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終わらない × ネクタイ[空想惑星探査記5日目]

私の名前は、イマミ・テルージャン。
宇宙冒険家だ。

現在、未知の惑星にて、絶賛遭難中。

だが、幸い水も食糧も十分に残っているため、せっかくなので、この惑星を気ままに散歩してみることにした。

これは、私が未知の星を気の向くままに冒険した記録である。

5日目

昔、私の星では、「ビジネスマンはネクタイ」というのが、当たり前の時代があったそうだ。

今でこそ、みんな揃って同じ服で仕事なんてしていたら笑われてしまうし、気味が悪いけれど……昔はその逆。
みんな同じなのが当たり前、だったそうだ。

とはいえ、「ネクタイが好きだから」という理由で、今も身に着けている人は多い。
私も母星にいた頃は、一年に一回ほど、オシャレで身に着けることはあった。

だから、散歩中にそれっぽいものが落ちていれば、視界に入ってくるのは当然だ。
茂みの中から少しだけ顔を出すように、ネクタイが飛び出していた。
私の星ではどこにでもあるような、紺色のネクタイだ。

この星にも、ネクタイを身に着ける文化があるのだろうか?
そして、これは誰かの落とし物?

疑問に思った私は、ネクタイを辿ってその先へ入ってみることにした。

だが、ここで不可解なことが一点。
ネクタイが、「更に森の奥まで続いていたこと」だ。

ネクタイというのは、もちろん長い物だが、それにしても限度というものがある。
紐やロープじゃないんだから、長ければ良いというものではない。

そんなネクタイが、森の奥へ長く長く続いているのは、どういうことだろう。

そんな疑問が、私の好奇心をくすぐった。

この星には何メートルもあるネクタイが存在するのかもしれないし、それを身に着ける大男も存在するのかもしれない。

そんな妄想に駆り立てられた私は、ネクタイを追いかけて、更に奥へと進んでいった。

初めはワクワクしながら歩いていた私だったが……50メートルほど進んで、ふと我に返った。

おかしい。
あまりにも長すぎる。

それに、森の奥へと誘いこまれている気配もある。

不安を感じた私は、無意識に、ここまで辿ってきたネクタイを握りしめた。

同時に、ギョッとした。

ネクタイに、温度がある。

ドクドクと脈打って……生きて、いる。

筋肉質で、今にも動きだしそうだ——まるで、鍛えられた人間の腕のように。
森に入る前は無機質だったネクタイが、今や別物だ。

慌てて振り返って、気付く。
木々のあちこちに、同じ生き物のようなネクタイが張り巡らされている。

私の星の生き物で例えるなら、クモ。
クモの糸のように、ネクタイが私を捕まえようとしている……?

ようやく恐怖を覚えた私は、とにかく来た道を走って戻った。

走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って走って——走った。

そして、息を切らしながら森を出た、その瞬間。

「#"'ッ`>!!!!!!」

それは、怒りに満ちた舌打ちのようにも聞こえた。
獲物を捕らえ損ねた肉食動物の、怒りの舌打ち。

振り返って見ても……あのネクタイは、どこにも無い。

やはり、生き物だったのだろうか。

この星の生き物は、比較的穏やかだと思っていたが……そこまで甘くもないのかもしれない。

生存競争はどの星でも同じ、ということか。
しかし……これだから、冒険はやめられない。
恐怖と発見は、紙一重だ。

私は、あのネクタイを『終ワリタイ(オワリタイ)』と名付け、今日は眠ることにした。


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