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353 無償化ブーム


はじめに

現在、高校の無償化の波は広がりつつあり無償化ブームとも言えるかもしれません。この全国での広がりの先頭を走っているのは大阪府かもしれません。各都道府県が「授業料無償化制度」の拡充に力を入れているのは、経済的格差を気にせず、私立公立を問わず自分の将来に向けて必要な学校を選ぶことができるようにするためというのがこの政策の大きな魅力かと個人的には思います。
今日の教育コラムでは、これまでの無償化よりも一歩進んで完全無償化という政策について少しお話してみたいと思います。

大阪府では

大阪府が2024年4月から導入している完全無償化は、社会的な重要な実験とも言えます。この導入で社会的にどのような変化が生じるのかを見ていくことは今後の高校生の受験や学びにまで影響する大きな事象だと言えます。
大阪では、私立に通う新高3生について、年間授業料63万円までは府と国の就学支援金で負担し、それを超える部分については、年収800万円未満は無料、800万円以上は保護者が負担する制度をとっています。
さらに、この制度は少しずつ段階的に保護者負担を減らしていき、2026年4月には、私立に通う全ての高校生について、世帯年収にかかわらず保護者負担は無くなります。
公立については、2024年4月以降、新高3生から世帯年収にかかわらず保護者負担がなくなります。

変化

現行の無償化の影響で、大阪府では私立を第1志望とする受験生は30%を超えました。この割合は、過去20年間で初めてのことです。つまり私立人気に拍車がかかったわけです。
一方で、公立高校を志願者した人は減少し、大阪府内の高校の半数近い70校では、定員割れを起こしました。大阪府の教育員会をはじめ公立高校の関係者の間では、無償化によって生じた大きな変化に戸惑いを感じているようです。

受験生の声

授業料無償化により、家庭の経済状況を中学生が気にせずに進学を目指すことは、生徒や保護者にとっては進路選択のしやすさが増したことは間違いないでしょう。そのため、歓迎の声も多く上がっているようです。
競争原理の中で教育の内容を磨いてきた私立は、学習環境も整備されていることも多く、お金という壁さえなくなれば当然に生徒からしてみれば選択肢の一つとして浮上するわけです。
結果的にその半面で公立は一気に不人気になったわけです。しかし、この結果はただ単に人数が減っただけでは済まされるものではなく、大阪府では定員割れが3年連続で続き、改善の見込みがないと判断されると統廃合の検討対象となるというルールがあります。
このルールも含めて大いなる社会実験だと言えます。これは、定員割れを起こしている公立高校の責任者からしてみれば、魅力が無い、学校として存在する価値が無いので統廃合しますという不本意な結果を生じさせるわけですからかなりきつめのルールです。
少子化が加速する社会の中でどのように無駄な税金の支出を軽減していくかは重要な問題です。今回の無償化は、お金という壁を取り除いた時に本当に行きたい学校がどこで、生きたくない学校がどこなのかがはっきりしてくるわけです。
公立高校も教育の質と独自性を今まで以上に高めていく必要がより一層増していくわけです。3年連続定員割れということは、今年定員割れをしている高校は、来年も定員が割れればリーチとなります。そうなった時に各公立高校はどのような行動をとるのでしょうか。そこで教育改革が生じる可能性があるように思います。
いずれにしても、生徒や保護者がお金という壁を越えて真に学びたい高校で学べる日が全国に広がるまでもう少しかかりそうですが確実に広がりつつあるのだと思います。

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