見出し画像

シネマ飛龍革命『君たちはどう生きるか』

皆さん。
ある日『君たちはどう生きるか』と、いきなり問われたら、どう返すだろう?
地元では、黙って拳で返事するのが一番正解なわけだが、まさかの俺のようなチンピラを煽るタイトルの映画が公開された!
シレっと!しかもジブリ作品で!
それが宮崎駿の最新作、タイトルもズバリ『君たちはどう生きるか』だ!!

どう生きるかは大体スタローンに学んだ俺だ。
今更説教されるいわれはねえよ!という気分だったのは正直否めない。
だが公開前にも関わらず鳥人間のビジュアルは解禁したものの、予告編・広告などは一切なし!
都会で働いていた人が田舎に引っ込んで開業した古民家カフェばりのプロモーション姿勢に、誰もが耳を疑った。
強気としか言いようがない。
このストロングスタイルはどうだ!?

これは挑戦だ。
ある意味、駿から俺への。
宮崎駿から映画を通して挑戦状を叩きつけられたら、受けないわけにはいかないじゃない!
例え完全に俺の思い込みだとしても!!
こうしてエクスペンダブルズ2の対ヴァンダム戦のスタローンのような気持ちで劇場へ向かったのであった。


そして何も知らない状態で、本作を鑑賞した後に俺の胸に去来した思いは一つ。


「ランボーじゃん…」


そう!
いざ蓋を開けてみたら、異世界版『ランボー怒りの脱出』なのだった。

こう聞くと「嘘つけ!」「ジブリ作品とランボーは違うだろ!」と言われるかもしれん。

だが敢えて言わせてほしい。
いたもん!ランボーいたもん!と。
…という訳で、豆知識やら、偉そうな批評は他の人に任せるとして、こちらでは本作と『ランボー』シリーズとの共通点を探っていきたいと思う。



あらすじ※ネタバレあり


戦時下の日本。
少年ながら死生眼を持つ主人公眞人は、父親の再婚相手である夏子さんの住む田舎へ引っ越すことになる。
だが病身の母親を火災で失くし、しかも夏子さんは母の実の妹であるのも手伝い、気まずさはMAX。
新しいお母さんと心の底から認められずにいた。
おかげさまで登校しても、同級生に愛想ゼロの眞人。
それが災いしたのだろう。
初日の下校時間に同級生たちと大喧嘩を繰り広げてしまう。
多勢に無勢の為、リンチを食らう眞人。
結果、ハードコア系プロレスラーばりに自らの側頭部に石をブチ当てる自傷行為で、ダイナミック不登校を決め込むのであった。
こうなれば家の周りをブラつくしかない眞人は、ひょんなことから自宅裏にある森にて怪しさ満点の塔を見つける。
屋敷に住む人外みたいな婆さんどもに話を聞くと、どうやら曰く付きの塔らしい。
自宅の敷地内にゴリゴリの心霊スポットがある事実を冷静に受け止める眞人だったが、時を同じくして、自宅の庭でよく見かけるアオサギがを煽り始めた。
信じられないことに人間の言葉で!
そうでなくてもモヤモヤしている所へ煽り散らかすアオサギ
これにキレた眞人は、遂に完全武装を決意!

木刀で挑んだ初戦であったが夏子さん&ババア軍団の介入により水入りで終わってしまう。
「いつか仕留めてやる」と、弓とナイフで武装する眞人の耳に、夏子さんがMIA(行方不明)扱いになったという報告が飛び込んでくる。
しかも夏子さんは身重であった。
周りの大人たちが捜索に右往左往する中、森の中へ消える夏子さんらしき姿を見かけていた眞人は、拉致った族は憎きアオサギ、監禁したのは裏にある塔と確信する。
相手は人間ではない!と、ヤニカスのババアに忠告されるも、ここで引いては俺が俺でなくなる。
何より、舐められっぱなしは許せねえ。
武器は手製の弓とナイフ。
罠だらけの塔へと向かう眞人。
果たして、人外から夏子さんを取り戻せるのか?
俺はこう生きる!と言わんばかりに眞人の人質奪還作戦が、今始まるのであった!

