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33 キキクル(disaster warning)


はじめに

写真は、noteクリエイターが提供する画像みんなのフォトギャラリーに投稿されているもので、「長野市篠ノ井付近の画像です。 2019年10月に発生した台風19号によって被災しました。 被災した方々の力に少しでもなりたいです。」と紹介されていました。この画像をみていると、私自身も、地元長野県の北信が出身で、家族が大水害と直面したことを思い出します。
今日は、昨日6月2日から本日6月3日までに各地に被害をもたらした今回の大雨に関する内容にふれながら、気象庁の「キキクル」というシステムについてコラムを書いてみたいと思います。

被害の規模

現在6月3日の正午の投稿時点における被害の状況をまとめます。この時点のNHKのニュースによれば、台風や前線の影響で午前10時の時点で1名の方が不幸にもお亡くなりになり、2名の方が行方不明となっています。また、少なくとも29名の方々が怪我をするという状況です。心よりお見舞いを申し上げます。また、消防庁のまとめによると、被害が出ている住宅は、愛知県をはじめ12の府県であわせて178棟にのぼっています。また、運転を見合わせる等の対応をとっていた東海道新幹線などの鉄道網も被害状況を確認したのち運転を再開し始めているということで、移動の面にも大きな被害をもたらしました。

線状降水帯

今回の大雨は、線状降水帯という気象現象が原因とされています。記憶に新しいところで言うと、2014年に広島県で大きな被害をもたらした大雨もこの線状降水帯が関係しています。積乱雲が発生して雨を降らせ、一定の量が降ると雲が通り過ぎるか消滅し、激しい雨がやむのであればそれほどの被害は出ませんが、この積乱雲が次々に発生し、まるで雲の列のように同じ場所にとどまったり、ゆっくりと通過していったとしたらどうでしょうか。それも、上流から下流域まで河川を含む地域全体を広範囲にこの線状降水帯が覆っていたとしたらどうでしょう。
今回の6月2日から3日にかけての激しい雨が降り続いたものは、台風と前線が影響し、東日本や西日本の太平洋側に線状降水帯が次々に発生しました。東海地域に被害が大きく、関東地域や近畿地域でも記録的な大雨となりました。この気象のメカニズムは注意が必要なものであることは、少し前から明らかになっており、2021年から気象庁でも線状降水帯についての予報を発表するようになっています。

キキクル

今回のコラムで特に読んでいただきたいのが、この項です。「キキクル」とは、「⼤⾬警報・洪⽔警報の危険度分布」を意味します。これは、「危機が来る」という意味を込めた名称で、被害の予測を把握するために有効なものです。
スマホに設定しておけば、土砂災害や洪水災害から避難しなければならないような事態が発生していることに適切に気づくことができます。見た目にはわからない水害の進行状況を危険な場所に行って確認しなくとも済みますし、気づかないまま危険水域にまで達してしまうということも防げます。
避難をすべきかどうかの判断に使えるという点で興味のある方は、気象庁のホームページから登録の仕方や設定の仕方などを確認してみてください。
多くの人の命を救うために、近年の気象状況の変化に対応したシステムとして開発されたもので、大変に使いやすいものとなっています。

キキクルの地図

キキクルでは、危険度の分布を地図に表したもので、現在の状況を把握できます。今いるところはもちろんですが、離れて暮らす家族の位置も地図上で確認できます。土砂災害、浸水害、洪水災害がどれくらいの危険性で発生するのか、また発生の可能性はどれくらいなのかを把握できます。
危険度は5段階に色分けされていて、10分毎に情報が更新されていきます。かなり、リアルタイムに把握できる感覚です。
大雨のときや洪水警報などが出されている時などは、実際にどこでどのような災害の危険度が高まっているのかを把握することができます。

災害危険度の5段階

今回の大雨でも、2度3度と地域の防災情報がスマホなどに届いた方が多かったのではないでしょうか。また、地方では、防災無線などが何度も放送されるなど、様々な形で情報が出されていました。私たちは、こうした防災情報に対して、いつも主体的な判断を迫られます。自分は非難するのか、そこにとどまり仕事をし続けるのか、それとも様子を見るのか、避難の準備をはんじめるのかなどといったように判断をするわけです。
キキクルを使うと、主体的な判断に客観的には情報が加わり、より適切な防災行動がとれます。それが、5つの危険度です。それぞれ、色が指定されていて、マップ上にその色で危険度があらわされますので、最も危険な黒や次いで危険な紫などが付いた場合は、間違いなく避難を視野に入れた防災行動が求められます。
簡単に、5段階の危険度を説明します。最⼤危険度の「黒(災害切迫)」は、重大な災害が近づいていることを意味します。もうすでに発生している可能性まで視野に入れて行動する必要があります。その次の「紫(危険)」は災害の危険度4に相当します。近くに河川がある、洪水で流失のおそれがあるなどの危険性を視野に入れて、速やかに避難開始を判断することが重要です。その次の「赤(警戒)」は災害危険度3に相当します。この時点で、非難に時間がかかる方や住宅の周辺の状況、移動ルートによっては避難を開始することが望ましい場合が生じます。以下、「黄色(注意)」,「白(今後に留意)」という5段階になります。

甚大化する自然災害に備える

難を避けることが避難ということを念頭に置いて準備をしたり、行動したりしなければいけません。難が迫っていることをいち早く正確に知るために新しい、ソリューションを活用することが有効ですし、とても手軽です。
次に、一家に1枚はハザードマップを印刷して貼っておいてもいいですね。都道府県名を覚えるのも大切ですが、地図の活用方法を学ぶ上でもこれほど命に直結した地図の使い方はありません。土砂災害や洪水災害に関するハザードマップを把握しておくためにもこれは大変有効な手段です。ハザードマップには、それぞれ地域ごとに重要なものがあります。例えば、噴火や地震による災害に関するものは、重要なものだと言えるでしょう。
また、難を逃れる手段として、指定避難場所の把握も重要です。一度は車で行ってみる、徒歩で行ってみるなどといったことを行うことで、移動ルートの確認ができます。しかし、指定緊急避難場所への移動にこだわりすぎると逆に適切に非難ができない場合があります。東日本大震災では、とにかく近くの高台に避難した方々が、難を逃れることができたように、非難行動を少しシミュレーションしておくだけでも大きな備えとなります。

防災教育は生きる力の育成の観点からも重要

自らの命は自らの手で守るのが大前提なわけですが、キキクルでさらに適切な判断に備えることは、リスクの軽減につながります。金融教育においてもたびたび出てくる「リスクテイク」という言葉ですが、IB(国際バカロレア)の教育カリキュラムにおいても、10の学習者像にリスクテイカーという言葉が出てきます。
リスクテイクする人、リスクを回避する人とは、単に無謀に挑戦する人でもなければ、逃げ回る人でもありません。

梅雨、台風のシーズンになります。「備えあればうれいなし」といったところで、気象庁を検索し「キキクル」を試してみてください。

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