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陸上競技というコンテンツの在り方

東京オリンピックの出場権を賭けた第105回日本陸上選手権大会が終わった。国内の陸上大会でこんなにワクワクしてTVを見たのは初めてだと思う。

男子100Mは波乱だったと感じた人、妥当な結果と感じた人、様々だろう。結果順位はともかく、決勝直前に降った雨で私は何かが変った気がした。

この何かの変化を感じた事もワクワク度が増した大きな要因でした。

100分の1秒という争いの中では、複数の要因が重なれば、些細な変化であっても10分の1秒くらいは普通に変る。100分の1秒なら10cmの変化。0.1秒なら1mの変化だ。100m走で1mの差は非常に大きい。

下の表は日本選手権で上位6位内に入賞した選手のスタート時の反応タイム(リアクション)、実際のタイム、タイムを無風状態に換算したタイム、風の状況を、それぞれベストタイムを計時した時と比べてみた。(無風時の換算は下記サイトを利用。※換算は。風の向きや風が吹いている時間の長さによって状況はかわるので、あくまで参考ですので予めご承知下さい)

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多田選手はリアクションタイムや無風時換算したタイムで言うとほぼ変わりない記録となった。つまり先日の布施スプリント大会でベストタイムを叩き出した通りの状態や状況を再現させる走りだったと想像する。

山縣、小池、桐生選手3人はいずれもリアクションタイムで100分の1秒差以上遅れている。しかしそれ以上に無風換算したタイムは0.2秒以上遅れている。何があったのか?

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これはあくまで個人的仮説である。

6月のこの時期で雨が降ったことでまず空気が重くなっている事だ。湿度が上がり、気圧が下がる。秋の頃の晴れた日の澄み渡るような空気とは雲泥の差。しかしもちろん空気の重さが及ぼす影響など僅か。

一番厄介なのはこういった湿度や気圧環境の変化で体調が優れないことがあるように、走っている間に体の動きがよく感じないということだ。

脳がそう感じてしまうから、「体をより動かせ!」っと指令を出してしまう。そこで力みが生まれてしまう。

いつもならトップギアに入る40m付近から徐々に詰めて行く差を、力みで固さを伴い、前の選手を捉えられない。

本題はこの仮説に対する信憑性ではない。こうした仮説を誰でも唱えることができ、だれもが自分なりの順位予想ができ、そして検証が出来ること。そういうコンテンツ作りが大切という話がしたい。

野球でいえば0アウト/ランナー1・2塁という好機で代打を送るか否か、バントで確実に進塁策かそれとも強攻策かといった攻撃策もあれば、守備側は前進守備か中間守備位置を取るか? ダブルプレーを狙うか、一点を献上してもアウトを積み重ねるかなどその采配そのものを楽しむことが出来る。

サッカーでいえば「4-4-2」や「3-5-2」といったフォーメーション戦略だったり、カウンターを取りに行く布陣だったり、誰を起点にどちらのサイドを使っていくかと言った具合のいわゆる戦略や戦術を可視化させて見る側にどれほどの論点を提供出来るかがそのコンテンツの楽しみを左右させる。

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陸上競技が国内大会であっても民放で放映され、スポンサーが付いてくれるようにするためには競技コンテンツの在り方が重要だと思う。

100Mでいえばスタート時にリアクションタイムが表示されれば、真横からの映像が撮れなくても、誰がスタートダッシュを計れたのかわかる。勿論全コースのタイムを一同に表示しても、誰も目が追いつかない。順位だけ表示して一番早かった選手からの±差異時間で充分だ。大切な事は見る側が瞬時に状況を掌握できること。それだけで興奮度は数倍になるだろう。

例えばだが・・・

□40mで時速換算のスピードを表示

□50mの通過タイム(通過1位の選手のタイムと後続との±差異)表示

※新記録への期待が掛かる通過タイムなら興奮や高揚は益々ヒートアップ。

□80mで再度時速換算のスピード表示。

※40m地点の記録との比較により状況掌握が可能

こんな感じで僅か10秒間といった時間を単に走っている姿を追い続けるだけでなく、プロセスを堪能できる情報があれば展開や駆け引きまでも楽しめよう。

ITの進化に伴い、スポーツというコンテンツが急速に進化出来うる時代が到来している。観戦する側の目線に立って魅力ある映像と情報の提供を可能にする事が重要になる時代。

 スポーツにはいわゆる「するスポーツ」と「観るスポーツ」に分かれると考えている。以前、ラグビーは「するスポーツ」だった。ワールドカップ開催以降「観るスポーツ」に大変身を遂げた。ラグビー特有のわかりにくいルールや反則プレーを誰でも分かるように解説する技術が進んでいる。フォーメーションや戦術展開でも同じ地点・タイミングで発生した状況を多方向からの映像で捉えプレー検証に使っている。瞬間瞬間の出来事を360度方向からの映像を切り替えながら実況で使ったり、解説検証するので迫力はもちろん、ゲーム展開も堪能できる。

まさに陸上競技もITを介したコンテンツとしての節目を迎えているかも知れないと感じます。


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