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あなたらしさの見つけ方

「らしさ」について考えるとき、ときどき思い出す景色があります。幼いころ、新幹線の窓から見た東京の夜景です。

おびただしい数のビルがあり、たくさんの窓にはぽつぽつと光が灯っていました。その一つひとつの下に、誰かが生きている。それぞれの生活があり、人生があり、笑ったり泣いたり、怒ったり喜んだりしている。そして私は一生かけても、そのすべての光と交わることができない……そう思ったらなんだかすごくさみしくなって、でも、見える景色はとてもきれいで、わけもわからず泣きたくなったことを覚えています。

大人になってもときどき、あのときの感情を思い出します。当時はうまく言語化できませんでしたが、今振り返えるとあの感情は、「この世界は、こんなにもたくさんの人や思いであふれているんだ」という衝撃だったのだと思います。そして、そのすべてと交わることはできないからこそ、出会いというのは限りなく奇跡に近いのだと。

私たちは日々、「らしさ」について考えています。昨年末のnoteにはこう記しました。

思うに「らしさ」とは、これまでやってきたこと、今やっていること、これからやっていきたいこと、すべてではないでしょうか。軌跡も今も展望も、全部あなたにしかない価値。だからこそ、唯一無二で素敵なんです。かたちにして、世の中に伝えたいと思うんです。

たくさんの人や思いであふれた世界だからこそ、自分だけの「らしさ」をかたちにして伝えることには、意味があるのではないでしょうか。すべての光に触れることはできないからこそ、求めていた光と出会えることは、人生でかけがえのない瞬間なのではないでしょうか。

2024年初のnoteでは、私たちが大切にしている「らしさ」の見つけ方について、「過去」「未来」「今」の視点からまとめてみます。




過去を振り返る:これまでやってきたことから感じる「らしさ」

過去の経験は、人や組織を構成する大切な一部です。企業サイトやポートフォリオサイトでは、実績掲載が信頼につながる場合があります。これまでどんなことをどんなふうにやってきたかという積み重ねは、「信頼を裏付ける証拠」となってくれます。

就職活動においても、「これまでどんな経験をしてきましたか?」は鉄板の質問です。実際に自分たちがクライアントに対してその質問をするとき、知りたいのは「何をしたか」より「どんなふうにしたか」だなあ、と思いました。

たとえば、同じ「起業した」という経験でも、その目的や展望、どんな人と関わり、どんなことを思い、何を感じたのかは、人によって異なります。同じ映画を見ても人によって抱く感想が違うように、同じ国を旅しても残る思い出が違うように、「What」の部分が同じでも、「How」の部分はそれぞれ違います。「あなたがどんなことを感じたか」にこそ、「らしさ」が現れるのではないでしょうか。

しかし、過去の経験すべてが、輝かしいものだとは限りません。うまくいかなかったことやくるしかったことだって、それぞれが抱いているはずです。でも、たとえそれがくるしい過去であったとしても、出来事に対してどう感じてどう行動してきたかという過程には、「らしさ」が濃く表れます。

たとえば、新サービスを立ち上げるときにぶつかった困難や、従業員同士のあいだで起きたドラマ、今に至るまでに抱えてきた葛藤や、覚悟を決めたときのこと…。ぜひ、あなたにしか話せない話を聞かせてほしいなと思います。「恥ずかしい話なんだけど」「自分の話で申し訳ないんだけど」という枕詞から始まる話、大歓迎です。

私たちは、直接的に「あなたらしさとはなんですか」と聞くことはしません。「らしさ」とはそんな簡単に一言で「これ!」と言えるものではなく、その人のことばや行動などから、断片的ににじむものだからです。一つひとつのエピソードを聞き、話の抽象度を少しずつ上げていくと、根底にある「らしさ」が見えてきます。具体的な出来事を「概念化」していくイメージです。

自分を取り繕おうとしたり、感情に蓋をしようとすると、「らしさ」は途端に見えなくなってしまうものです。だから、できるだけありのままにお話いただけたらうれしいです。とはいえ、すべてを話さなければならないわけではありません。話したいと思ったときに、話したいことだけ話してほしい。私たちは、「この人たちになら話してもいいかな」と感じてもらえるような存在でいたいと思っています。

話すことで、過去の経験に新たな意味を見出せたり、自覚していなかった自分の「らしさ」に気づくことがあります。

過去から「らしさ」を見つける問い
・過去にどんな出来事があったか?
・そのとき自分はどう感じたか?
・感じたことに対して、どのように行動したか?
・行動したことで、状況はどう変わったか?
・そのときの経験は今どう活きているか?


