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    Amazonによる家電等のステマレビュー大量削除に巻きこまれて消された書評たち。

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『ユニコーンオーバーロード』 私的クラスtier表(攻略用)

今更だけど。こんな感じのプレイでの評価になります。 難易度:EXPERTかZENOIRA その他縛り:雇用なし、アイテムなし、チャージ技なし、フリーステージ周回なし これらの縛りを無しにすれば、適当に組んでも攻略できる。 オン闘技場はコイン稼ぎ用いしか使わなかったので、攻略目線です。 どのみちやりこんだわけではないので、雑な評価です。 自己満記事ですが参考になれば幸いです。 固有クラス ■アレイン(ハイロード) このゲーム、剣使いがとにかく弱い。 その理由

    • 結局「消費社会の甘えた若者」論:『露出せよ、と現代文明は言う: 「心の闇」の喪失と精神分析』

       独創性もあるが、要旨だけみれば「消費社会の甘えた若者」論から脱しきれていないのが物足りない。  以下はほとんど容赦のない批判なのだが、それでも★5にした理由はまず、ふつうに面白いこと。本書では、ハイデガー、ドゥボール、アガンベンらの哲学・思想や、本邦にはまだ知られていないラカン以後のフランス精神分析家の議論などが、著者の独自のパースペクティブのもと繋げられて、さまざまの社会的文化的事象を題材にしながら、思考が自由に展開していく。著者の筆運びのスピードに乗り、夢中になって読

      • 断章の寄せ集め:『1990年代論』

         本書は、1990年代社会の各側面に関する総体的でスタンダードな記述をめざしたものでは全くない。主観性・専門性の強いエッセイの寄せ集めという感じで、全体の俯瞰を試みる構成にはなっていない。解説もなく専門用語が出てくることも多い。このレーベルからは同じコンセプトで『1980年代』も出ているが、本書には「論」とタイトルについているのは、そのことに自覚があるからだろう。とはいえ、正直いって「論」ですらない単なる自分語りが目につく。たしかに、体験記や証言でも読み物としてはそれなりに面

        • 沖田雅『先輩とぼく』感想

           この小説が1巻の時点で行き詰まりかかっているのは、読めばすぐ分かる。  残念ながら、つばさ先輩というキャラクターの魅力・また先輩と「ぼく」の関係性萌え以外に、訴えかけてくるものが何もないのである。早々にクラスメイトや転校生という新キャラを大量に出してくるも、彼らを生き生きと動かせる物語を作ることには完全に失敗している。  そもそもの問題点のひとつは、先輩と「ぼく」がすでに恋人であることだ。成り立ての初々しいカップルでもない限り、この時点でラブコメとして転がすのは並大抵の技

        『ユニコーンオーバーロード』 私的クラスtier表(攻略用)

        • 結局「消費社会の甘えた若者」論:『露出せよ、と現代文明は言う: 「心の闇」の喪失と精神分析』

        • 断章の寄せ集め:『1990年代論』

        • 沖田雅『先輩とぼく』感想

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          16本

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          登場人物による文明批評やインテリ談義を楽しむ本。しかし過剰な露悪趣味には少々辟易:ウエルベック『服従』

           浅田彰の書評などで元々興味があったため手に取った。主人公は近代文学の研究者であり、無気力なノンポリ中年独身男であり、女子学生を食い物にしているが性生活に行き詰まりを感じている。本作では、イスラム化という社会的変化と、それに伴って変化していく主人公の生活や、研究対象としているジョリス=カル ル・ユイスマンスという作家をめぐる思索などが、並行して語られていく。  作家、政治家、ジャーナリストといった固有名詞が実名で大量に出てくるが、その辺りが十分に楽しめなかったのは残念。大量の

          登場人物による文明批評やインテリ談義を楽しむ本。しかし過剰な露悪趣味には少々辟易:ウエルベック『服従』

          「事件」という概念をさまざまな観点から論じることを通して、ジジェク自身の思想が概説される:『事件! 哲学とは何か』(河出ブックス)

           結構大事なことだと思われるので、まずは訳語について。eventが「事件」と訳されているが、日本語の現代思想系テクストでは「出来事」という訳語がほぼ定着している、立派な術語である。しかし、本書はガチガチの学術書ではないし、驚きを込めた「事件」という表記の方がふさわしい箇所が多々あるため、こちらを選択したのも頷ける。他方、「俳句」が扱う(とジジェクは捉えている)純粋で無意味なeventは、「出来事」という日本語の方がふさわしいだろう。そういうわけで、本書の「事件」という言葉はよ

