見出し画像

異文化セミナー『日本人と働こう』

本棚を整理してたら面白いものを見つけまして。
元上司のヘレンが日本に赴任したときに受講した、異文化セミナーのレジメです。
セミナーのタイトルは、“Work With Japanese”
もちろん私自身はそのセミナーに参加していません。
ヘレンが「興味があったら読んどいて」と、レジメのコピーをくれたんだった。
で、興味がなかったので、読みませんでした。

今あらためて読んでみたら、これがなかなかバカバカしく、本棚の奥に埋もれさせとくのはもったいないシロモノでした。
そこで、その全文を日本語訳することにしました。

2008年にイギリス人講師が作成したレジメです。
セミナーの配布資料ですので、内容も構成も粗いですが。
当時、日本で初めて働く外国人がこういう研修を受けていたのか、と感じていただければ幸いです。

基本的なエチケット

✅ 他人の体に触れてはいけません。握手は、初回だけ許されますが、それもしないほうが無難でしょう。キスやハグなどもってのほかです。
✅ 他人を指差してはいけません。見知らぬ人に対してでさえ、指を差すのは失礼な行為です。ましてや、話し相手を指差すのは論外です。
✅ 人前で鼻をかむのはやめたほうがいいでしょう(とくに女性の場合)。鼻をかむより、鼻をすするほうがマシなのです(日本では)。

その他の Don’ts
✅ “You are wrong” と言う。
✅ “A or B” 形式の質問をする。
✅ “Why?” と尋ねる。

ビジネスでのエチケット

1) 初対面の人と会うとき
✅ その人の性格、経歴、およびヒエラルキー上の序列について、できるだけ多くの情報を集めること。
✅ あなたの経歴と資格について、あなたより上席者の口頭で紹介してもらいましょう。

2) 名刺の交換
✅ 上質な名刺入れを携帯すること。名刺を財布の中に入れてはいけません。
✅ 名刺は常に十分な枚数を持ち歩くようにしましょう。
✅ 名刺は両手で手渡し、両手で受け取ります。
✅ 名刺を受け取ったら、まず名刺を見て、一呼吸おいてから相手の目を見ましょう。
✅ 相手の序列を把握するため、名刺に書かれた「肩書き」をよく覚えておくこと。
✅ 他人の名刺をズボンのポケットに入れないこと。
✅ 他人の名刺の上に書き込みをしないこと。
✅ 会議中は、受け取った名刺をテーブルの上に置いておきます。

📝 重要!
日本人にとって、名刺は “顔” です!

3) ミーティングを開くとき
✅ アジェンダ、プレゼン資料、参考資料など、すべての書類を「事前に」出席者に送付し、彼らが全部に目を通す時間を与えるようにしましょう。

📝 重要!
覚えておこう! 日本人はサプライズが大っ嫌い!

食事でのエチケット

日本の食事には、「グループのお皿」と「個人のお皿」とがあります。

1) グループのお皿
✅ グループのお皿とは、全員がシェアする料理を盛った大きめのお皿のことです。
✅ グループのお皿からは、お箸の反対側を使って料理を取り、個人のお皿に乗せます。

📝 重要!
一番おいしそうな部分を取りにいってはダメ!

📝 重要!
最後のひと切れを取ってはダメ!

2) 個人のお皿
✅ 個人のお皿には、数種類のソースが入った「小部屋」に分かれているタイプのものがあります。
✅ どの料理をどのソースに ”dip” すべきかわからないときは、誰かに尋ねるのもいいでしょう。
✅ どうしていいかわからなかったら、日本人のやりようを観察してマネしてください。

📝 重要!
いろいろ質問してあげて!
あなたの日本人同僚は、あなたに日本食を説明するのが大好きなんだから!

3) お箸の作法
✅ お箸を空中で “wave” したり、お箸で人を指差してはいけません。
✅ 人から人へお箸で料理を受け渡してはいけません。
✅ 食べていない時は、お箸を「お箸置き」の上に置きます。お箸置きがない場合は、お箸を包んでいた紙を折り、あなたのお箸置きを作りましょう。

📝 重要!
日本人は必ず、あなたのお箸の使い方について何かしらコメントしてきます! 彼らに悪意はありませんから、ムッとしてはダメ!

4) 日本食を楽しむ秘訣
✅ あなたは、料理の正体が不明で食べるのが恐ろしいと感じるでしょう。でも、勇気を出して、できるだけ多くの種類の日本食に挑戦してください。あなたの日本人同僚は、あなたがどれくらい日本食を楽しめるかによって、あなたを評価しているのです。
✅ ある料理に興味をもったときに、”What is this?” と訊くと、日本人に不快感を与えるおそれがあります。
”This looks interesting” または “What is this made from?” と訊くようにしましょう。
✅ 日本の料理の何品かは、室温で提供されます。「冷めとる!」と怒ってはいけません。

📝 重要!
気をつけて! 日本人は、あなたの反応を楽しむために、“difficult” な日本食を食べさせようとすることがあります!(とくに、あなたが男性の場合)

お酒でのエチケット

✅ 自分のグラスにビールやお酒を注がないこと。お酒を注ぎ合うのは友好と敬意の表明です。自分で注ぐのは、相手を嫌っている態度になってしまいます。
✅ 誰かがあなたにお酒を注ごうとしたら、グラスを持つか、せめてグラスに手を添えて、軽くお辞儀をしましょう。
✅ あなたのグラスが満杯のときに誰かが注ごうとしたら、一口飲んでからグラスを差し出すようにしてください。

📝 重要!
もう十分飲んだ、と思ったら、グラスを常に満杯にしておくこと!
少しでも飲んだら、またすぐ注がれてしまうから気をつけて!

社交でのエチケット

同僚とのディナー、ゴルフ、旅行等は、人間関係の構築に不可欠な社交活動です。
仕事のパートナーとは、まず「人として」良好な関係を築くことが重要、と日本人は考えます。

社交の場ではリラックスした雰囲気になり、日本人はつい「本音」で仕事の話をしたくなります。職場では、本音で話していないからです。
キーパーソンが仕事の話を始めたときが、ゲーム開始の合図です。
彼がリードする本音に耳を傾けつつ、メンバーの反応を観察しましょう。
本音トークに参加してもいいですが、一線を越えてはなりません。
本音トークにも、暗黙のルールがあるのです。
それは、彼らの「逃げ道」を塞いでしまわないことです。

📝 重要!
覚えておこう! 本音トークに結論は不要! その場にいる全員が安心できればいいの!

📝 重要!
覚えておこう! 本音トークは、仕事の話と見せかけて、じつはその場にいない「人の話」なの!

日本人の社交活動には、しばしば “niji-kai” というものがあります。
これは、ディナーのあとに、バーや “karaoke” に行くことを意味します。
もしあなたが疲れていて、家やホテルに帰りたい場合は、ベストタイミングでそう伝えましょう。
それは、皆がレストランの外に立ってタクシーを待っている間です。
このタイミングを逃すと、niji-kai にほぼ強制的に連行される羽目になります。

ディナーの翌日、あなたは
「昨夜はすばらしい時間をありがとうございました」
と、出席者たちにお礼を言わなければなりません。
ただし、昨夜の出来事を話題にしてはいけません。
例えば、田中さんが昨夜「壊れていた」ことなどを、その場にいなかった人に話してはいけないのです。

📝 重要!
ディナーの席で言ったこと・やったことを、後で持ち出してはダメ!
とくに、アルコールを飲んでいた人の言動は忘れること!