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大晦日に現れた私のスター



大学で音楽系の部活に入った。

最近開催された部内のライブの日、
先輩がback numberの「高嶺の花子さん」を弾き語りしていた。


音楽が好きで特にback numberが大好きな私。
素敵だなと思いながら耳を傾ける。


この曲を聞くたび、毎回あの日のことを思い出す。



2022年12月31日の大晦日の日。

テレビでは紅白歌合戦が盛り上がっている。

私はわくわくしていた。なぜなら今日は
大好きなback numberが初めて紅白歌合戦に出場する日だったからだ。
念願の紅白歌合戦。いつかいつかと願っていて、初出場が決まったこの年は私の大学受験の年だった。
しかも12月31日。もうすぐ共通テストで、多くの受験生は紅白なんて見てないかもしれない。

私だって勉強しなければいけない、でもせめて、back numberだけは見させて。

待ちに待ったback number登場の瞬間。
3人の緊張と気合いが表情から伝わってくる。

歌う曲は、その年の朝ドラ主題歌となった「アイラブユー」。心がじんわり温かくなるような優しい曲だ。

やっぱり上手だな、いいなぁ、うっとりしていたら1番で終わってしまって、もう終わってしまったのかと思ったその時。


急に違うイントロが流れ始めた。
back numberがサプライズで「高嶺の花子さん」を歌い出したのだ。

(いやいや、2曲目やるなんて聞いてない、待って待って)

驚きが隠せない。
そしてそれと同時に、私は何故か涙が溢れ出した。

依与吏さんは元気よく、とても上手に、目を見開いて私に歌いかけてくる。

「高嶺の花子さん」は、片思いしている男子の心情を歌った曲で、受験応援ソングじゃないし、今の私にぴったりな曲と言われたらそうじゃない。


でも何故か溢れた涙は止まらなくて、嬉しくて。

家族がいたから必死に堪えながら、それでも涙を流して、歌い終わったあとに急いで自分の部屋に閉じこもる。


堪えていた残りの涙が一気に流れる。
気づいたら号泣していた。

サプライズで2曲目を歌ってくれたことが嬉しかったからだけではないのだろう。

back numberから貰う生き生きとしたパワーに、受験勉強で弱っていた私は普通の人以上に感銘を受けたのかもしれない。

その頃は学校に行くのも、どんどん追い込まれていく受験勉強も何もかもが辛くて、自分が思っている以上に精神は不安定だったと思う。


泣きながら、「高嶺の花子さん」の曲と、3人の表情、依与吏さんの歌声が頭の中を何周もする。




「頑張って」

あの歌が、私にはこの言葉に変わって届いていた。

もう一度言うが、「高嶺の花子さん」は受験応援ソングじゃない、恋愛ソングだ。

でも今は歌詞じゃなくて、きっとback numberが作り出した歌のパワーに大きな勇気を貰ったのだ。




落ち着いてきた、そしてこう思った。

頑張ろう。

私は大好きなback numberに応援してもらっている、1人じゃない、back numberはいつでも私の傍にいるのだ。


涙を拭く、もう新しい涙は流れてこない。


強い味方を心の中にしまって


勉強しよう、私は参考書を開く。

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