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視点の自由研究No.137「視点_プロダクションは団体芸」

映像制作も最近はビデオグラファーと呼ばれるような方が現れ、単独で企画、演出、撮影、編集と全て一人で行う業務形態も珍しくなくなった2024年。それでも大きな予算で動く映像制作では、まだまだ多くのスタッフによる共同作業が当たり前のように行われています。
プロダクション(業界的によく呼ばれる映像制作会社の呼び名)では、プロデューサーに始まり、プロダクションマネージャーと呼ばれる制作の方たちが集まり、映像を作っています。業務を細分化し、効率性を上げる役割分担が徹底しているとも言えますが、組織的にみた時にちょっと違う意味合いもあったりする。
今回は、そんな役回りについて考えてみたいと思います。

「団体芸」

プロデューサーとプロダクションマネージャー、制作業務を担うこの二つの役職の最も大きな違いは相対する相手にあります。プロデューサーは主にクライアントや広告会社の方たち。プロダクションマネージャーは監督をはじめとしたスタッフたち。外と内というベクトルで考えるとわかりやすいかもしれません。それぞれに相手をする関係性が微妙に違います。

コミュニケーションでもよく言われることがあると思いますが、「誰」が発言するか?はとても重要です。

プロデューサーが言うのだから予算はもう上限いっぱいなんだなとか、プロダクションマネージャーが撮影時間を押しているというのだからそうなんだなとか、言う人間が違うだけで説得力が全然違います。

勘のいい人ならわかったかもしれません。当然これを逆に利用してクライアント、スタッフへの提言を行うこともあります。「誰に言わせるか?」を考えて発言の分担を行う。そうすることで、業務の進行をスムーズに行う狙いがあります。会社組織で動いている方なら至極真っ当なことをプロダクションでも行っているのです。

まさに団体芸。ボケとツッコミの役割分担に近い状況で、立場を活用し、発言を行っていく。

「コミュニケーションの形」

個人で活動されているフリーランスの方は難しいでしょうが、会社組織、あるいは映像制作などにおけるスタッフ一同などでは、コミュニケーションの形も必然的にデザインされているとも言えます。
映像制作においては、総合プロダクション(社内に監督、カメラマン、照明、編集が全ている会社)以外では、毎回外部のスタッフがアサインされ、プロジェクトを進行していきます。そうした業務において、前述の「誰が言うか?」は重要なカギになります。
様々な役職において自由に発言ができないと言うこともありますが、ここは視点を変えて「誰」に言ってもらうか?を考えてみるのもいいかもしれません。

「遠交近攻」

少しお話がズレますが、「遠交近攻」と言う言葉があります。中国の史記に出てくる言葉で、遠くとは交わり、近くは攻めると言う意味だそうです。地政学などではよく活用され、外交など今の世界もこの言葉通りの社会でもあります。

会社組織にいたこともありますから、社内の人間関係の感じもよくわかります。この「遠交近攻」と言う言葉通り、外部のスタッフよりも社内の人間に対しての方が当たりが厳しかった。人間は近くにいる者を攻撃する性質を昔の人は見抜いていたんでしょう。

都内のプロダクションが制作部だけを残し、その他の演出や撮影、編集スタッフを外部に置いたのも実は、こうした近くを攻めるという性質から、というのも一理あると思います。

世の中の数多のプロジェクト、組織的に動かなければ難しい業務の中で、いかにコミュニケーションをデザインしていくか?

映像制作においても日々考えておく必要のあることだなと考えています。

映像でお困りの方、静岡で撮影されたい方、ぜひ一度お声掛けください。