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午前四時、焼きうどん

イギリス土産の冷めた紅茶を飲みながら、換気扇の下で煙草を吸っている。
いま、焼きうどんを作って食べたばかりだ……。

ふた月前から、愛犬の介護が始まった。
最近では自宅で毎日250mlの点滴治療をしている。(小型犬にはなかなか多い量だ。)
これが結構大変で、点滴をした後、一時間かそこらでトイレに外へ連れていかないといけない。そのために点滴をしているのだから。

寝て、起きてトイレ、おやつ、また寝る……その繰り返しが十二時間以上続く。それ以外にも外にトイレに連れていかなくてはならないし、結局、自分が寝ている間以外は、目を離せない状態だ。

ずっと元気な犬で「走りながら死ぬんじゃないか」、と笑っていた日々が懐かしい。やはり、我が家の犬だけ特別なわけじゃなくて、ちゃんと老化はやってくる。

いま、午前四時。妻と交代するまであと一時間。それまでの空腹に耐えかねた。シリアルに牛乳をかけて誤魔化すか。それとも納豆ご飯にしようか。低カロリーで腹を満たす術を考えたが、なぜか冷凍うどんがあることを思い出してしまった。

それに春キャベツの残りもある。10センチほど長ネギもある。シャウエッセンだってある。

マルちゃんの焼きそばの粉末ソースならなぜか大量にある。

気がつけが包丁でキャベツを粗く刻んでいた。

目を覚ますには夜食を作るのが一番いい。寒い夜中には辛いのがいい。

ラードをフライパンに5センチ。そこに豆板醤を多めに。香りが出たらみじん切りのネギ。そこにざくぎりの春キャベツを加える。
解凍した讃岐うどんも放り込み、ガッと炒めたら、粉末ソースを振り込む。
なんだかやる気に満ちてくる。
シャウエッセンを加えるのは自制した。これは野菜焼きうどんなのだ、そう思い込む。
ニンニクを少し入れたら、キッチンが夜中とは思えないいい匂いになってしまった。

出来上がったのでそれを皿に移し、菜箸で食べた。
美味い。辛い。にわかに額に汗が浮かぶ。

あっという間に食べ終わり、火照る口の中をアイスクリームで冷やす。ドラえもんボールなるソーダ味のアイスだ。
これは半分食べきれなくて、冷凍庫に残っていたのを見つけてしまった。
これも美味い。というより、美味く感じる。焼きうどんのせいだ。

たいていのアイスは、蓋付きであっても残しておくと味が劣化するのを否めないが、どうしてこれは味をキープできるのだろうか? ドラえもんボールはプラスティックのメロンの形をした容器と同じ作りだ。タケコプターの付いている蓋がいいのかな……そんなことを考えながら、煙草を吸っている。
すぐに口の中の火照りは去った。

いま、外は冷たい雨。予報ではもうすぐみぞれか雪になる。外でトイレする犬には厳しい朝だ。

愛犬はまだ眠っている。
目が覚めてトイレに連れていくのは正直面倒だ。家の中でできるように躾けなかった自分たちが悪い。
だけど、トイレに行きたいと起きてくるだけで、実は嬉しい。
目覚めなくなることのほうが、ずっと悲しいから。

ああ、もう四時半か。
また朝がくる。新しい1日が始まる。
それで、今は十分。


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