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135 好きな色と好きな形


はじめに

今日は、皆さんに紹介したい個展があります。それが、上にリンク先を紹介しています「松嶋励路展」です。9月18日~23日の期間で東京の銀座にあります藍画廊で行われます。入場は無料です。
私がこの方の作品と出会ったのは、かれこれ17年ほど前のことです。正しくは、今回個展で展示される作品と同様の技法を目にしたのは15年ほど前かと記憶しています。
当時から、モチーフのない美しい色を探究する芸術の方向性に大変興味をもっていましたし、共感していました。白地の壁にこの作品が展示された時に発する、幾重にも重ねられて生み出された「色の重なり」と「黄金比」が織り成す美しさは見たものを魅了します。
絵画だけではなく、世界中の全ての現象や物体において「色」は大きな役割を果たします。色が持つ意味は複雑であり大変に奥深いのです。この色や光といったつかみどころのないものと向き合い続ける一人の芸術家の連作を通して探究し続けることの重要性を考えてみたいというのが今回のコラムの柱となります。

黄金比

黄金比とは、人が最も美しいと感じるバランスの比率のことであり、世界で共通する美しさの指標といわれていることは、みなさんもご存じのことと思います。
 黄金比の配分比率は「1:1.618」になります。この比率を用いたデザインは世界中にあふれています。有名な大企業のロゴマークなども黄金比で構成されているものが多く存在します。
皆さんがよく目にする「アップル」や「グーグル」のロゴは、黄金比の塊といったところです。身近なものでは、カードや名刺なども黄金比が用いられています。
さた、そんな黄金比ですが、発見したのは古代ギリシャの数学者「エウドクソス」という人物です。その後、パルテノン神殿の建設の際に、彫刻家「ペイディアス」が初めて建設時に黄金比を用いたと言われています。
パルテノン神殿の写真をご覧の際には、正面から見た時の建物の高さを1として、横の長さの比率を計算してみてください。1.618になっているのが確認できます。
また、「黄金比」という用語は、ドイツの数学者マルティン・オームが刊行した著書の中で初めて登場させ、人類が最も美しいと感じる比率として多くの人々に浸透していきました。この黄金比、人工的な比率のように思えてきますが、自然界にはこの比率の美しさを感じるものや生物がたくさん存在します。

三原色とその補色と白色の油絵具

松嶋励路展で目にする作品の全てが、まるで湖面を反射する光のような、夕日が消えていく瞬間の一瞬の強く淡い光のような、雪原に舞うダイヤモンドダストのような、洞窟の中で輝くヒカリゴケの輝きのような、口にしようがない色合いを目にすることができます。これは、あくまで私にとってはという話です。
作品自体は自然物をモチーフにするといった何か決まったものを描こうとしているわけではないので、見る人にとっては世界で最も美しいキャンディにも見えますし、宇宙に輝く天の川銀河の一部にも見えます。つまり、見る人に色とは何であるのか、絵画とは何であるのかという大きなテーマを問いかけてくれる作品だと言えます。
この複雑な色は、私が知る限りでは、3原色とその補色に白の油絵具を用いて生み出されています。乾燥に時間がかかる油絵具を何十層にも塗り重ねていく過程を目にしたことがありますが、薄く塗り重ねていくために、金属製のへらを用いて伸ばしているのかはぎ取っているのかわからないほど丁寧に塗り重ねられていたように見えました。
時間がどれほどかかっているのかわからないほどのその工程によって、時間すらも絵画に重ね合わせているように感じます。

絵画を通して存在を学ぶ

私は、子どもたちには絵画や美術を通して多くのことを学んでほしいと願っています。学んでほしいことは、「創造性のプロセス」と「世界をもう少し美しくしたいと願う心」です。
今回紹介している「松嶋励路展」では、作品自体がこの2つについて自然と語りかけてきてくれます。さらに作者に出会えた人は、ぜひ作品が創造されていくプロセスについて問いかけてみてください。
色がどのように重ねられていくのか、何を描こうとしているのかなど、どんな質問から会話が始まったとしても、きっと情熱的な話が聞けるでしょうし、芸術家の持つ魅力に触れることができると思います。

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