見出し画像

タクシーを「地域の公共交通」へ変革する挑戦ー電脳交通が目指す役割と思い描く未来とは

「地域交通の課題は一様ではないからこそ、その解決にはプロダクト以外の形も模索し続けている」

COOの北島が話すように、電脳交通ではタクシー配車システムと配車委託システムを土台に「次世代の『タクシー』を創造し、タクシーと街の新たな関係を構築する」というビジョンのもと、様々な自治体や企業と協力し地域交通が抱える課題解決に取り組んでいます。

ビジョンの実現に向けて、現在の課題と思い描いている未来について、北島に聞きました。

<プロフィール>
▼北島 昇(きたじま・のぼる)
電脳交通COO。学生時代に起業し9年ほどの経営経験を経て、2007年にガリバーインターナショナル(現:IDOM)に入社。経営企画やマーケティング、広報、新規事業開発などに従事し、2016年に執行役員に就任。2019年3月に電脳交通に参画し、COOとして営業、人事、新規事業や広報など部門全体を管掌する。東京と徳島の二拠点生活。


変革・変容の推進に向けた意見調整のあり方

ーー北島さんの電脳交通での役割を教えてください。

様々な部門を管轄していますが、私の大事な役割を一言でいえば、社内・社外を問わず「バランスを取る」ことですね。それは実現可能性の集積とも言えます。

組織づくりについていえば、私が入社した当時の電脳交通は組織体制が開発途中でした。地域を支えていく企業になるためには組織を整える必要があり、そのために社内の状況を知ることから始めました。そのとき行ったのが”社員全員と1on1をする”ことでした。

当時はまだ社員は20〜30名程度。見渡せばすぐに把握できる規模でありながらも、社長から見る会社の見え方、管理部からの見え方、現場からの見え方と、どの見え方も違っています。しかし、どの見え方もその人の目から見たら正解なんですよ。だからこそ、全方位を知るには誰が何を考えているかを知る必要がありました。

綺麗事かもしれないけど、私は「話せばわかる」と思っています。コミュニケーションを諦めることで分断が起きてしまいます。どんな相手とも対話へのオーナーシップをもって相対するべきだと私は考えます。

そもそも、何かを変えようとするのに「わかりあえる」と思って取り組んでいないこと自体、コトにコミットしてないのと同じ。例えば、制度を変えて社内に周知する際に「はい、変えました」と言うだけでは無意味で、相手が受け取りやすいように背景や文脈を伝える必要があります。

エッジの効いた言葉を振りかざして「変えよう!」ということは誰だってできます。でも本当に変えていくには、関わる人一人ひとりを見てより良いバランスを取って行動していくことが重要なんです。

社内会議で話をする北島

ーー2020年に「地域交通アライアンス」が発足し、自治体や企業との連携が増えています。北島さんがおっしゃる「バランス」の考えは、社内のみならず社外との関係構築の上でも重要になりますよね。

変革・変容って本質的にはバランスを取ることなんですよ。DXが声高に叫ばれる昨今、タクシー業界も例外ではありません。一方、現状でどうにかやりくりしてしまい、仕組みが硬直化している点もあります。

そうしたなかで、この仕組みをアップデートしてどんな価値が生まれるのか?といった視点はもちろん、「運用効率を上げると言っているけど、そもそも人手が足りてないよね?」と、ただ新たな仕組みを導入するだけでは済まない別の問題が生じていることもあります。それにはドライバーや経営者、お客様が持つそれぞれの意見を理解する必要があります。

取り組むべき課題に対し、自社でどれだけリソースを割くのか、それとも自治体や他企業と組むのかなど、常に落とし所を探っていく。

バランスを取ることに対して既得権益が絡んだ利害調整や安易な落とし所を探るというネガティブな印象もありますが、本当はもっとチャレンジングでイノベーティブなことだと私は考えています。

自社サービスを土台に解決する地域交通の課題

ーー電脳交通では常に地域交通の課題解決を見ていると感じます。

創業者の近藤と坂東が創業当時から考えていることとして、「こういうプロダクトがあるべきだ」ではなく、最初から「課題解決」だけを追っていたというのが大きいでしょうね。

近藤がタクシー会社を経営する中で見えてきた交通における供給側の課題、つまりタクシー業界全体が抱える高齢化や人手不足、マーケットの縮小などの危機的な状況をどう解決するかから始まり、ひいてはそれは地域交通における課題そのものともつながっていることなんですよ。

一貫して取り組んでいることは「公共交通空白地域や観光地における地域交通の課題解決支援」「交通以外の生活・観光サービスとの連携」「配車手配の効率化、売り上げ向上やDX推進などタクシー事業者への支援」ですが、近年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて人手不足が一気に進行し、それも事業のスコープに加えました。

