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27.後肢大腿部の筋肉

後肢の筋力強化

「大腿四頭筋」とは、「大腿部(太もも)」前部にある「四頭筋(4つの頭を持つ筋肉)」です。

「ハムストリングス」は、太ももの後部にある4つの筋肉群です。

大腿四頭筋とハムストリングスは、膝関節の屈伸に関しては、一方が伸びれば一方が縮み、一方が縮めば一方が伸びます。この関係を「お互いの拮抗(きっこう:お互いに逆の作用をする)筋」といいます。

両方とも屈伸筋としての働きと抗重力筋としての働きを担っています。

犬は、体重の約6~7割を前肢で支え、後肢は3~4割を受け持っていると言われています。加齢とともに弱ってくるのは普段あまり負荷の掛からない後肢ですので、若いうちに後肢筋を鍛えておきましょう、というのがWIZ-DOGの考えです。後肢筋は大腿四頭筋やハムストリングス以外にもたくさんありますが、運動連鎖の関係から、この2つを鍛える運動をやらせれば、他の後肢筋もおのずと鍛えられると考えています。

後肢筋が鍛えられているかどうかは、触るだけでもよくわかります。

大腿四頭筋

太ももの前部にある大腿四頭筋は、「大腿直筋」「外側広筋」「中間広筋」「内側広筋」の4つの筋肉が合体した一つの筋肉です。頭(近位付着部)は4つありますが、膝に向かって一つの筋肉となり、膝蓋腱(膝蓋靭帯)となって脛骨につながりますので、「大腿四頭筋」という一つの筋肉としての名前がついています。

大腿四頭筋

大腿四頭筋は太ももの前にあって、力を入れて縮めることで、股関節を屈曲(前方に曲がる)させ、膝関節を伸展(前方に伸びる)させます。股関節を屈曲させるのは、頭が寛骨(腸骨)に付いている「大腿直筋」だけです。「外側広筋」「中間広筋」「内側広筋」の3つの広筋の頭は大腿骨の上の方についていますので、膝関節伸展にのみ寄与しています。

「大腿直筋」だけは股関節と膝関節の2つの関節にまたがっていますので、2つの関節をまたぐ「二関節筋」といいます。他の3広筋は膝関節をまたがっているだけですので「単関節筋」と呼ばれます。

上の動画の犬はバランスボールに跳び乗ろうとして、股関節も膝関節も伸ばしています。

股関節を伸ばす(伸展)ためには臀筋やハムストリングスなど、どちらかというと太ももの後ろ側にある筋肉に力を入れなければなりません。太ももの前にある大腿四頭筋の内大腿直筋は股関節を曲げる(屈曲)という逆の働きがありますので、この筋肉に力を入れると股関節が伸びないのです。

その一方で膝関節を開く(伸展)動作は太ももの前にある大腿四頭筋の仕事です。そのためには大腿四頭筋に力を入れなければなりません。

となると、股関節と膝関節を同時に伸ばす時はどうすれば良いのでしょうか?

一言で「大腿四頭筋」と言っても4つの筋肉があると書きました。その内、大腿直筋は股関節を曲げる動作にも関係しています。だから、大腿四頭筋の内、大腿直筋だけは力を入れずに、3つ広筋で膝を伸ばせばよいということになります。

つまり、ひとつの筋肉であっても、運動内容によって力を入れる場所を選択することができる、ということなのです。ちなみに、ボールを蹴る動作は股関節を屈曲させながら膝関節を伸展させますので、大腿四頭筋全体に力を入れていることになります。

犬も人も「知らず知らずの内に」上手に筋肉を動かしているんですね。

ちなみに、「内側広筋」は萎縮しやすい(弱くなりやすい)筋肉として有名で、内側広筋が萎縮すると膝を傷めやすくなり、肢が外に拡がるようになりますので、後肢のトレーニングをやらせる時は、股を閉じる筋肉を鍛える運動も加えるようにしましょう。

ハムストリングス

太ももの後部にあるハムストリングスは、「大腿二頭筋」「半膜様筋」「半腱様筋」の4つの筋肉の総称です。「大腿二頭筋」は2つの筋肉が合体した一つの筋肉ですが、「半膜様筋」及び「半腱様筋」とは合体していません。つまり、ハムストリングスは、大腿四頭筋とは異なり、一つの筋肉の名前ではないので、筋肉群と呼ばれています。

ハムストリングス

イラストをご覧いただくとお分かりになると思いますが、ハムストリングスは太ももの後ろにある二関節筋ですので、力を入れてこの筋肉を縮めると、股関節は伸展(後ろに伸びる)し、膝関節は屈曲(後ろに曲がる)します。歩行時に後肢を後方に蹴り出す時は、ハムストリングスに力を入れます。

4つの筋肉の内、「大腿二頭筋」の2つの頭の内一つ(長頭)は寛骨(坐骨部分)に、もう一つ(短頭)は大腿骨についています。「半膜様筋」と「半腱様筋」の頭は寛骨(坐骨部分)についています。4つの筋肉は主に下腿骨(脛骨か腓骨)とつながっていますので、「大腿二頭筋」の短頭を除く3つの筋肉が、股関節の伸展と膝関節の屈曲のどちらにも関与していることになります。

ハムストリングスは負荷を掛けて膝を曲げる運動や股関節を伸ばす運動で、屈伸筋としての機能を鍛えることができます。また、ハムストリングスも大腿四頭筋と同じく抗重力筋としての機能があり、その機能は、同じく立位を保持する運動(自重運動)だけで鍛えることができます。

半腱様筋は縫工筋と薄筋と一緒に膝関節の内側に停止しています。その並んだ腱の形が鵞鳥の足に似ていることから「鵞足」と呼ばれます。ランナー膝と呼ばれる膝内側の炎症を「鵞足炎」と呼びますが、それはこの腱が炎症を起こす症状のことを指しています。

ハムストリングスとは別に、膝の裏に短い「膝窩筋」という筋肉があります。この筋肉がこわばると膝を伸ばせなくなり、歩行困難の原因となりますので、日ごろから、膝の屈伸運動をやらせることも大切です。


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