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沢田研二 2023年6月25日 さいたまスーパーアリーナライブ評

沢田研二は樹齢75年の大樹である。伊集院静の様だが私はそう感じる。生命感溢れる樹木には鳥や虫が集い生態系を形成していく。
我々ファンは、樹齢75年の生き様に魅了され、その「力」を「感動」を得ようと、因縁の地、さいたまスーパーアリーナに集ったに違いあるまい。今回のライブはWOWOWでも放送されたのと、2万人規模の会場ということで、様々なジャンルの方々が訪れたということで、ツィッターから様々なblogで感想が溢れかえっていた。私は違う角度から分析してみたいと思う。
 私は、コンサートに入る前に、元ザ・タイガースのメンバーはライブの中盤あたりに参加するのではないかと考えていた。会場が暗転し、ステージを見ると勢揃い!まさに圧巻である。一曲目は「シーサイド・バウンド」。タイガースのライブには必須のナンバーである。「モナリザの微笑」に60年代の郷愁が胸を過ぎる。芸術的センスが集約された名曲である。その時代に私は産まれていないのに、懐かしさで胸が一杯になる。そして「落葉の物語」である。どこか童謡のような過ぎ去った幼い日々を思い出させる。「銀河のロマンス」は東宝映画『ザ・タイガース 世界はボクらを待っている』、メンバー主演第一弾の主題歌であるが、映画の光景が眼下に浮かんでくる。そして「花の首飾り」である。ステージにあるモニターに歌詞が大写しになる。本来は加橋かつみが歌うべき曲だが、頑なに参加を拒絶したかつみへのメッセージの様に思えてならない。「また、あの頃に戻ろう。2013年はできたやないの」。ジュリーの声が聞こえてきそうである。そして、森本太郎が居たら外せない「青い鳥」。そして会場が大興奮の渦に包まれる「君だけに愛を」。しかし、沢田さんも虎の着ぐるみで歌うのも大変だろうなあとジュリーの体を思いやる第一部であった。
 そして第二部までのBGMに、「太陽にほえろ!」や、「傷だらけの天使」のテーマソングが。コンサートが始まる前のBGMは「我が窮状」等の自身の曲だったが、井上堯之バンドの曲が流れるとは。そして萩原健一への追悼の念が会場に流れているように私には思えた。言霊といえばいいのか。会場には井上堯之さんも、萩原健一さんも確かにジュリーの勇姿を見守っていたのではないか。私はそう感じた。擬似的にとは不遜ではあるが、沢田研二と同じ会場で物故した仲間を甦らせるのは、ある意味この方法しかない。さいたまスーパーアリーナが60年代から現在まで、時空を超えて沢田研二のヒストリーを包括的に、違う側面を懐古させる一時的な装置になったとは考えすぎか。
 そして第二部はヒット曲の嵐である。スタイリッシュな白い衣装の沢田研二。還暦の際に行われたジュリー祭りを彷彿とさせるオープニング、「そのキスが欲しい」。正に会場が興奮の坩堝に。これまでの「まだまだ一生懸命」のセットリストを完全に無視した、嬉しい展開である。そして「おまえにチェックイン」で会場の時代は黄金の80年代前期に。そして意外だったのは、今回のツアーのセットリストに無かった「サムライ」である。そして、「ダーリング」、「勝手にしやがれ」、「時の過ぎゆくままに」であるが、4曲連続、阿久悠作詞、大野克夫作曲コンビの曲が続くというのは珍しいのではないか。
その後の選曲を踏まえても「ミニジュリー祭り」だなと、1人微笑んだ次第。そしてアンコールで河内音頭を博多山笠・中州流の長法被を着ながら歌うジュリーから聴けるとは思わなかったのも事実。南野陽子や、いしのようこなど、音楽劇で共演した仲間をステージに上げるのも粋の極みだと感じた。そしてザ・タイガース時代のライブナンバーであった「Do You Love Me」やストーンズの「(I Can't Get No)Satisfaction 」を歌い、最後に安井かずみ作詞の「ラヴ・ラヴ・ラヴ」で締めるなんて夢のようではないか。このライブが映像で残ったことも夢のようである。
 沢田研二はグループ・サウンズ時代を含めて60年代、70年代の芸能界における「象徴」の様な存在である。そして奇跡の様にザ・タイガースのオリジナルメンバーは全て存命。これからも沢田研二は我々に「夢を見せてくれるだろう。そう実感したライブであった。
※セットリスト
第一部
01.シーサイド・バウンド
02.モナリザの微笑
03.落葉の物語
04.銀河のロマンス
05.花の首飾り
06.青い鳥
07.君だけに愛を

BGM:「太陽にほえろ!メインテーマ」、「傷だらけの天使 テーマ」等が流れる。

第二部

08.そのキスが欲しい
09.おまえにチェックイン
10.サムライ
11.ダーリング
12.勝手にしやがれ
13.時の過ぎゆくままに
14.危険なふたり
15.6番目のユ・ウ・ウ・ツ
16.TOKIO (オリジナルVer.)
17.LUCKY/一生懸命
18.ROCK'N ROLL MARCH
19.時計/夏がいく
20.君をいま抱かせてくれ
21.愛まで待てない
22.いつか君は
-----Encore----
23.河内音頭(アカペラ)
24.タイム・イズ・オン・マイ・サイド (Time Is on My Side) ※original:ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)
25.Do You Love Me ※original:THE DAVE CLARK FIVE
26.(I Can't Get No)Satisfaction ※original:ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)
27.ラヴ・ラヴ・ラヴ


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