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「君たちはどう生きるか」 あの作品と海外アワードレースで激戦展開!気になってしょうがなくなって20年ぶりにジブリ作品を映画館に観に行った者の感想

昨年末にこの映画を観てきました。

「君たちはどう生きるか」

昨年に非常に話題になった作品ですよね。スタジオジブリの巨匠とされる宮崎駿の最新作です。
事前のプロモーションは一切なし、あらすじすら公開しないという展開に踏み切ったこの作品。全国大展開でそんな作品、私は今まで聞いたことなく。

同じく昨年公開された

この「THE FIRST SLAM DUNK」も似たようなプロモ方法だったと思いますが、あちらは原作があるので「君たちは~」の方が全くの謎作品という印象でした。

私自身は最近はあんまりジブリ作品そのものを観ていなくて、この作品も夏の公開当時は完全スルー状態でした。
いろいろ理由はあるのですが、ジブリ作品自体は子供の頃にはお世話になったけど、「大人になって順当に離れていった」みたいな感覚で。
10代の後半から海外の作品をメインに映画を観るようになったのもあり、自然とピクサーやディズニーの作品の方が目にする機会が増えたような感じです。

なので、劇場に観に行った作品は「千と千尋の神隠し」以来だったんでなんと20年ぶりでした!!そんなに経ってたのか~。
それでも「千と千尋~」の時には「もう私、二十歳超えてたんだな~」と。勝手に10代くらいに観たような気でいました。
「千と千尋~」ってアカデミー賞をはじめ、海外でたくさん映画賞を受賞していた記憶があって宮崎駿やジブリ作品への海外からのリスペクトぶりを感じさせられた作品でした。

そんなジブリをスルー気味だった私が、なぜ2023年の年末に「君たちは~」を観に行ったかというと、


私の昨年のベスト映画作品「スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース」!この作品が「当然今期のアニメ映画賞レースも独占する」と思っていました。凄く力作ですし!クオリティもすべてが最高だし!!!
なので「アワード楽勝かな」とであんまり心配してなかったんですけど、この「君たち~」が海外で「THE BOY AND THE HERON」として12月に劇場公開されると

12月に北米のボックスオフィスで1位を獲得。前週は「ゴジラ‐1.0」が1位だったので日本の作品が2週連続で1位に。(これは理由を解説してくださっている記事が他にあるはずなのでここでは詳細は割愛します。)

そして海外の批評も軒並み高評価!そもそもジブリ作品が海外で低評価なこと自体があんまりないとは思うのですが、宮崎駿やジブリへのリスペクトは海外でもしっかり継続されているんですね。
というわけで、賞レースでも

この公開前後から「君たちは~」が受賞するケースが増えてきて、今年のアニメ賞がこの2作品の激戦状態に!本当に目が離せない展開となっています。個人的に「うっそ大ピンチ」感で(笑)。

というわけで、賞取り合戦で猛追を見せている「君たちは~」がどんな作品なのかとても気になり始めました。
「もう配信とかしてるのかな」と思ったら、そこらへんも日本ではジブリが特殊だったのを忘れてて。「まさかもうさすがに映画館でやってないよね?」と思って一応検索したら

全然映画館で上映されてた

1日1回で一番小さいシアターとはいえ、私の家の近所のシネコンですら上映してました。すげーほんとすげージブリパワー(笑)。
というわけで、観に行ってきました!

で、いろいろ私なりに感じた事がありましたので、感想をまとめてみたいと思います♪

※ここから先は思いっきりネタバレしていますので、結末を知りたくない方はご注意ください。

(映画観た後だと口ばしの中に目があるように見える事に気づいた)

ちょうど私が観に行く日の数日前にNHKで宮崎駿に密着したドキュメンタリーが放送されたらしく、内容の解説的なこともしているようなのですが、私はそちらは観ないで鑑賞しました。情報の後追いもしていません。あくまで作品を観たままの感想が大事かな〜と思い。
なので、公開当時のようにあんまり情報を持たないまま鑑賞したので、そのまま好き勝手に語りますね。

