マーケティングの定番フレームワークをつくる時のアンケートテンプレ5選
はじめに
皆さんは「マーケティングのフレームワーク」を実務の中でどれだけ使っていますか?
あるいは、これからもっと使っていこうとしているところでしょうか?
「マーケティングのフレームワーク」は、ほぼ全マーケターに重要性が知られていて、「3C・4P」のような各フレームワークの定義も、広く認知されています。
でも、肝心の「フレームワークの中に入れる情報」を、あなたは持っていますか?
そもそもフレームワークの中に入れ込む情報が、「無い、もしくは、あったり無かったりする」という状態だと、実務では使わなくなる大きな原因になります。
そこで、リサーチの技術を使ってみましょう。「アンケート」を駆使すると、フレームワーク内に入れる情報の中身をロジカルにまとめあげることができます。
でも、ここで課題になるのが、お気づきの通り、各フレームに適した質問を用意できるかどうかです。質問の精度はそのまま得られるデータの精度に直結します。
「3C」くらいシンプルだったらまだよくても、「バリューチェーン」とかになってくると、構成要素が複雑すぎてそもそも質問がまとまらない…そう思えますよね。
たしかに、アンケートを使ってもデータのあぶりだしが難しい項目があるのは事実です。無理に実施してもかえって完成しないストレスになるだけ。
そこでこのnoteでは、マーケティングの定番フレームワークをつくる時のアンケートをテンプレ化すべく、質問文と選択肢のモデルパターンを用意しました。
一般的な企業では、目前の短期目標への対応に皆必死で、なかなか社内でマーケティング用のアンケートを取りまとめている人は少ないことと思います。
私はマーケティングリサーチファーム国内最大手の「マクロミル」で、外資系コンサル・広告代理店チームに所属して調査技術を学んだのち、ウェブの事業会社で12年間ほどマーケティング用のアンケートを運用してきました。
この経験をもとにして本稿では、私も試行錯誤しながら改善を続けてきたアンケートノウハウを公開したいと思います。実際のアンケート票をイメージした図を貼り付けていくので、目次を軸に図だけ追っていただいてもOKです。
リサーチの技術を使って、しっかりとマーケティング力を上げていきましょう!
※1.フレームワーク自体の理解についてはあまり詳しく述べません。『グロービスMBAマネジメント・ブック【改訂3版】』などをご参照ください。(私もこの「グロービスのMBAシリーズ」を参照しています)
※2.アンケート内容はテンプレを参考にしつつ、自社に合ったものにアレンジしていきましょう。(たとえば既に定点調査を行っているような場合、選択肢は過去調査と同一の方が良いなどの状況もあります)
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▼ ①STP分析
a.Segmentation(セグメンテーション)
b.Targeting(ターゲティング)
c.Positioning(ポジショニング)
「STP分析」は、Segmentation(セグメンテーション)・Targeting(ターゲティング)・Positioning(ポジショニング)の観点から、自社のビジネスドメインを定義していく時に使うフレームワークです。
アンケートでは、<市場や消費者の動きを把握する→フォーカスする箇所を決める→それに合わせて自社の立ち位置を整理する>ためのデータをSTPに適した各質問から得ます。
※「セグメンテーション」と「ターゲティング」は、会社によって、あるいは出典によって粒度(レベル感)が様々なので、以下は私がこれまでの実務で使いやすいと思っている粒度のもので解説します。
a.Segmentation(セグメンテーション)
・消費者のカテゴリ利用状況を、「マーケット一般」と「自社での状況」に分けて尋ねる。両方のデータを突き合わせて、マーケットボリュームを把握していくことがポイント。
b.Targeting(ターゲティング)
・利用頻度・利用金額といった利用行動量を問う質問から、自社ユーザーのボリュームゾーンの傾向を見極める。結果データから、ヘビーユーザー・コアユーザーの定義を把握することがポイント。
c.Positioning(ポジショニング)
・自社に当てはまるイメージワードを集めることで、自社の立ち位置を理解する。自由回答(純粋想起)→選択回答(助成想起)の順で尋ね、結果を突き合わせることがポイント。
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▼ ②3C分析
a.Customer(顧客)
b.Competitor(競合)
c.Company(自社)
「3C分析」は、Customer(顧客)・Competitor(競合)・Company(自社)の市場環境を把握して、新商品開発やリブランディングなどを考えていく時のフレームワークです。
アンケートでは、認知率・利用率といったユーザーの接触系数値+各社の商品やサービスのブランドイメージを測定して、市場の現状把握→自社の打ち手を考えていきます。
このタイプのアンケートを設計する時は、自社の現状把握を行いつつ、同じ質問で選択肢に競合プレイヤーも混ぜることで、競合の状況もいっぺんに計測することができます。
また自社で展開しているブランド数が多い場合は(複数アプリを出している、物販+飲食もやっているなど)、自社内のブランドにフォーカスした設計にすると良いでしょう。
a.Customer(顧客)b.Competitor(競合)c.Company(自社)