全国平均でタクシードライバーの数は約20%減り、電脳交通の本社がある徳島県では約40%減ったといわれています。そのため、観光地のみならず地域住民の生活の足として使われるタクシーまでもが捕まらないなど、地域経済にも影響を及ぼしています。需要と供給のバランスが大幅に崩れているんです。

創業者・近藤とともにフォーラムに登壇した際の様子

当たり前ですが「地域交通の課題を解決しましょう」では課題が大きすぎて、適切な仮説を立てられません。たとえば、大企業の新規事業は既存事業からの「染み出し型」というものがあり、隣接する領域で問題点を発見し、そこから課題を設定し既存の資産や組織能力をベースにしながら解決につなげることがあります。そのほうが仮説を立てやすいんですよね。

電脳交通も同様の手法を取っているといえます。事業者の課題解決のためのタクシー配車システムと配車委託システムがベースにあり、そこで認識した問題に対し、持っているリソースを生かしながら新たな課題を設定し解決に取り組んでいくからです。

ーーワンプロダクトではない点も電脳交通の特徴といえそうでしょうか?

それもありますね。地域ごとにタクシー事情が異なれば課題もそれぞれあり、どういう取り組み方が最適解かは一様ではありません。さらに解決方法もプロダクトであるとは限らず、そうではない形、例えばそもそもの運行ルールの変更や時にはお客様同士の協業・連携も提案することなど日々模索しています。こうした動き方ができるのはタクシー会社から生まれ、お客様の生の声、現場の声を大事にしている電脳交通ならではといえるでしょう。

業界自体が厳しい状況であることに変わりはないですが、ポジティブな点を挙げると、近年は地域の課題解決により一層注力しようとする企業が増え、私たちにとっては協業の選択肢が大きく広がっていると感じます。これまでの効率を重視する議論では置いてきぼりにされがちであった、地方への眼差しの変化ともいえるかもしれません。

タクシーが持つ公共交通機関としての未来

ーー最後に、電脳交通で北島さんが実現したいと考えている社会について聞かせてください。

タクシー業界は、自分たちが「公共交通機関としての役割を担っている」という意識がバスや電車と比べたら高いとはいえません。しかし、現実は、地域経済しかり、地域住民にとっての重要な交通手段であるということがより明確に浮き彫りになっています。だからこそ、今後は、タクシーを地域の交通インフラへと昇華させようという意志を持った上で業界全体の加速的な変容を推進していくことが重要だと考えています。

ありがたいことに業界内で求められる電脳交通の役割は大きくなっています。成長が重要なのは前提としてありますが、わたしたちがタクシーを様々な形で支える引き出しを揃えたBtoBプラットフォームを展開し、一種の公共的、インフラ的な役割を担っていく存在だと捉えています。

そうした企業は、極端な利益率の追求ではないところに価値を生み出す必要があるとも考えています。それは地域全体に対しての影響力の面積、ひいては利益の面積を広げること、といえるのかもしれません。

タクシーを公共交通化するために変革と変容をどう促していくのか。働く方々の環境やメンタリティ、組織のあり方も変えていくことになるでしょう。自治体と関わりながら実現していくにしても業界内で影響力を上げる必要があり、実行力も今以上に身につけないといけません。

それにはビジョンを掲げるだけではなく、クライアントと現状を改善するための推進力を持ち、粘り強く成果を追う姿勢が求められます。

公共交通としてのタクシーによる地域経済の促進として、例えば2019年に山口県でNTTドコモ様や地元のタクシー会社様と協力して行った実証実験では、無料タクシーが住民の移動を促し、地域の消費も押し上げる効果を示しました。こうしたスキームをご提案し、タクシー会社や地元自治体、地域住民など様々なステイクホルダーにとってより良い仕組みや仕掛けをご提案することを今後も推進していきたいと考えています。

人が動くことは経済の起点であり、豊かな人生を実現するための前提でもあります。タクシーもその役割を担う存在であり、タクシーと街の新たな関係を構築するには多くの人との関わりが生まれます。新たな雇用を生み出すこともあります。交通インフラに従事する人、サービスを利用する人など、業界に携わる人がより豊かで良い暮らしをできたらうれしいですね。

そうしたビジョンと志を持ち、社員全員が強い責任感と実行力を持って活躍できる環境を構築すること、多様な社外との関係構築を円滑に進め、リーダーシップを持ちながら業界を変えていく立場になれたらと思います。

------

最後までお読みいただきありがとうございました。

電脳交通は、事業拡大と今後の徳島における正社員・アルバイト採用強化のため、本社オフィスを徳島駅前・アミコ東館6階へと移転しました。電脳交通でのお仕事に興味を持った方は、ぜひサイト採用サイトもご覧ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?