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四月になれば彼は

豪徳寺に我が家の犬が仔犬の頃からお世話になっている動物病院がある。
自転車で十五分くらいのところだ。
今日、新しい薬を処方してもらいに一人で出かけた。
毎日の自宅点滴治療の効果がうっすらと表れたのはいいが、お腹がゆるくなってしまったので、お腹の薬。
それを受け取り、駅の先の古着屋を覗き、世田谷線の線路をわたり「まほろ堂蒼月」というお気に入りの和菓子屋で季節のお菓子を買った。
ささやかな自分達へのご褒美だ。

その帰りに鮮度のいいことで有名な八百屋(2階は野菜レストランになっている)を物色。サラダで食べれると書いてあるパセリとマッシュルームとキャベツを買った。

帰ってから羽根木公園へ散歩に出かけ、顔馴染みの飼い主さんたちに病状を話す。皆さんの名前も知らないが、そういう顔馴染みの人と話すと多少気が紛れるし、愛犬もなんだか嬉しそうで、みんなと一緒に歩いたりする。

自転車で帰ってから、買ってきた緑も鮮やかなパセリをブレンダーに千切って入れた。ニンニクと塩、ブラックペッパー、オリーブオイル、後からマッシュルームも加えた。
春らしいペーストが出来上がった。
それをソーセージと一緒に温め、茹でたパスタ(キャベツも一緒に火を通した)と混ぜ合わせるようにする。
オリーブオイルを加える。塩胡椒で味を整える。
出来立てを頬張る……と、春の味がした。

もう少しで四月になる。
あと二週間もすれば桜が咲く。

数値が下がってきたのは嬉しい……けど、油断はできない。
夜中の二時過ぎに、近くの小さな公園で愛犬にうんちをさせながら、その形が戻ってきたことをマグライトで確認し、エチケット袋で拾う。手の中に感じる排泄物の温かみは生きている証だ。

用を足したら、抱き上げ急いで部屋に戻る。またフードをあげてからお茶を啜る。
傍の寝床では、彼はもう寝息を立てている。
四月になれば、もっと良くなってくれますように。そう祈りながら、ほうじ茶を啜る。


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