があるらしく)どこかヤクザな雰囲気も漂っていて、それもまた、彼のイケてる雰囲気を際立たせていた。

当時は、個人情報の保護だのなんだのに、まだうるさくなくて、その専門女子のケータイ番号とか個人情報とかが書かれてある書類は、パートでしかない自分がよくもあしくも簡単に見れる場所に無造作に置かれていた。

彼女のケータイ番号が分かるという特権(?)を利用(?)して
「彼女の番号分かるから、こんどカラオケにでも一緒にいけばどうか?」と、数年前まで引きこもりで、カラオケなぞ行ったこともない自分は、自分でも驚くほど調子よくはなしを進めた。

その専門女子は、僕から見て、はなしやすい人だったので
その日の夜、いまの自分からは信じられないくらい驚くほど簡単に電話をかけた。

知らない電話番号からの自分の電話は、着信拒否にもあわず、おどろくほどあっという間につながり、さっそくはなしをきりだした。
「実は、○○部署のバイト君が、○○さんとカラオケ行きたいっていうんだけど、どう?」
「ああ、それなら、いい場所を知ってるんで」

若干22歳くらいの彼女は、3人の住んでる、丁度中間地点にあるカラオケ店をすすめてくれた。

あたまのいい娘は、ホント助かる。


その日の夜を迎えた(急にワープするな)
僕とイケメン君がまず合流し、彼女と合流した。

彼女は、チャイナドレスのようにサイドが切れ上がってるスカートをはいてきた。
バイト先に着てく服とあまりにイメージがちがい、驚いた。

はっきし言って、フツーにOK!のサインだ。

慣れない、僕とイケメン君を、22歳ではあるが、どっしり落ち着いてる彼女にリードするようなかたちでカラオケ店に入った。

3人だし、はっきし言って、盛り上がりにはかけた。

自分は1曲目を、たしか、スピッツの「空も飛べるはず」
2曲目を、たしか、カーペンターズの「ジャンバラヤ」と、好きではあるが、おおよそカラオケでは盛り上がらないこと必至のまずい選曲をした。

イケメン君は、ケミストリーの「ピーセス・オブ・ア・ドリーム」という、誠実さは伝わるが、やはり、盛り上がりにはかける、カラオケでは、ややシラケてしまいそうな曲を切々と歌い上げた。

専門の彼女が、何を歌ったのかは、まったく覚えていない。
なにせ、切れ上がったスカートから見える太ももばかりが気になった。

彼女は、途中タバコを吸うため、外へ出た。

バイト先では、まったくタバコを吸わなかったため、ちょっと驚いた。

事実上の幹事だった自分の切り盛りは、お世辞にもうまいとは言えなかった。
なにせ、カラオケ初体験だ。

3曲目は、イエモンの「太陽が燃えている」を歌った。
歌うのが僕じゃなければ、すこし盛り上がったかもしれないけど、ビミョーに手遅れだったか。

時間もそこそこすぎたので、お開きにすることにした。

折角、彼女が、切れ長のスカートを履いてきてOK!のサインをだしているのだから、そのあと、ふたりをうまくオーガナイズしてやればよかったのかもしれないが、適当なやり方が思いつかず、こともあろうに、僕ら3人は、そのまま駅へ向かった。

僕とイケメン君は、同じホームに
彼女は反対ホームにいた。

電車がくる少し前、咄嗟に、反対ホームの彼女に
「今日は、楽しかったよ、また行こうね!」とわけのわからないセリフをくりだし、大きく手を振ってみた。

彼女は、いちおう笑顔で、うなずいてくれた。

「おい、お前も、なんか言えよ」と、イケメン君をどついたが
もじもじしている。

そうこうしてるうちに、電車がホームにすべりこむ。

結局、それが彼女を見た最後にいまのところなっている。

9.11テロがあった年のはなしだ。

イケメン君は、まだ短期バイトの期間が切れてなかったので、職場で数回顔をあわせたが、顔を合わすと、彼女への執着を未練がましく、僕に訴えてくる。

僕は、彼みたいなイケメンが、彼女をおとせずうじうじしてるのに、だんだん腹立たしさと鬱陶しさが入り混じった気持ちになり、疎んじるようになった。

めんどくさくなってきた。

だって、ケータイの番号までわかってるんだから、あとは自分でやれよ!って気になった。

人生初カラオケは失敗だったともいえるが、
多分、大枠的には、失敗ではなかった。

駅で笑顔でうなずいてくれたのだから、二度とゴメンでは、おそらくなかったのだ。

どうにかしようと思えば、どうにかなったのだろう。

彼女のケータイ番号は、その後ガラケーの水濡れとかで消えてしまった。

いまみたいにクラウドがなかったので、データーの損失は、縁が切れることを意味していた。

イケメン君と彼女が、その後どうなったのかはわからない。


(あとがき)
昨日インストールしたラジコでFM横浜を聴いていたら、スピッツの新曲が流れてきて、スピッツの昔の曲に想いを馳せてたら、人生初カラオケのことを思い出し、サクッと記事にしてみました。
むかしは、個人情報の扱いが、いまより大らか(雑)で、それゆえ、職場でだれかのケータイ番号が、ふと分かってしまうみたいなアクシデントが、フツーにあり、こんなカラオケが実現したわけです。
専門の彼女も、知らない番号(僕の)からかかってきた電話に、あっという間にでてくれました。
この単純さが、いまでは懐かしい気もします。
「初」って、なんか甘酸っぱさがありますよね。


昔の日記のような文章をここまで読んで下さった方々、ありがとうございます。
よかったら、また遊びに来てください。

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「人生初カラオケの思い出」でした。

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