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難病・障害をもつ子ども達の心と体を動かす仕掛けづくりーそらぷちキッズキャンプさんから学ぶ

2022年9月9日、公益財団法人そらぷちキッズキャンプの佐々木執行理事をゲストにデジリハセミナーを開催!今回はその様子を一部レポートとしてお届けいたします。

なぜ医療ケア付キャンプ場に関わることになったの?

造園コンサルタントとして活動をしていたそらぷちキッズキャンプ執行理事の佐々木さん。業務・研究の一貫として米国視察に行った際に難病の子ども向けの医療ケア付きキャンプ場に出会いました(同キャンプ場を含む「シリアスファンチルドレンズネットワーク」は世界各地に展開をしています)。

https://seriousfun.org/

日本国内でも初の医療ケア付キャンプ場の建設プロジェクトが始まり、設立チームの現場担当者の1人になった当時20代の佐々木さん。なんと現地北海道滝川市に移住!そこから佐々木さんのそらぷちキッズキャンプ人生が始まりました。

そらぷちキッズキャンプについて

そらぷちキッズキャンプは滝川市に100%寄付により誕生した日本初の医療ケア付キャンプ場です。東京ドーム4つ分の雄大な敷地に、安全な施設群を有しています。

そらぷちキッズキャンプの雄大な自然を紹介する佐々木さん

2012年には公益財団法人としてキャンプ場運営を本格化。全国各地から無償で難病をもつ子ども達を招待しキャンプを実施しています。


<やりたいという気持ちを自分の中でなかったことにしなくていいと初めて思えた>

キャンプに参加した子ども達からたくさんの感想を受け取っているそらぷちキッズキャンプさん。その中で佐々木さんが特に印象的だったと語るのがこちらの言葉。

「普段は話せないことが、キャンプではたくさん話ができた。」「普段、生活に制限があるので、羽がはえたような感じがした。」「やってみたいと言ったことが全てできた!」

そらぷちキッズキャンプの非日常を体験することによってようやく心が動き出す現場をたくさん目撃してきたそうです。

病気に関係する制限や我慢の中で、全ての気持ちが塞がってしまうケースがある。抑圧からの解放へ

佐々木さんにあれこれ聞いてみた!

ここからはセミナー内で司会のデジリハスタッフ・タコスが佐々木さんに行った質問の回答を抜粋してお届けします。

シリアスファンとは?

「真剣に楽しむ」という意味で、キャンプで大事にしている言葉です。「真剣に楽しむ」からこそ、その経験が「明日を生きるエネルギー」になると信じています。「楽しみ方」は、人それぞれ。病気や障がいによっても異なります。本人や親御さん、普段診ている医療者たちに対し、本人のやりたいチャレンジは何か、丁寧に把握して、ご本人のやりたい!はどういう状態で、医療的なリスクなどを避けながら、どのように見守るかを決めていっています。

「待つ」ことの大切さって?

非日常のキャンプでは、子ども達が活動を行う中で、周りの大人は手を出さずに「待つ」ことが大切です。例えばみんなで作った食事を自分が食べるテーブルまで運ぶ、と活動があるとします。杖をついているお子さんが自分でスープをテーブルに運んでいると、何も考えなかったら周りの人間が気を遣って運んでしまいますよね。でも本人は本当はやりたかったかもしれない。キャンプであれば、スープをこぼしてしまってもいい。お皿も割れづらいものにすればいい。親御さんや医療者にも前もって伝えて、みんなで「本人のチャレンジ」を「待つ」ようにしています。

もちろん我々も失敗するし、手伝いすぎてしまうこともあります。スタッフ同士で日々の反省をする中で「今日はここでよく待つことができたね」と共有したりしています。子どものチャレンジについて想い続ける、考え続けることがシリアスファンを生んでいると思います。支援を足し算というか、やることで考えるのではなくて、「何をやらないか」で考えるのも大切ではないでしょうか。

重度な障がいをもつお子様のシリアスファンを引き出すコツ

その方のコミュニケーション手段をまずはしっかり親御さんや医療者にヒアリングします。そうすると、いっぱいシリアスファンが見つかりますよ。例えば、主に目の動きでコミュニケーションをとるお子さんの場合、「あなたは、お父さんに右と左のどっちの料理を食べてもらいたい?」と聞いて目で選んでもらったり。
親御さんとお子さんだったら、すぐに伝わることも、会ったばかりのこのキャンプのおじさんに頑張って伝える、というのはその子にとっては大変なことです。その中で普段動かないところが動いたりする。他には、森の中にいる時に、ずーーーーっと待ってたら虫に嫌がってるな、とか、馬場では、馬に反応してるな、とか。考えている様子であれば反応があるまで待ちますよ、めちゃくちゃ長い時間です(笑)。「この子こうやろうとしてるんじゃない?」という先周りをせずに、待ちたいと思っています。

我々のキャンプには、支援をしたくて集まってくるスタッフやボランティアさんが多いので、子ども達に「してあげる」キャンプになりやすく、ある意味危険かなと思います。みんなで「待つ」ことを考え続け、お家に帰ってから「あれが自分で出来た!」という経験を1つでも持って帰ってもらうことが大事だなと考えています。

支援の現場の皆様へのメッセージ

デジリハの皆さんがやっているみたいに、リハビリの中に楽しさを入れ続ける、どうやったらいいか考え続けるというのが大切ですよね。一発で100点満点をとるのは難しいので、継続が大切。例えば僕らであれば「あの時待てたねー!」というような、仲間と振り返り、議論し続けるという仕組みをもつことが重要なんじゃないかなと思います。

デジリハとは


※デジリハでは障害は社会の側にあるとの考えより、漢字表記をしております。ゲストの講演部分については、ゲストの意向に沿ったひらがな表記としています。




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