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介護とジェンダー

ジェンダー勉強会をオンラインでやっていますが、次回は5回目、テーマは「介護とジェンダー」です。私自身が義理の両親の介護経験があり、また同年代の方で今まさに介護とジェンダーの問題の真っ只中にいる方が増えてきましたので、このテーマにいたしました。

勉強会の準備をする中で、参加者に教えていただいた本を図書館で借りたのですが、あまりに凄みのある本で、思わず一気読みしてしまいました。
大変な本ですこれは‥

もう付箋だらけです!

「介護とジェンダー」春日スキヨさん著。1997年の本ですが、大変重要な問題が書かれています。男性が看る、女性が看る、同性同士か否か、親子間か、嫁か娘か問題、規範性や情緒ワーク、セクシュアリティ、家父長制との深いつながり、男性のメンツ、家族愛、母娘の関係、介護職と看護職の立場の違いなど、大変興味深くウオ〜〜と叫んでしまいそうになりました。

私はこれを勉強会のスライドに使わせてもらえないか?と思ったのですが、あまりにも膨大、かつデジタルデータではないため、とてもイベントに間に合いそうもありません。はてどうしよう?と思い、これを読み上げてデジタルテキストにすればいいと思いつきました。そこから一部引用し、スライド資料を作るのはどうだろう?それで早速音読してみました。

この本はすでに販売されていないようで、「読んでみたい」と言う声を仲間内でもいくつか頂きましたが、図書館に運よく所蔵されていれば読めるといった状態です。つまり簡単には誰でも読むことができません。私は思いつきました。いっそ音読して音声配信してはどうだろう?

でも著作権もあり、勝手にすることはできませんので、出版元を検索すると、広島の女性3人が立ち上げた「家族社」という出版社から出された本でした。奥付に記載されていた連絡先に電話をかけてみると「現在使われておりません」の応答が。

やはりそうか。何しろ30年も前の本です。私は出版社「家族社」著者「春日キスヨ」さん、発行者「中村隆子」さんを検索しました。しかしほとんど情報がありません。検索の中でこの本が山川菊栄賞を受賞し、上野千鶴子さんが「魂の届く研究書」と評したと知りました。山川菊栄さんとはどういう人なのだろう?また調べが続きます。

この本の問いは「なぜ私が看取るのか」ということです。

長くなりますが私の話を少し。
長男の嫁である私は義理の両親の介護筆頭者となりました。もう12〜3年以上前のことです。ケアマネージャーさんとの打ち合わせ、介護計画を立てる場面、車でお義父さんを送迎する時、オムツの片付け時、お料理を作って届ける時、もっともっと細かい日常のあれこれさまざまな場面で、時折頭の中に湧き出てくる「なぜ私が」という問いに蓋をしては閉じていました。この気持ちは親しい女ともだち以外誰にも伝えることができませんでした。

またこの時、私は30代半ば〜40代前半、同年代の友人はまだ介護経験がある人が少なく、例えば愚痴を言っても「大変だね〜」といった反応でした。唯一、親身になってくれた友人は、若い頃に病気の実母を介護し、看取った経験のある人でした。

今こうして書いていても後ろめたいような感覚になります。「なぜ私が」その言葉を口に出せば私は「非道な人間」となり、途端にひどい嫁扱いを受ける気がしました。
私は「夫への愛の代替」として夫の親を介護しました。そこには「近所に住んでいる長男の嫁なのだからそうすることが当然」という当時としてはごくごく当たり前な状況がありました。

私が一回り年上の夫と結婚する時、義理の母は言いました「介護が必要になったらすぐに施設に入りますからね、心配しないでね」と。それは私たちの年齢差に配慮しての言葉だったのだと思います。結婚を決めた私は当時22歳。夫は35歳。そのようなことを言われてももちろんピンと来ていませんでした。

義理の両親には本当に可愛がってもらいました。とても良い人たちで大好きです。だから少しでも「なぜ私が」と思うことが罪深く感じました。心を無にして動かなければならない場面もありました。「ごめんね」「ありがとう」義両親はいつもそう言ってくれました。私の怒りはどこへ向いていたのか?遠方に住む夫の兄弟たちか?それとも長時間労働する夫か?よくわかりません。ただいつも頭に「なぜ私が」が浮かんで来てはそれに蓋をするのでした。

私はいつも笑顔と元気な口調を心がけていました。死期が予感され、辛い時期に入ってくると余計にそうしました。辛い時こそ明るく元気に。それは自分を鼓舞し、少しでも周りを明るくするためでした。

パート先で言われたことがあります。
「いっつも明るいよねー!悩みとかないでしょ!」
私は「ありますよー!いっそもう死のうかな?と思いますよ」
と思わず口に出てしまい、自分でもびっくりしてしまいました。

私はこの「介護とジェンダー」という本を読んで、もうすっかり記憶の彼方になっていた当時を思い出し、あの時の「なぜ私が」の問いの答えが見えたような気がしたのです。

話を戻します。私の検索は続きます。出版社「家族社」著者「春日キスヨ」さん、発行者「中村隆子」さんを探す中で、私はポリタスTVというYoutube番組に出会いました。

その撮影場所は加納実紀代資料室「サゴリ」。中村隆子さんの基金で運営されているといい、「ひろしま女性学研究所」高雄きくえさんが主宰されていました。
その画面上に、あの「介護とジェンダー」の表紙が映し出されているのが見えました。

高雄きくえさんに問い合わせてみよう!
私はすぐさま「サゴリ」のメールフォームで、これまでの経緯と、本を音読し、音声配信して良いでしょうか?ということをお尋ねしました。なんという図々しさ。我ながら呆れてしまいますが、どうしても動かずにはおれなかったのです。
ここまでほんの2〜3日の間の出来事です。

翌日、高雄きくえさんから、ご快諾のメールを頂戴しました。
信じられない!嬉しい!飛び上がりたいような気持ちです。

私が本を読んだ衝撃を、自分で読んで伝えるなんて。
とにかくやってみるのみです。

高雄きくえさん、本当にありがとうございます!
音声配信の準備を始めよう!

https://sagori-kanomikiyo-library

【追記】
私はこの顛末をnoteに書き残しておこうと思いましたので、再度、高雄きくえさんにメールでお尋ねしたところ、快くご了承いただきました。
本当にありがとうございます。




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