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【3/18】米国デジタルヘルススタートアップ"Hippocratic AI"のシリーズA資金調達!

今回は3月18日に発表された、シリーズAでの資金調達が発表された「Hippocratic AI」です。 Hippocratic AI は、2023年に設立された大規模言語モデルを使ってヘルスケアに特化したサービスを展開するスタートアップです。医療機関における医療スタッフの人出不足は日本と同じく米国においても大きな課題であり、その課題解決のために”AI看護師”などAI医療スタッフ の開発をしています。

General Catalystがリード投資家として参画したこのラウンドでは5,300万ドルが新たに調達され、シリーズAながら評価額が5億ドルに到達しています。

General CatalystはシリーズAだけでなくシードラウンドでも出資しています。また、シードラウンドでリードを務めたAndreessen Horowitzも今回のラウンドにフォローオン投資をしているので継続した著名投資家からのサポートを得られていると言えそうです。


About "Hippocratic AI"

・国:米国
・創立年:2023年
・資金調達ラウンド:シリーズA
・主な投資家:General Catalyst (seed and series Aに参加), Andreessen Horowitz (seed and series Aに参加), その他多くのヘルスシステム(病院やクリニックを含む医療グループ組織)

投資家のロゴ(Hippocratic AI websiteより)

・総調達金額:約$120M
・サービス:看護師などの医療従事者不足を解消するためのAI医療スタッフ(リスクの低い非診断的な患者対応)
・事業モデル:B2B – Hospital, Health Plan, Pharma, Digital Health Company

製品概要;安全性に配慮した患者との対話型AI看護師

生成系AIを使った安全性と共感性の高さを売りにした患者との対話が可能なAI看護師などのAI医療エージェントを開発しています。こちらは、大規模言語モデル・自然言語処理・音声合成技術を使い、会話のテンポよく患者さんとやりとりが可能なソフトウェアです。例えば、同製品を利用することで不足する看護師等をカバーすることだけではなく、看護師を雇う場合の時間当たりの単価よりも安いコストに抑えられる可能性があるそうで、ウェブサイトを見ると時給9ドル以下でサービス提供可能(なものもある)だと謳っています。

これにより医療機関にとっての大きな課題であった不足している看護師のアウトソースを同社のサービスで対応可能となります。また、資金調達の発表と同時に、NVIDIA との提携を発表しました。NVIDIA AI プラットフォームを活用し、超低遅延の会話型インタラクションを可能にする共感 AI ヘルスケア エージェントを開発したことを公表しました。

数あるAI医療スタッフの一例;慢性心不全患者の退院に伴う患者向けフォローアップを、患者に寄り添うスタイルで医療機関の人出不足を支援する。(Hippocratic AI websiteより)

同社では多くのユースケースに従ったAI医療スタッフが作成されております。会話の内容の品質だけではなく会話スタイル(例;より患者に寄り添うモデルか直接的な会話をするモデルか、など)も複数オプションを用意しており、ここまで細かく分類したモデルを広範囲に作っている点は個人的には驚きでした。

是非ウェブサイトにあるAI医療スタッフと患者の自然な電話でのやりとりの動画を見て頂くとより理解が深まるかと思います。

提供価値

  1. 安全性; 同社はこの安全性を繰り返し強調しているのが印象的です。彼らは “AI医師”の開発はしておらず、医師の行う診断行為を生成系AIが適切に行えるとは思っていない、と明言しております。そのため、主なユースケースは不足する看護師業務の支援になります。その品質の確認もテストで実証しているとのことです。

  2. 共感・エンゲージメント; ユーザーテストでは、患者が自然に感情的なつながりを築くためには超低遅延の音声対話が必要であることが繰り返し示されています。AI ヘルスケア エージェントは、ヘルスケア専用に設計された同社の安全性を重視した大規模言語モデル (LLM) に基づいて構築されています。Health Systemなどの顧客は、同社のAI医療エージェントを導入してリスクの低い非診断的な患者対応を電話で行うことを、このAI看護師にアウトソース可能になります。

  3.  細やかなユースケースごとに作成されたAIモデル; 慢性心不全患者の退院後のフォローアップや白内障手術前のケアなど、非常に細かなユースケースごとにモデルが組まれているようです。

数あるAI看護師の一例;様々な場面において特化した専門性を持ったモデルを複数開発している(Hippocratic AI websiteより)

研究開発

投資家にも多くのHealth Systemが参画しているのが特徴的ですが、これら投資家にもなっている医療機関だけでなく、この製品開発のためにはより多くの医療機関のサポートをもらいながら開発してきているとのことです。大きく開発期間をPhase1から3までの3段階に分けており、既に1,000名を超える看護師と100名を超える医師による製品テストは完了しております。現在は40以上の医療機関と保険会社とパートナーシップを結んで製品テストを実施中です。更にテストの協力を仰いでいるのは5,000名を超える看護師と500名を超える医師です。製品としての品質の担保のためにマイルストンを確実にクリアしていることが伺えます。

40以上の外部パートナーと連携して製品開発を進めている(Hippocratic AI websiteより)

経営チーム

Hippocratic AIは、Munjal Shah氏によって設立されていますが、その他のメンバーはJohn Hopkins, Nvidia, UPenn, Stanford and Googleなどの医療専門家が名を連ねております。また、Shah氏は別のAndreessen Horowitzが投資したLike.comというスタートアップの創業者でもあります。これだけではなく、なんと健康スコアを開発するHealth Equity Labsや、医療保険のプラットフォームを提供していたHealth IQの創業にも関わっていました。このHealth IQもまたAndreessen Horowitzから過去に投資を受けていましたが、2023年8月に破産申請(chapter 7) を行い、破産宣告後に数百万ドルの請求書を放置したままになっている、などのあまり明るくないニュースも別で報告されています。。


このShah氏に関わるニュースや同社のソリューションの品質についてもう少し深く調べて続編とした記事はこちらです。

おしまい。
※このブログ記事は、あくまでも情報提供のみを目的としています。

参考記事

参考;3/12 前回記事


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