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対価を払う

先程東高円寺のとんかつとんきに行ってきた。

私の密かな楽しみは外食。といっても、全く自炊をしない独身の私は必然的にほとんど全ての食事を外食で済ませている。

平日は朝を抜き、昼は会社でコンビニ弁当、夜は近場のラーメン屋か牛丼かオリジン弁当という最悪の食生活を送っている私にとって、休日夜に普段行かない店でご飯を食べるのが密かな楽しみなのである。

今日は特に行く宛てを決めず、散歩がてらにお店を決めることにし、歩いていたところを出くわした。

中に入ると「はい、いらっしゃいませ〜!!」とめちゃくちゃ元気かつ変なイントネーションの声に出迎えられた。中々年季が入ったおじいちゃんだった。席に着きメニューを見ると一番安い定食でロースカツ定食1600円。高い。

値段に若干後悔しながらロースカツ定食を頼む。「はい、ロースカツ入りま〜す!」とめちゃくちゃ元気かつ変なイントネーションでおじいちゃんが叫ぶ。奥にいるおばあちゃんが作るのかな、と思った矢先自分でかつを揚げ始める。自分でやるんかい!

ほどなく運んでこられたロースカツ定食は最近の自分史上最もインスタ映えする出来映えで(写真撮っておけばよかった)「ま、まぁ1600円もするんだからこれくらいじゃないと」と内心思いながらかつを口に入れる。柔らかい。そして、衣がきめ細かい。キャベツの千切りも鬼のように細く、ソースがよく絡む(もちろん老舗のとんかつ屋さんにドレッシングなど置いていない)。

食べている最中は隙あらば「ご飯おかわりは!?」「キャベツどう!?」と頼んでもいないのに聞いてくる。夜遅いから軽めに、と思っていたのに、気づけばご飯もキャベツもおかわりした。付け合わせのお新香と豚汁は、普段の食生活が崩壊している自分には優しすぎた。

これが1600円か、まぁまた来よう、と思いながら会計を済ませると、「お疲れ様でした〜!」と的外れな声をかけられ、店を出た。



駅前のかつやも十分に美味い。かつやならとんかつ定食が700円くらいで食べれる。とんきがかつやと比べて圧倒的に味が美味しいかというとそうでもない気もする。でもとんきに1600円払っても悪い気はしなかった。これはチェーンではできない体験をしたからだと思う。

とんきのおじいちゃんはおかわりをすすめてくれた。お茶は空になっていないか聞いてくれた。食べる前と後でおしぼりを変えてくれた。店の古き良き雰囲気もよかった。あとおじいちゃんに愛嬌があった。

かつやは他の外食チェーンとも競合しながら、圧倒的低価格で美味しいご飯を提供している。私はチェーン店も好きだ。激しいコストとクオリティの競争を勝ち抜いているからだ。コストパフォーマンスの観点からすると文句のつけようがない。

でも、とんきも最低価格1600円なのにお客さんは大勢いた。とんきのおじいちゃんとおばあちゃんはとんかつ価格競争の外にいるのだ。そして1600円払ってもいいというお客さんをきちんと抱えている。こういう言い方もどうかと思うが、絶対に儲かっている。

よく日本の飲食店はクオリティの割に安すぎるという話を聞く。もちろん価格競争の結果だと思うけど、「正当な対価」であれば払っても悪い気はしないものだ。現に私はとんきにはまた行ってもいいかなと思った。

良いものにそれ相応のお金を払うのは悪いことではないな。そんな事を思いながら、ディスカウントストアに立ち寄り、在庫処分品の半額のお菓子を買って帰った。


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