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296 大学生の薬物乱用


はじめに

大学生の薬物乱用が広がっている現実について今日の教育コラムでは少し考えてみたいと思います。下のグラフは、警視庁の調査を基にしたものです。大麻事犯の検挙人数です。注目してほしいのは、20未満と20代の検挙数が他の年齢層と比べて多いということです。
これは、日大アメフト部の事件が注目を集めていますが、こうした事案は少なからず他の大学でも、また大学以外の場所でも、発生しているということを意味しているわけです。つまり、自分の子どもが大学生になった時に薬物乱用の広がりが我が子の身近に迫っているかもしれないということも言えるのです。

参考:警察庁「令和4年における組織犯罪の情勢」より

大麻の危険性

大麻の使用は心身に有害な上、やめようと思っても自分一人では止められなくなる依存性もあります。大麻は、その成分を医薬品にも一部用いている場合があることや国によっては、合法薬物であるといった側面を持つため、依存性がないであるとか、危険性が低いというのは誤りです。
大麻の危険性を簡単にまとめると次のようなことがあげられます。

【大麻の有害性・危険性】
・脳などの中枢神経系に影響を及ぼし、依存症になるおそれがある。
・大麻に含まれるTHCという成分は、脳などの中枢神経系に作用するため、
 大麻を使用すると心身変化を及ぼす。
 〇知覚の変化・・・時間や空間の感覚がゆがむ
 〇学習能力の低下・・・短期記憶が妨げられる
 〇運動失調・・・瞬時の反応が遅れる
 〇精神障害・・・統合失調症やうつ病を発症しやすくなる
 〇IQ(知能指数)の低下・・・短期・長期記憶や情報処理速度が下がる

一時の高揚感と現実を忘れたいという思いを手に入れるために、失うものはあまり大きく、到底、こうした薬物の使用を容認することはできません。また、刑罰も厳しく栽培も含めて厳格に取り締まられています。
 〇所持・譲渡・譲受単純
  5年以下の懲役(営利:7年以下の懲役+200万円以下の罰金)
 〇栽培・輸出入単純
  7年以下の懲役(営利:10年以下の懲役+300万円以下の罰金)

さらに、今日の社会では報道に目をつけられた者は、社会的に葬られるがごとき仕打ちを受けます。その代表的な物が日大アメフト部の学生寮での大麻所持と使用に関連したものです。

再起する道を絶たれてしまう

法政大学、福岡大学、東海大学、近畿大学、福山大学などなど、ここ1年の間にその使用や問題が発覚し、次々と学生たちの大量逮捕が続いています。というよりも、大学側がその事実をしっかりと公開するようになってきたと言った方がいいのかもしれません。大学管理体制やガバナンスの在り方が問われていることへの答えなのかもしれませんが、私が感じるのは学生たちの将来への配慮という問題です。
特に日大の問題は、大学の経営陣の権力闘争と相まって特に注目を集めました。これにより私たちは、大麻所持をしていた学生の顔写真も個人情報も公の電波を通して知ることができたわけです。
問題だったのは経営陣の隠ぺい体質にあったわけです。学生の使用を早い段階から申し出ていた時に、大学経営陣の保身に走らず、適切な対応をとっていれば過度な報道により、家族や友人、過去をさらされ、未来への心配を募るような学生たちは少なかったはずです。
犯した罪に対して、本人が償い家族がそれと同等の心配や負担を負うことは仕方ないでしょうし、法治国家であればそれが当然だと考えます。しかし、今起きていることは、話題性と彼らの将来を天秤にかけて話題性を重視した報道による報道被害にも近いものなのです。若者だから守るといった理由ではなく、すべての大麻事件についてそのように扱っていない中で、必要以上に特定の学生、または特定の大学のみを大きく取り上げて連日報道するという姿勢には、人権や将来に対する配慮があまりにかけているのではないでしょうか。

現状認識

2022年に行われた関西4大学の共同調査結果をみてみると、大学生のおよそ12人に1人が大麻や危険ドラッグ等の危険な薬物を使用している人を直接見た経験があることが明らかになっています。
大麻などの危険ドラッグを入手可能かどうかを問う質問に対して、「難しいが手に入る」「手に入る」と答えた学生はなんと約40%に及んでいます。では、危険ドラッグなど含む薬物に学生はどのように手を出していくのでしょうか。
薬物乱用を始めるきっかけは、快感への追求、好奇心といったものがほとんどと思われていますが、それだけではありません。 薬物を提供する側がうたい文句に使う言葉に次の6つの言葉があります。
「やせられる」・・・実際は、体調が悪くなり食事もとれなくなるだけ
「自信がつく」・・・実際は、ただの勘違い、幻想、幻覚
「充実感がある」・・実際は、気のせい、脳障がい起きている可能性も
「スカッとする」・・実際は、一時の感覚の後には自我を失う可能性も
「元気がでる」・・・実際は、分泌物の作用で一時の幻覚
このような、実際には大きなリスクを負うようなことを隠した危険な誘い言葉についのせられ、危険な薬物とは知らずに手をだしてしまうケースもあるのです。
子どもたちが様々な生きづらさを抱える中、苦痛を和らげたり、高揚感や現実からの逃避を求めて薬物を使用するケースがあるということが一番最初に紹介した年齢層別の検挙人数になっているのです。
子どもたちは、インターネットやSNSを使う時間も機会も多く、薬物乱用のニュースや危険な情報を目にすることも多いのです。加えて、大学生の置かれている状況は、友人や先輩などといった周囲の人から誘われることも加わってきます。それは、薬物に触れる機会が身近にある状況にいるということを意味するのです。

薬物乱用防止教育
薬物乱用防止教育は、小学校、中学校、高校とそれぞれの発達段階において適切に、保健体育の時間なども用いて進められていくべき内容であり、現行の指導要領においてもその定めがあるものです。
主に危害に対する正しい知識の普及啓発を目的としているわけですが、児童生徒等が薬物乱用の現状や心身への弊害等を身近な問題と捉えられるかが重要な視点となります。また、薬物の誘惑に対する対処法も重要です。
今後は、刑罰や社会的な制裁の重さやその後の人生の修復がいかに難しく、険しい道となるのかという現実と向き合う教育もさらに重要になるでしょうし、社会復帰の取り組みの実態についても学ぶ必要があるのかもしれません。
いずれにしても、友人に依存傾向の強い年頃の子どもたちが、しっかりと「断る」勇気と正しい判断をとることの大切さを学ぶ機会は、様々な状況下で育んでいくことができるわけです。私たち大人も難しいわけですが、断る勇気をしっかりと伝えていくことを大切にしていきたいものです。

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