盤上の向日葵:柚月裕子:圧倒的な「オチ」を味わってください

「盤上の向日葵 上・下」(129,130/2020年)

真剣師とは賭け将棋をする人たちのことを指すようです。いわゆる裏稼業、羽生さんの解説によると、昭和の時代には実在していたようですね。表のプロ棋士の世界と真剣師の世界が交錯する、緊張感あふれる犯罪ミステリです。将棋の世界だからこそ成立する、キリキリとした世界観、痺れます。

基本線はプロ棋士を諦めて刑事になった若手と、コンビを組むクセの強いベテラン刑事の犯罪捜査ミステリです。超王道なところが潔い。柚月、ここで妙な仕掛けはしません。山中で見つかった死後約3年とみられる白骨死体、その死体と一緒に埋められていた500万円相当の「名匠の将棋の駒」の謎を追って、日本全国を駆け巡ります。一つづつ、丹念に、事実を追って、地道に駒の履歴を追っていく様を、丁寧に描きます。こういうところをしっかり描くのが柚月の力なのだと思います。

そして、もう一つのラインが異端の天才棋士・上条桂介の物語。不幸な生い立ちから這い上がる過程の中で、伝説の「真剣師」と出会います。

まあ、「犯人」は上条桂介なのは確定です。でも、もしかしたら上条じゃないのかもしれない…という気持ちもゼロにはなりませんが、まあそれは置いといて、どういう運命がこの事件を起こしたのか、そこがポイントです。何がどうなって、誰がどうやって、この結末になるのか?

警察の捜査が進むたび、事実が徐々に明らかに。そして、上条の物語もクライマックスを迎えます。そしてラストの驚愕の「オチ」が、あなたを待っています。こんな圧倒的な「オチ」、読んだことがありません、、、呆然。

将棋に関する知識が皆無でも問題無く楽しめるのが傑作の証でしょう。もちろん、将棋の詳しい人は、本当に面白いのかと、羨ましい。1対1の、人と人が自分の力のみを使って真剣に戦う様は、熱いというよりは冷たくて、冷酷でした。

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