まず個人的に驚いたかつ新鮮だったのが、

少年が主人公だったことです。

こう並べられるととても分かりやすいですが、私の中でジブリといえば少女が主人公。個人的なところでいうと、いくら公開に数年空いていているとはいえ「飽きた」という面はぶっちゃけ否めず。

それが今回の「君たちは~」は少年マヒトが主人公。しかもなんていうか、あんまり主人公特有の可愛げというか特別個性があるわけでもなく、観客に対する媚があるわけでもない、主人公としてとてもそっけないキャラクターで。結構最初から最後までわりとそうだったので、そこは新鮮な感じがしました。

私がこの作品で一番いいキャラだと思ったのは「アオサギ」で。

動物の姿の時はシュっとした姿形ながら、だんだん擬人化されていくと何とも言えないおじさんみたいなキャラで、そのギャップも面白かったし、主人公を追い詰めていきながらだんだんと翻弄されていき、距離を縮めていくところが好みで。
ひょうひょうとしているところもあって、この作品ってシリアスとまでは言いませんが、いったん引っかかってしまうと結構難解になってしまう作品だと思うのですが、そういう作品ってちょっとコミカルなキャラがいるととても引き立つというか物語に入りやすい大事な存在なので、「このアオサギって実はこの映画で一番重要なキャラかな」と。日本版のポスターなのも納得だし、海外版ではタイトルが「少年とアオサギ」なのでそこが分かりやすい感じでした。

このアオサギ、「日本では菅田将暉が声を担当している」って私は鑑賞中は気付かなかったのですが、演じがいがあったんじゃないでしょうか。彼は声だけでも十分に演技上手いですね。

で、英語版はロバート・パティンソンが声を務めていて海外で絶賛されていますね。他のキャストもめっちゃ豪華なのでどっちかって言ったら英語版の方が観たいよねー!!

主人公のマヒトの継母になる夏子。マヒトの母の実の妹で、母の死後に1年くらいで父と再婚するわけです。まあお互い、いい感情が持てるわけないですよね~。
夏子側の葛藤は、異世界の中では「出産の儀式」のような場面で現れるのですが、私にはあのシーンってもう怖いったらなく。ちょっとホラーみたいな感じもあってぞっとしました。私自身は出産を体験して「出産に神秘もなにもない」という思いが強まったタイプの人間なのですが、一応安産祈願にも行ったりしたし、現代でもなんか土着的な面がありますよね。少年や少女からしたら、出産って怖いところもあると思うし、そういう感覚も表現しているのかもしれないですね。

私的に「やべー」と思ったのは父の設定なんですけど。軍事時代に兵器の製造で身を立てている男性ということで。で、そんな感じで再婚なんかしてしまうわけです。「うわー」って感じの父親ですね。分かりやすい嫌な性格とかではないんですけど、デリカシーの無さなどはアニメ映画のキャラとしてもこんなに「げー」って思ったキャラでした。

宮崎駿といえば、やっぱりこの世の者以外のキャラクターが出てくる印象なのですが、今回も「ワラワラ」というキャラクターが出てきました。この映画、動物は結構怖く(決してかわいくなく)描かれているのですが、このワラワラはかわいらしさ天下一品でした。こういったところはジブリ映画の特徴かな~と。

大叔父の登場はなんとなく分かるとして、私はこのキャラには若干イラっとしましたね(笑)。特にマヒトに「血を受け継ぐものしか引き継げない」とか言ってるあたりがもうね、血縁至上主義みたいなイヤーな感じ~(笑)。ほんと「血」ってなんなんだろう、と思いますね。だからマヒトがあっさりと断るのがなんか痛快で、私はそこが好きでした。

ヒミやキリコは私はそこまで思い入れられるような描き方どはなかったのですが、マヒトの母(ですよね?)の子供時代であるヒミが現実世界への違う扉を選び、マヒトに「そちらに言ったら現実世界で死んでしまう。死んではだめだ!」というマヒトに、「またマヒトを生んで出会えるなんてなんて素敵なんだ。楽しみだ」みたいなことをいうシーンは