          「事件」という概念をさまざまな観点から論じることを通して、ジジェク自身の思想が概説される:『事件! 哲学とは何か』(河出ブックス)

          『 ハリー・オーガスト、15回目の人生』(角川文庫)

          ■良かった点  戦前生まれの主人公は「カーラチャクラ」と呼ばれる転生者で、20世紀の大半を生き、死ぬ度に人生をやり直すことになります。人生の度にいろいろな職に就き、国をめぐり、人に出会い、歴史的事件を目撃することになります。数あるループものでも、人生を丸ごと繰り返すというのはあまりないと思います。  これらを詰め込むには、作者が相当の勉強をしたに違いありません。こうして本作は時間的にも空間的にも大きな広がりをもっており、ループものという設定を存分に活かせていると思いました。(

          『 ハリー・オーガスト、15回目の人生』(角川文庫)

          マンガ中心の特集:『ユリイカ 2016年11月号 特集=こうの史代』

           『この世界の片隅に』の劇場アニメ公開に合わせた特集だが、劇場版を論じているのは土井伸彰、藤津亮太の2名しかいないので注意。あとは片淵須直監督、主人公すずを演じたのん、それぞれに対するインタビュー記事がある。  残りは特集名にあるとおり、マンガ作品を論じた論考を中心に構成される。やはりというか、話題の中心は『夕凪の街 桜の国』および『この世界の片隅に』にあるが、他の作品もまんべんなく言及されている。  こうの作品における「日常」とは何か、政治性/非政治性、マンガ表現など、重要

          マンガ中心の特集:『ユリイカ 2016年11月号 特集=こうの史代』

          ディストピアに見せかけたユートピア漫画:『オンノジ』

           『このマンガを読め! 2014』をパラパラめくっていたら目に止まったので。主人公はおそらく中学生の女の子。ある日突然に自分以外の存在が消えてしまい、ギャグの範囲ではあるが不可解(シュール)なことが起こるようになった世界でのぼっち生活を4コマ形式で描く。途中から人語を話すフラミンゴと出会うが、彼はもともと男子中学生だったらしい。それによってラブコメ方面に逸れることはないが、主題は彼との共同生活にシフトしていく。   ■静かな終末というユートピア  本作の設定は、2000年前後

          ディストピアに見せかけたユートピア漫画:『オンノジ』

          音楽業界の今を概観するのに適した良書だが、主張はおかしい:『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)

           テレビタイアップと露出を通じた90年代のCDの売り方。そうしたCD時代の終焉と、ライブを主な収益源とする新しいビジネスモデル。AKBによるオリコンチャートの「ハッキング」。ヒットの実情を正しく反映した総合チャートの模索。趣味の細分化と国民的ヒットの消滅。  ……などなど、大筋は何となく誰もが分かっていることではあるけど、インタビューやデータで裏づけをしっかり取ったうえで、ストーリー仕立てで読めるように音楽業界の現況をまとめている。それだけでも新書として十分な役割を果たしてい

          音楽業界の今を概観するのに適した良書だが、主張はおかしい:『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)

          「人格崇拝」と「合理化」の行きすぎが、現代人を自己コントロールの檻に閉じ込めている:『自己コントロールの檻』(講談社選書メチエ)

           本書は現代社会(といってもこのレビューの20年近く前だが)を、①〈心理主義〉、②〈人格崇拝〉、③〈マクドナルド化〉(合理化)という3つの特徴が、過剰に発達してしまった社会として捉える。社会の〈心理主義〉化とは、「さまざまな社会的現象を個人の心理から理解する傾向や、自己と他者の「こころ」を大切にしなければならないという価値観、そのために必要な技法の知識が社会のすみずみに行き渡ってきている」ことを指す。〈人格崇拝〉とは「個人の人格を尊重すべきものとみなす」ことであり、近代以降の

          「人格崇拝」と「合理化」の行きすぎが、現代人を自己コントロールの檻に閉じ込めている:『自己コントロールの檻』(講談社選書メチエ)

