格闘技は概念で戦うものだ

みなさんこんにちは、dmaggotです。

さて、今日Twitterをなんとなく見ていたら、こんなものが流れてきました。

あの世界のピコ太郎のマネージャーの古坂大魔王氏がこんなことをおっしゃっていたのです!

自分は大学で哲学を専攻して学位を取り、ノーギBJJ格闘家なのです!!

これは人生必勝間違いなし!!!!

ちなみに、私の友人sukesan1984とPodcastをやっており、毎回哲学的な話をしているのでぜひ聴いてください。絶対無駄な時間を過ごさせないと思います。

現在の最新話Ep.43はこちら。

ドゥルーズの哲学

さて、僕は最近ジル・ドゥルーズという哲学者に興味があって、本を読んでいます。

『哲学とは何か』という本を読んでいるのですが、そこで格闘技にも通じるすごいことが書いてました。

単純な概念というものは存在しない。あらゆる概念は、合成要素を持ち、それらによって定義される。
最初の概念ですら、複数の要素を持つということだ。

簡単に説明しますと、概念とはさまざまな要素が集まってようやく概念としてなる、ということです。

例えば、「無知の知」という比較的有名なソクラテスの言葉がありますが、これは背景として「本当に自分が知っていることとは何だろうか」「他の人は知ったかぶりをしている」「自分は自分が無知であるということを知っているから優れている」というような、さまざまなソクラテスの思考の背景・成り立ちがあってこそようやく出来上がっているものなのです・

それは、例えるならば、鼎(かなえ)。

さまざまな不可欠の要素が土台としてあるからこそ、全体として成り立っているのだ、ということです。

これがどのように格闘技に通じてくるのでしょうか?

格闘技はディテールが詰まっている

格闘技、その中でも私は寝技のノーギグラップリングをやっているのですが、これはディテール、つまり細かい要素の詰め合わせです。

例えば、三角絞め。

まず、足を深く入れて膝裏でクラッチします。相手の腕を流します。自分は90度体を曲げるか、相手の頭を引きつけます。頭を持つときは頭の上を持ってテコの原理で力をうまく伝えます・・・・などなど。

三角絞めという概念は、たくさんの要素で成り立っているのです。

その要素を完璧に再現したとき、三角絞めという概念も完璧に再現され、相手がタップするのです。

どの要素を抜かしても、三角絞めという概念は完成せず、つまり現前しません。どれがスタートか?というのもなく、全ての要素が集まってこそなのです。

さらに1つメタ的に考える

さらに、三角絞めを要素として考えて、1つ上にメタ的に考えましょう。

三角絞めに入るために何が必要か?クローズドガードから入るためには、相手の腕を拘束して自分の足を出してこなければならない。そのとき頭を上げさせてはならない。さらには、ヒップスローを試みて相手の意識を散らせなければならない・・・。三角絞めに至るためにはこれまたさまざまな要素が並列し、必要になってきます。

また、三角絞めだけにこだわっていては読まれるかもしれません。スイープして腕十字を狙う、アームドラッグをしてバックを狙う、など、さまざまな要素が見えてくるでしょう。

つまり、格闘技でタップを取るという概念を完成させるためには、いろいろな技要素として存在しており、さらにその技もディテールとしての要素を持っているのです。

格闘技の概念は幾重にも重なり合い、脳の神経細胞ばりの非常に複雑なネットワークを築いているのです。

概念を作るということ

ジル・ドゥルーズは、哲学を「概念を作るものだ」と定義しました。言葉を通じて、真理を正確に描写するための概念を作り出すということです。

私はこれは全くもって正しいと思っているのですが、格闘技も同じだと思いました。

格闘技は「最初は(全くの初心者にとっては)」描写できぬカオスですが、我々は先人の知恵を借りつつ、概念をもって明確に描写していきます。その概念を、いかにより正確に理解し、体に覚えさせて、現前させるか、というのが重要だと思います。

なぜCraig Jonesは強いのか?

世界トップレベルのグラップラーが集まるADCCでバンバンタップを取ったCraig Jonesはなぜあれほど強いのか?

私は以前「Craig Jonesシステムと言って良い」と書きましたが、まさにCraig Jonesの中で非常に非常に高度な概念が完成しているのです。

「こうきたらこう、あれがきたらそれ、次はこうなってあれでヒールフック」というような、我々の並レベルとは全く違う概念で試合を見ているのです。

自分もただあのサドルエントリーをパクってやってみていますが、うまくいきません。

それはカオスとして存在する格闘技に対して、高度な概念を得られていないからです。

より高度な概念を築くべし

概念は、一つの要素を獲得してもうまく機能しません。私がCraig Jonesのヒールフックの極め方を知っただけではあまり強くならないでしょう。

螺旋階段のように、全体の密度を上げていくのが重要なのではないでしょうか。

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