未来地図を一緒に広げる:理想から見える「らしさ」

クライアントさんとは、未来の話もします。これからどうなっていきたいかを丁寧に伺い、どうすればその未来に近づけるかを一緒に考えます。お客様にとっての理想の未来は、私たちにとっても理想の未来です。

未来を見るまなざしには、その人の「らしさ」が現れます。どんな理想を抱いていて、どんな未来を思い描いているか。私たちは、全力でその思いを受け止めたいと思っています。
「まだ叶ってもいないのに…」「ただの理想論だけど…」と思ったとしても、ぜひ話していただきたいです。「こうなっていきたい」という姿勢を思い描くことで、実際に近づいていくかもしれません。まだ実現していない未来だって、あなたにしかない「らしさ」をかたちづくる一部です。

とくにスタートアップや新事業を始める方には、まだ実績がない場合もあります。しかし、今誰もが知っている大手企業にだってクリエイターにだって、実績ゼロの無名時代があったはず。未来へ向けるまなざしこそが、当時の彼らの「らしさ」だったのではないでしょうか。「らしさ」とは、今のありのままの姿だけではなく、こう在りたい姿だって指すのだと思います。

未来へ向かう姿勢こそ、理想を叶える道標となります。ロゴや企業理念、キャッチコピーをつくるときには、その役割をしっかり持たせることを考えます。ただの飾りではない、未来へ続く道を照らすもの。そんなデザインやことばを、一緒に考えていけたらうれしいです。

未来から「らしさ」を見つける方法
・理想の姿はどんなものか?
・数年後、何をしていたいか?
・実現可能性は置いておいて、純粋に叶えたい夢は何か?
・どんな未来を生きていたいか?


「今」のあなたと向かい合う:今の姿、ことば、思い

ここまで、「過去も未来もあなたらしさの一部です」と書いてきまし​​た。とはいえ、実際に私たちが生きられるのは、「今」だけです。私たちが物理的に向き合えるのも、「今」のあなただけ。人は変わっていくものなので、昔考えていた内容も思い描いている未来も、変わっていくことがあります。

だからといって、過去と未来は信用できない…というわけではありません。私は、過去も未来も今も、ゆるやかにつながっていると思います。今次第で未来も、過去も変えることができるからです。
たとえば苦しかった過去も、今次第で「あれも伏線だったね」と思えたり、お酒の肴になるような笑い話にできたりします。いまはまだ理想に過ぎない未来も、今次第ではいつか現実になるかもしれません。

だからこそ、ありのままのあなたの「今」を聞かせてください。あなたが「今」、どんなことを考えていて、どんな行動をしているのか。どんな不安を抱えていて、どんな希望を抱いているのか。「らしさ」が現れるのはことばかもしれないし、ことば以外のものかもしれません。今現れているらしさの破片を取りこぼさないように、大切に相手と向き合いたいと思っています。

現在から「らしさ」を見つける方法
・今、自分がいいなと思うことは何か?
・今、自分が力を入れていることは何か?
・今、一番大切にしていることは何か?
・今、一番不安なことは何か?
・今、「あなたらしさ」を聞かれて、どんなことを感じたか?


「らしさ」を見つける過程は、あなただけの光を探すこと

書いていてつくづく、「らしさ」とは、対話から見つかるものだと感じます。
今はAIに問いかければ、数秒もせず答えが返ってきます。その利便性に助けられてもいますが、同時に、人同士の対話からしか生まれない価値を実感してもいます。

対話とは、違う人同士が違う思いを交換しあって、重なる部分や違う部分を受け入れていくことだと思います。相手のことばを受けて、自分を見つめ直したり、これまで気づかなかったことに気づいたり、自分にはなかった視点や思考を知って、新たな考えが生まれたり。ことばを探す間、逡巡、仕草からにじむ思いもあります。そんなふうに対話をしていると、人と人は長い歴史のなかで、相手をわかりあおうとしてきたのだと感じます。でなければ、文学も音楽も美術も演劇も、こんなに発展していないはずです。

人と人は、完全にわかりあうことができません。これまでの経験も、感性も目指したい未来も、それぞれ異なります。絶対的な答えなどどこにもありません。正しい間違いの尺度も、幸福をはかるものさしも、人によって違います。
でもだからこそ、わかり合おうとすることができます。すべてわからないからこそ、ひとつでもわかりあえたとき、大きな喜びが生まれます。何もかもわかりあえてしまったら、この喜びは存在しません。みんな他人だからこそ「らしさ」が生まれ、「らしさ」が届く瞬間が生まれるのではないでしょうか。

そう考えると、「らしさ」は、誰かと出会うことでかたちになるといえそうです。あなたとエルが出会ったことで、あなただけの「らしさ」がかたちになり、よりよい未来へつながっていったら、私たちはとてもうれしいです。

エルは今年も、「らしさ」を一緒に見つけて、つくって、育てていく、そんな存在でありたいと思います。みなさま、今年もよろしくお願いいたします!



デザインスタジオ・エルは「超えるをつくる」を合言葉に「らしさ」をデザインするWeb制作会社です。
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