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▼ ③4P分析
a.Product(商品)
b.Price(価格)
c.Place(流通)
d.Promotion(販促)
「4P分析」は、Product(商品)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(販促)の観点から、商品・サービスのマーケティング展開を考えていく時のフレームワークです。
アンケートでは、4Pの調査目的を「実態把握型」と「仮説検証型」、いずれかのアプローチに寄せることがポイントです。それぞれの目的=ねらいは以下のようになっています。
・実態把握型→現状をありのままに数値検証する
・仮説検証型→構想している計画への賛否を問う
a.Product(商品)=何を
・実態把握型→利用カテゴリ状況を尋ねる
・仮説検証型→コンセプトへの評価を問う
b.Price(価格)=いくらで
・実態把握型→平均的な利用金額を尋ねる
・仮説検証型→高いと感じるラインを問う
c.Place(流通)=どこで
・実態把握型→購入可能なすべてのチャネルを並べて尋ねる
・仮説検証型→購入の判断が分かれるチャネルに絞って問う
d.Promotion(販促)=どのように
・実態把握型→自社の販促展開であり得る消費者タッチポイントを並べて尋ねる
・仮説検証型→自然に接している情報源、受け取りやすい情報源に絞って問う
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▼ ④バリューチェーン分析
a.調達・購買物流
b.製造・出荷物流
c.マーケティング・販売
d.アフターサービス
e.インフラ
「バリューチェーン分析」は、調達・購買~製造・出荷~マーケティング・販売~アフターサービスという、事業活動の一連の流れを整理していく時のフレームワークです。
※一般的には上記の流れの中に人事(人材管理)の要素も含まれますが、アンケート上はかなり細かくなってしまうため、本稿では割愛します。(マーケティングに寄せます)
アンケートでは、利用理由・継続理由・ブランドイメージなどの質問の中に、バリューチェーンの各機能を代弁する選択肢を置いて、各機能が有機的かどうかを判定します。
具体的には、「当社を利用する理由は何ですか?」「当社のブランドイメージを教えてください」という質問の中で、商品のこと、店舗のこと、配送のことなどを尋ねます。
a.調達・購買物流
・品揃え(数・質)に代表されるバイイング・セレクションの観点から選択肢出しする
b.製造・出荷物流
・メーカーとしての強み、ロジスティクスの強みの観点から選択肢出しする
c.マーケティング・販売
・コンテンツ・プロモーション・PRの観点から選択肢出しする
d.アフターサービス
・カスタマーサポート対応の観点から選択肢出しする
e.インフラ
・サイトやアプリのUIUX、決済手段の観点から選択肢出しする
実際のアンケートでは、回答に際して常識的な選択肢数の制限があります。上記のバリューチェーン各機能を代弁する選択肢の中から、20個程度を取捨選択しましょう。
ポイントは、「自社が重点的に力を入れている機能の選択肢出しを細かく行う」ことです。選択肢を広く浅くしていると、あまり有効なファインディングは得られません。
また、分析を行う際は、個別にどの選択肢の数値が高いかを見るのと同時に、選択肢のバランスを取ったうえで、機能別にどのグループの値が高いかを見るようにします。
質問の目的は購買理由でもイメージ調査でもどちらでもよく、要はバリューチェーンを代弁する選択肢を通じて、予算配分や人員配分がうまくいっているかを検証します。
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▼ ⑤ファネル分析
a.認知
b.興味・関心
c.比較・検討
d.購入・申込
e.継続・紹介
「ファネル分析」は、認知~興味・関心~比較・検討~購入・申込~継続・紹介という、ユーザーの利用プロセスをデータで把握していく時のフレームワークです。
利用ステータスを数値化するアプローチは既に「3C分析」の方で行っていますので、この項目では、利用ステータスの「(選択・行動)理由」を把握していきます。
アンケートでは、ユーザーの利用プロセス順に質問を組み立て、質問結果を通じて、どのようなアプローチがユーザーに対して有効なのかを推論していきます。
a.認知
・商品・サービスを知る情報源を確認する
b.興味・関心
・カテゴリ・アイテムそのものを利用するシーン(用途)を確認する
c.比較・検討
・比較検討時に競合した商品・サービスを確認する
d.購入・申込
・利用内容を確認する(物販系→商品プロダクト、サービス系→サービスメニュー)
・満足内容を確認する
e.継続・紹介
・継続意向を確認する
・推奨実績を確認する
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私は事業会社内のリサーチャーという立場柄、アンケートビギナーのスタッフから、「どういう質問を入れるといいか?」「どういう質問の並びだと適切なのか?」をよく聞かれます。
その答えは、本稿に示した各フレームワークのテンプレートにある程度表れているな、と今回再認識しています。記事を通じて、リサーチを好きになってもらえたらうれしいです!!
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