異世界ランボー=眞人説

坊ちゃん育ちと思いきや、ランボー・イズムを発揮するのが主人公の眞人だ。
ランボーの親友ダン・フォースがバラバラになったのと同様、眞人も実の母を火災で失くすというハードな過去がある。
おかげさまで今では笑顔を失っているのもランボー同様だが、結果として新天地で周りから爪はじきにされてしまうのもランボーと共通している。

眞人が頭をケガする展開も、第一作の『ランボー』でガルト保安官に発砲され傷を負うシーンへのオマージュであろう(と今決めました)。
あるいは、行くなと言われても行方不明の夏子さんを探しに行っちゃう姿勢。
これも『ランボー怒りの脱出』にて、写真だけ撮影して帰って来いと言われた命令をガン無視、最小限の装備で捕虜奪還に挑むランボーからの影響が伺える。
眞人が自作した弓のみでジャングル(森)に殴り込む展開はいわずもがなだ。

しかも森の先に待っているのは、時間も場所も関係ない、魔のマルチバースオブ駿空間。
そこで死んだはずの母親を発見し、眞人抱きしめるのだが、ここはコー・バオとの別れの抱擁シーンを駿なりにオマージュしているに違いないとニヤリとした。

また敵対するインコ人間に捕えられるシーンがあるのだが、ここもソ連軍に囚われたランボーそのものだ。
青サギがすんでのところで助けに来るわけだが、その後インコ人間の巣を脱出する為に一切の抵抗なしで暴力を行使するまでも含めて、実に『ランボー怒りの脱出』みを感じる。

止まらないランボーオマージュ


『怒りの脱出』オマージュは止まることを知らない
いよいよ終盤、異世界の命運を押し付けられた眞人が、はっきりとNOを叩きつけ、世界が崩壊するシーン。
ここは捕虜の命より、丁重に扱われるサーバールームに憤り、M60機関銃で破壊するランボーを彷彿とさせた。


周りが言う常識より、自らの納得を優先した結末はベクトルが同じだ。

もちろん、『怒りの脱出』以外にも共通点は多い。
例えばババアの指人形をお守りとして渡されるのだが、『ランボー3怒りのアフガン』でランボーが少年にお守りを渡すシーンと共通している。

市場で魚らしき生き物を解体するシーンは『ランボー・ラストブラッド』のラストのフェイタリティシーンだ。

自らのこじらせに折り合いをつけ、現実に戻るラストは、『ランボー最後の戦場』の実家に帰るランボーのエンディングのようなカタルシスを感じさせる。

何より、『君たちはどう生きるか』『ランボー(たった一人の軍隊)』どちらも原作の内容をガン無視した映画にしちゃった製作背景も実に似ている。
このように、『君たちはどう生きるか』と『ランボー』の共通点は枚挙に暇がない。

2匹のアイオブザタイガー(虎の目)を持つ者

宮崎駿とシルベスター・スタローン。
二人とも生まれた国も年も立場もジャンルも違うが、己の衝動に突き動かされ、映画というリングに戻ってしまうのは共通している。

思えば、2016年に放送された『終わらない人~宮崎駿~』では、確定申告みたいな表情でヤギを軒先に出したり、タバコを吸いまくったり、最新技術にキレたり、インスタントラーメンを作ったり・・・と、早い話がウダウダしている駿の日常に密着しつつ、最終的には胸のエンジンに再点火!
再びアニメの最前線へカムバックする、駿版『ロッキー・ザ・ファイナル』のようなドキュメンタリーであった。
道は違えど、両者共に『アイ・オブ・ザタイガー(虎の目)』を持っているのは間違いない。
両者とも年齢関係なくキープオンパンチングな姿勢には頭が下がる思いだ。
年齢的にも駿ラスト・ブラッド作品になると言われる本作だが、それでも最新作を期待してしまう。
そんな作品ですよ。

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?