見出し画像

飛び込む春

快晴の朝、桜がきれい。
すう、と息を吸い込むと、春のぬるい空気と一緒に何かが口に飛び込んだ。

ぺっ、とティッシュに吐き出して、それがひとつの生命だったと知る。
ごめんな羽虫、わたしなんかの口に飛び込んだせいで。わたしが息なんかしていたせいで。

申し訳なさと共に気持ち悪さを覚えて、会社に着いた瞬間、3回口をゆすいだ。


春はどうしたって息を大きく吸い込みがちだ。
冬の冷たい空気はツンとするから、あまり意識的に息を吸い込めない。

もんやりと生ぬるい春のにおいは呼吸がしやすくて、ついつい、すうすう深呼吸。
なぜか律儀に口から吸って、鼻から吐いて。


春は飛び込む季節。

新しいどこかに入ったり、新しい何かを始めてみたり、自分の視界を広げやすい季節だと思う。
単に入学や入社の時期だということもあるが、寒い冬を越えて暖かくなった喜びは、新しい環境に飛び込むワクワク感を増幅させやすいのだろう。

慣れた環境を飛び出す不安はいつだって大きい。
でも春だもん。暖かくなったもん。えいやー!なんてノリと勢いで、真っさらな人生に飛び込んでいくのも面白い。


ただ、新しいところがすべて光り輝いているかというと、残念ながらそんなことはない。
人生何が起きるか分からないのよ。

他人やモノを盲信すべきではないし、何かあった時に帰れる居場所は自分で持っておくべきだなと感じる。
口に飛び込んだ不運な羽虫みたいに、一寸先は闇、なのかもしれないから。


春に何かと環境を変えがちなわたしだ。
ワクワク感や焦燥感に背中を押され、その度に周りの人たちに心配と迷惑とお世話をかけてきた。
それでもわたしはどうにか前を向き、どんどん真っさらな人生へ飛び込んでいく。
妙にキラキラしてるよな、キラキラしようとしているのかな。

周りの人たちへの申し訳なさと共に、自分への気持ち悪さを覚える。
3回口をゆすいだら、誰もが羨む素敵な人生が待っていたりしないかな。

最後まで読んでいただきありがとうございます!ぜひお友達になってください!!