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過去でもない未来でもない、今の自分を生きる。ーカルリンポチェの言葉

キャブジェ・カルリンポチェは、チベットの高僧カル・リンポチェの生まれ変わり(2世)とされている、若く美しいラマ(僧侶)です。チベットの伝統にのっとって、物質的に何の不自由もなく育ったカルリンポチェですが、一方で生まれ変わりと認められたその日から、アイデンティティのない精神的に不自由な環境で育った人です。

カルリンポチェはちょうど10年前に(三年のリトリートを終えた数年後だと思います。)自分がいかに何の自由も権利もなく扱われてきたのかを暴露し、(しかもYou Tubeで!)当時大きなスキャンダルとなりました。その中には身の回りの世話役のラマ(僧侶)から性的ハラスメントを受けていたという衝撃的な告白も含まれており、当時報じられていた他のラマのスキャンダルなどと合わせてチベット仏教組織を震撼させたのです。

そういった紆余曲折を経て、彼は「リンポチェ=偉大な先生」と呼ばれ、人形のように扱われることに嫌気が差して、チベット的な伝統から一度は飛び出します。ですが、「リンポチェ」という過去が影のようにどこまでもついてきたのです。そこで還俗しても変わらない彼の苦悩を見て、ダライラマ14世が心を痛めて彼に手を差し伸べます。そしてチベット仏教組織も精神的なサポートと理解を示し、彼は再びリンポチェとして帰ってくることとなります。帰ってきたカルリンポチェは、以前と違い自身の苦悩を隠さず、等身大でモダンな雰囲気を纏っているため、瞬く間に世界中から信頼と人気を得ました。

そんなカルリンポチェは苦悩を抱える人に寄り添うために、定期的に質疑応答形式のフェイスブックライブを配信しています。わたしはそれが好きで、よく聞いているのですが、その中で話ていたことを今日はご紹介したいと思います。

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