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選ばれる自治体

2023年最初の投稿になります。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

新年から暗いニュースを目にしました。
人手不足で地方公務員がブラック化する未来 | 政策 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)
(上記の記事は「未来の年表」の著者である河合雅司さんが掲載したものです。未来の年表は、人口減少社会の日本で今後起きる可能性が高いことをリアルに分かりやすく記した本なので、一読しても良いかもです。)

記事を私なりに要約すると、人口減少によって、日本は地方公務員のなり手が少なくなる。自治体によっては出生数が0のところもあるのだから、公務員を選ぶ人も0になりかねず、20年後には地方公務員の人手不足が深刻な事態となる。
というものです

1 2040年の地方公務員ってどうなるのか

確かに、記事の中でも紹介されている総務省が公表した「自治体戦略2040構想研究会」でも、2013年から2040年で自治体の職員数と人口がどのように変化するか、比較する表が出ています。

自治体戦略2040構想より抜粋

人口減少の影響は、自治体の規模によってもまちまちです。政令指定都市は人口と同じ割合で職員数が減るのに対して、人口が少ない自治体は、人口よりも少ない割合でしか、職員を減らすことができません。

出生数が少なくなれば、職員のなり手も少なくなります。その土地の地方公務員を志望する人は、その土地で生まれ育ったか、大学等で居住したなど、縁のある人が、その土地に貢献したいと思う人がほとんどだからです。

ゆかりのない人が、その地方の公務員になりたいと思うことはほとんどないことから、自治体戦略2040構想のとおり、人口減少よりも少ない割合で職員数の減少を抑えることはかなり困難なのではないかと思います。

新たな職員の確保が出来なければ、今いる公務員の業務が増えます。単純に、受け持つエリアが増えることになります。農業振興を担当していた職員がAからBまででよかったものが、年配の職員の退職により、AからDまで2倍の業務を受け持つことになるといったことになりかねません(私の近隣の自治体でも似たような事例は起きています。)

負担が増えれば疲弊します。かといって給料が増えるわけでもありません。人口も少なくなっているので、税収も上がらないからです。疲れた職員が一人またひとりと退職していき、残された職員の負担がまた増えるという悪循環になりかねません。なかなか暗い未来です。

2 地方公務員に夢や希望はあるのか

一方で、公務員の仕事は代替性の高い職業と言われています。ある研究によれば、将来はAIやロボットによって行政関係の事務仕事の49%がとってかわられる可能性があるそうです。

今でも、山林の調査にドローンを活用したりと、多くの自治体でAIやロボットが活用され、職員の負担を軽減しています。そのため、超人手不足による暗い未来は訪れないのではないかという楽観的な予測もあります。

国の政策ともマッチします。デジタル田園都市国家構想です。

この政策は、地域の豊かさをそのままに、都市と同じ又は違った利便性と魅力を備えた、魅力溢れる新たな地域づくりを目指しています。

スタートアップ企業や農業をはじめとしたスマート化の支援を行うことによる仕事づくり
テレワークの推進や企業版のふるさと納税等を活用したサテライトオフィスの設置による人の流れづくり
GIGAスクール・遠隔教育やサテライトキャンパスの設置といった教育の充実
オンラインによる健康相談や母子健康手帳アプリの拡大などの子育て施策の拡張 など

こうした取組みによって、魅力的な地域を作り出そうとしています。地方に人を集めるための方向性としては納得できるものですし、公務員の人手不足の解消にもつながりそうです。

ただ、この政策がゲームチェンジャーとなるかは分かりません。デジタルを活用した取組みは、数年前からスタートしている自治体もある上に、人は住んでいる土地からなかなか離れようとはしないものです。

3 今選ばれている自治体

今、人口が増えている自治体は、今までやってきた施策が実を結んでいるところだと思います。

日経BPによる人口増減率ランキング2021で、東京都を除いた人口増減数のトップは、流山市(千葉県)となっています。

流山市は、子育て世帯には有名な自治体であり、25歳から40歳のいわゆる若者世代の人口流入が群を抜いています。評判が評判を呼び、市の人口は右肩上がりとなって、市税収入が増し(前年比10%アップ)、増えた収入を第三子の給食費の無料化など、住民のための施策に仕えるといった好循環ができています。

流山市の次点につけたのが、つくば市(茨城県)です。つくば市は2010年代から、住民税の関係データの移行といった作業を早くから自動化するなど、市のDX化を進めています。最近でも先端技術で地域課題を解決する「スーパーシティ型国家戦略特別区域」に指定されるなど、未来社会の実現の先陣を切ろうとしています。

そして、両自治体に共通しているのが、行こうと思えばすぐに都心に行ける距離です。流山市は、都心から25キロメートル圏に位置し、つくばエクスプレスによって、東京秋葉原と約25分で結ばれています。つくば市もつくばエクスプレスによって約50分で東京に出ることができます。

都心に出勤しようと思えばできる距離は魅力的です。テレワークが主体となっても、週1~2は出勤せよという会社もあるでしょう。学生時代の友人が何人か浮かびますが、数日間の通勤が多少長くとも、自然豊かな環境の中、子育てをするという選択肢は大いにあり得ます。

通勤に差支えがなく、子育て環境も良ければ、人は定住します。流山市は人口が右肩上がりに増え続けておよそ18年、人口は15万人から20万人へと急増しています。18年と言えば、子どもが生まれ、成人する時期です。子育ての期間をこの市で過ごし、市に愛着をもって、定住し続ける、そうした親の姿を見て、子もまた近くで家族を作るというサイクルもできてきます。

その証左のように流山市もつくば市も定住率、この市に今後も住み続けたいという割合は8割を超えています。新たな居住地として選ばれて、人は去っていかないのであれば、人口はどんどん増えていくでしょう。

選ばれている自治体には、理由があります。過去の努力があり、しっかりとそれが実を結んだことによるものです。交通の便が良かったという運もあるかもしれません。ただし、そこに胡坐をかかずにしっかりと生かし切ったことは素晴らしい行政関係者をはじめとした地元の方々に敬意を表すべきだと感じます。

政府は今、地方創生にさらに力を入れようとしています。ただ、劇薬ではなく、今すぐに地方に人が都心から集まることはないでしょう。むしろ、今は、程よい便利さを求めて、都心や郊外に回帰している動きすらあります。

しかし、座して待っていれば衰退することは決まっています。20年後にも選ばれる自治体となるためには、今から国策の波に乗って、行動を始めなければなりません。

このnoteは自身への戒めの意味合いが強いです。一人の行政マンとして、先に挙げた二つの先進自治体のように、選ばれる自治体になるために何をすべきか、しっかりと2023年は考えていきたいと思います。

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