私の大好きなこの映画「メッセージ」を思い出して泣きました。この展開は私の泣きツボなのですよね~(笑)。「メッセージ」は嗚咽するくらい号泣したから(笑)。

私が「君たちは〜」で結構一番ぐらいかもしれないくらい感心したポイントが

ババアのバリエーション

自分でも「どこに感心してんだ!」って思いますが(笑)。こんなに「あらゆるババアのリアリティあるバリエーションが出てくるアニメ」ってそう観たことないので。宮崎駿の映画って、主人公キャラの顔はそこまでバリエーションがないと思うのですが、老人キャラのバリエーション、特にこんなにババアのバリエーションが豊富なのは、これから老いに向かっていく身としてはなんか頼もしく感じました(笑)。

というわけで、キャラの話ばかりしてしまったのですが、話としては「結構破綻しているかな?」と。基本は異世界に行って帰ってくる話だし、その異世界も分かるような分からないような謎な世界で、とりあえず鳥がいっぱいいて怖いみたいな(笑)。
異世界が以前の宮崎駿の作品よりも結構観念的な設定や話で、今回は個人的には異世界が全く魅力的でないというか。話も辻褄を合わせるつもりも最初からなさそうな。
だから、普段からのジブリ作品の完成度の高いところが好きだったり、思い入れがある人には「よく分からない」、もっとダイレクトに言うと「つまんない作品かも」とも思うのですが、私は逆にそこがいい感じでした。


たぶん今までは「子供のため、観てくれる人のため」が第一で自分の作家としてのエゴは抑えてきたかもしれない宮崎駿の、もしかしたら初めての作りたいように作った、「内面をより自由に語った作品なのかな」と。

私はこういった、よくわかんなくても自分が作りたいと思った作品も「もっと早くから作ってもよかったんじゃないかな」と思いました。

あと、今回も音楽はおなじみ久石譲が手掛けていますが、ゴールデングローブ賞で作曲賞候補になるなど、アワードレースで検討しています。

今まで印象的なメロディを主線に映画を彩ってきた印象がありますが、今作では「映画に合わせてちょっと変えて来たのかな」って感じがしました。メロディがそこまで印象に残らない、今の映画音楽に近い感覚というか。

やっぱり海外でも日本のように宮崎駿と同じくらいリスペクトされてて、アニメ界のトップアワードであるアニー賞では功労賞も受賞。確かにジブリ作品を支えてきた大きな人物ですよね。

私は知らなかったんですけど、現在オーケストラを連れてワールドツアーをしてて、なんと夏にはニューヨークのマディソンスクエアガーデンでコンサートするんですね!!
普通にポップやロックのアーティストがライブする規模感で考えると、ちょっと信じられないくらいデカいキャパの会場なんで、どうやってやるんだろ?

宮崎駿の作品としてこの作品は私にはベストではないですが、今回のこの海外アワードレースの勝ち方を見ていて、もしこの作品が「宮崎駿の最後の作品」とか(以前に本人が引退宣言してたしね)、「評価するラストチャンス」みたいにとらえられていたら、少なくともこの作品から私の感触では

いや、今後もめっちゃやる気マンマンでは?

と思いました。もちろん年齢問題はありますけど、「創作意欲はむしろ高いのでは?」と。どんな作品になるかは分からないですが。

とはいえ、やっぱり私はスパイダーバースが好きすぎるので心情的には「スパイダーバースがんばれ!」ですけど(笑)、「どちらが受賞しても今後面白い」と思う展開に。アワードレースはアニメ賞を追っかけまくりたいと思います!
(人生でこんな日が来るとはほんと思ってなかったよ)

おまけ

海外では「少年とアオサギ」で統一されてるみたいですね。私もこっちのタイトルが好きです。っていうか「君たちはどう生きるか
」ってタイトルで「たぶん観ないな」って思ってた(笑)

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