          少なくとも、吉本隆明の思想そのものの入門書を求めている人にはまったく向かない:『永遠の吉本隆明【増補版】』

           本書は書き下ろしでなく、語り下ろしであり、かなり散漫な内容となっている。全体的に、とにかく遠回りというか、吉本隆明の思想そのものに一向に切り込もうとせず、世代や時代といった外的文脈に関連づけたり、自分の思い入れや異論を思いつくがままに挙げたり(それも「ここが違うかなと思いました」とか言うだけで全然深まらない)、ほかの思想家や小説家に話題が移ったりといったことに終始し続ける。とりわけ著者のやや保守寄りの性格がやたらに出しゃばってきて、ソ連批判とか戦後左翼批判とか大半の読者は興

          少なくとも、吉本隆明の思想そのものの入門書を求めている人にはまったく向かない:『永遠の吉本隆明【増補版】』

          一見スマートな見取り図にセンセーショナルな題材が目を引くが、雑すぎる議論で台無し:『モノ・サピエンス:物質化・単一化していく人類』(光文社新書)

           この人の著作は前にも読んだことがあるが、ニューアカや東浩紀に影響された哲学専攻者の思いつき現代社会語り、という感じ。そもそもが生命倫理畑の研究者なのに大陸系現代思想に首を突っ込み、上澄みの更に上澄みをすくって「どうです? 簡単でしょ?」と説明してしまうスタンスが気に食わない。明らかに対象への敬意がなく、「なんだこんなもんか」と思わせる書き方をする。当の思想家自身の著作や、せめて本格的な入門書を1、2冊でも読めば、ひどくいい加減な取り上げ方をしていることが分かるだろう。  ま

          一見スマートな見取り図にセンセーショナルな題材が目を引くが、雑すぎる議論で台無し:『モノ・サピエンス:物質化・単一化していく人類』(光文社新書)

          行き過ぎた文化還元主義は妄想と見分けがつかない。:『砂の文明・石の文明・泥の文明』(PHP新書)

           世界各国の文化についての豆知識は豊富なので、タメになるのはそこくらいか。  著者は文明と文化を区別する。そのうえで、文明は物質文明であり、普遍的なものだからグローバルに広がるが、時代とともに新しい普遍性を備えた別の文明にとってかわられうるという。それに対し、著者は文化を精神的な「民族の生きるかたち」と言い換える。そして、「それぞれの時代の文明に応じたり、あるいはもっと時代に合ったかたちに変容することが必然化される。そのため、「文化は変容しつつも滅びない」のである」と主張する

          行き過ぎた文化還元主義は妄想と見分けがつかない。:『砂の文明・石の文明・泥の文明』(PHP新書)

          ブルデューの理論そのものに接近したい向きには全くオススメできない:『ブルデュー 闘う知識人 (講談社選書メチエ)』

          ■内輪ネタばかり  著者は「その人の生と理論とは切り離せない」と主張し、昔ながらの入門書スタイルでブルデューの生い立ちと人となりを延々と語り始める。それも最初のうちはまだよいのだが、次第に話はフランスの複雑な教育制度に入り込んでいき、耳慣れない固有名詞の連続で読者を混乱させる。例えば、ブルデューがエコル・ノルマルに入学するくだりでは、誰それは入学できなかっただの、誰それは同じエコル・ノルマルでもランクが低いだのといった調子である。  その後、研究者としてのキャリアを歩み始める

          ブルデューの理論そのものに接近したい向きには全くオススメできない:『ブルデュー 闘う知識人 (講談社選書メチエ)』

          「日本にとっての第一次世界大戦とは外交上稀に見る失政の連続の歴史に他ならなかった」 : 『複合戦争と総力戦の断層:日本にとっての第一次世界大戦 (レクチャー第一次世界大戦を考える)』

           本書ではまず、 2つの実戦 :日独戦、シベリア出兵 3つの外交戦:対英、対中、対米 から成る、10年9ヶ月にわたる〈複合戦争〉として「日本にとっての第一次世界大戦」を捉える。そして、根底には「中国における権益の確保」という関心が一貫して存在していたという観点に立つことで、「日独戦」「対華21ヵ条要求」「シベリア出兵」といったこの時期の大日本帝国のアクションを統一的に把握している。このような視座から、それぞれの「戦争」における日本の指導者や軍部の様々な思惑、最終的にとられた行

          「日本にとっての第一次世界大戦とは外交上稀に見る失政の連続の歴史に他ならなかった」 : 『複合戦争と総力戦の断層:日本にとっての第一次世界大戦 (レクチャー第一次世界大戦を考える)』